■先週もお知らせいたしましたが、今週6月8日(土)は、小店も所属する東京古書組合南部支部が年に1度開催する「南部支部大市会」の入札日当日にあたるため、この日は開店時間を遅らせて14時半から、とさせていただきます。
ご不便をおかけいたしまして誠に申し訳ございませんが、どうかご理解を賜りますよう、また、ご来店に際しましてはご留意いただけますように、よろしくお願い申し上げます。
■尚、来週はまた旧に復し、火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。気象庁の予報によれば、明日、天気が崩れた後は連日晴れが続いて暑くなるとか。空梅雨は何かと心配のタネ、そしてまた酷暑を迎えるまでのカウントダウンが始まってるんだろうなと、それはそれで気になりますが、折角のこの天候、小店にもお運びいただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
■明日からの市場続き、とくに土曜日は朝早くから市場というので、今週はいつもより一日半ほど早い更新です。しかも、いつもより手短に。
『Max Burchartz (1887-1961) - Typografische Arbeiten 1924 -1931. 』はドイツの写真家でデザイナーだったマックス・ブルヒャルツの代表作を忠実に復刻した作品集。1993年にドイツで発行されたものです。
ブルヒャルツは1887年生まれ。当時の若いドイツの芸術家たちと同様、表現主義から出発し、1922年にワイマールのバウハウスでテオ・ヴァン・ドースブルフと出会いモダンデザインへ転換したとされています。当作品集に集められたのは1924~1931年の間に生み出されたグラフィック・デザインの分野 - 組版までをも含めたタイポグラフィ - におけるブルヒャルツ代表作であり、ノイエ・ティポグラフィ、ノイエ・フォトグラフィの影響を真っ正面から受け止めたような作風で、際立ったセンスを見せています。
当時のドイツの有名企業の広告を中心に、広げてみると結構な大きさになるポスター、タトウ入りリーフレットのシリーズ、チラシ、レターヘッド、ポストカードなど、元版を忠実に復刻した紙モノ18点に解説書1冊(ドイツ語)を付し、上製の函に納めた体裁は、『Vesc Objet Gegenstand』と同一。その『Vesc Objet Gegenstand』も再入荷いたしましたので、ご興味のある方はリンクしたこちらのページもご参照いただければ幸いです。2冊とも、内容品に欠けのない完品です。
可能な限り元版で仕入れたい - そのように考えて仕入れに努めるようにはいたしておりますが、このあたりのエフェメラとなると、もはやほとんど不可能であろうと思います。このため、あえて復刻版をご紹介する次第、悪しからずご理解のほどお願い申し上げます。
■続いてこちらはフランスから、『CHRONIQUES DE L’ART VIVANT』 。1969年に創刊された総合芸術専門誌の創刊号=No.1から1970年に発行されたNo.8まで、No.1bisを含む9冊の入荷です。バレエ・リュスの記事があるかと思えばラウシェンバーグの記事があり、ジャコメッティが顔を出し、マン・レイと同じ号でイヴ・クラインがとり上げられるなど、創刊号の表紙にマルセル・デュシャンの肖像写真が使われているのが象徴するように、戦前と戦後のアート界をブリッジする内容。
他に、バウハウス、ポップ・アート、ヨーロッパのフリージャズ&ポップミュージックなどの特集、黒人音楽、ヨーゼフ・ボイスの記事等々、おもしろそうな項多数。
38×28cmの大判・薄冊ではありますが、毎号全ページ2色印刷という制約の中で、対向ページとの色の組み合わせやレイアウトに見られる工夫をはじめ、グラフィック・デザインの側面からもよくできた雑誌です。
■今週はこの他、『村野藤吾作品集 1931~1963』『Eero Saarinen on His work』『国際写真サロン』図録4冊(第1回、2回、4回、5回)が入荷、また、合本した外装の痛みが甚だしかった『Le Rire』1904年発行分は、1冊ずつにバラした状態で店頭でご紹介いたしております。
■と、こうしてみると、いかにも普段の市場とは違う大勝負の場のように見えるのかも知れませんが、そして、確かに古本屋になった当初は大市となるとそれはそれはキンチョーしていたものですが、最近は ふだんの市場も大市も気持ちの上ではそう大差なく、出品点数の多さのため、もっぱら時間配分にばかり気をとられて大市もお仕舞というテイタラク続き。来週の新着品につきましてはどうかくれぐれも 期待値ゼロ でお待ち下さい。来週の更新は再び金曜日の深更または土曜日未明に戻りますっ! (←ここで胸張ったとろであなた……黙)
■東京も梅雨に入りました。そして日本全国一斉に、本日より6月に入りました。小店にとって目覚ましいことといったら、日々の過ぎゆくスピードだけだな、なんてことはさて措き。
来週6月8日(土)は、東京古書組合南部支部 - 小店の所属支部です - で開催される大市会のため、開店時間を14時半とさせていただきます。
不便に不便を重ねまして誠に申し訳ございません。ご理解を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。尚、4日(火)、6日(木)は普段と変わらず12時~20時で営業いたします。つ
■今週は立て続けに、「取り扱い注意」な物騒な物件3点。いずれも屈折したチョビ髭男とその取り巻きがつくり出したスペクタクルにまつわるスタイリッシュな歴史の遺物であり、ニッポンのプロパガダ雑誌『FRONE』同様、過度にカッコいいものは疑ってかかれという好例です。
『Großer Preis von Deutschland』は1937年、ドイツのニュルブルクリンクのサーキットで開催された自動車競走「ドイツグランプリ」の公式パンフレット。未来派風デザインの表紙はシルクスクリーン刷りと思われ、色の出かたやぼかし方も実に見事。表紙を開き扉を見ると、やはり真っ先に姿を現すのがチョビ髭男その人であります。
こちらの物件のボリュームはと云いますと、A4サイズで本文48ページ。カラーは表紙だけですが、本文の大部分は1927年に完成したニュルブルクリンクでの自動車および3輪オートレース関連のグラビア写真で占められ、過去のレースのデータなども掲載。もちろん、この年に出走するドライバーおよび自動車のデータも掲載されています。
この年の「ドイツグランプリ」ですが、出走する27台の内、国別ではハンガリーが2チーム、イギリス、スイス、フランスでそれぞれ1チームがエントリー、他は全てドイツとイタリアばかり。エンジンはドイツのアウトウニオンとメルセデス・ベンツ、イタリアのアルファ・ロメオとマセラッティの4メーカーが全て。前年に掲げられた「ベルリン・ローマ枢軸構想」もあり、両国の接近を思わせます。
パンフレットには、周回毎順位や成績などを観戦者が自分で書き込める一覧表などもありますが、当品は未使用の美品。この場合は書き込みがあった方が面白かっただろうにと、むしろその点が惜しまれます。
■ナチス・プロパガンダを扱う際に、言及されないことは絶無といってよいレニ・リーフェンシュタール監督映画のうち、ベルリン・オリンピックの記録映画「オリンピア」に関する印刷物『OLYMPIA』。表紙の下方、映画製作会社「TOBIS」のロゴのそのまた下に、『REKLAME - RATSCHLAGE』とあるこの1冊は、つまり、1936年 ベルリン・オリンピック大会記録映画「オリンピア」のための広告宣伝実例集ということになります。おそらくこれは珍しい … 珍しいはず … はずだと思う … と思いたい。
映画とレニを推薦する言葉を冒頭に、製作関係のデータからポスターやパンフレットの実例多数。とくにパンフレットについては三つ折りで、フォトモンタージュによるデザインの異なる2種の現物を糊付けしてあるという徹底ぶり。文字のみの場合、カットを入れる場合など、新聞の囲み広告のヴァリエーションもあれば、映画館に掲示する宣伝文句などもあり、あらゆる告知に対応できるように、かなりの力を注いで作られたものです。
A4サイズ、56ページ。1点目の扉がチョビ髭男だったのに対し、こちらで最初に出てくるのは、小さな肖像写真とはいえ監督であるレニ・リーフェンシュタールの肖像3カット。戦後、ナチス協力者とする報道に関して訴訟を起こし、ことごとく勝利したことが知られているレニですが、残されたこの印刷物だけをとり出し虚心に見る時、果たしてそのジャッジに頷けるかどうかは、見る側のひとり一人に委ねられています。
■本日の3点の内、最も政治色=プロパガンダとしての性格が色濃く表現され、しかも最も広く、一般家庭の中にも入り込んでいたはずのカレンダーより。1940年版、週単位で切り離していくタイプのカレンダーで、月の替わり目には1P全体を使った写真のページがあり、また、月の半ばには写真部分を切り抜くと絵葉書として使える部分が設けられていて、ナチスのイメージが一般家庭に根を下ろし、或いはそこから拡散していくように作られたもの思われます。
力が入り過ぎたためかカッコいいを通り越して滑稽なもの、健康な青少年像や健全な労働者などステレオタイプなイメージもたくさん含まれていますが、カレンダーという日用品から発したメッセージの果たした役割は、決して小さくなかったはずです。
こちらは表紙欠、数葉切り離れなどがあるためジャンク品に近い扱いとなります。
■いま、時代は私たちの頭の上、日本の上空で大旋回を始めたように見えます。大旋回させようとする意思が、働いているように思えてなりません。憲法96条の改正から消費税還元セールの規制に至るまで、“主導したかる政治”については警戒心が頭をもたげてきます。例えば表現の自由については、絶対的正義は絶対的正義として認めますが、しかしその実行となると、非常にあやうい点をはらんでいるのだということについてもまた、とくに芸術、表現に関わる方たちは知っておく必要があると思います。古本屋にもまた、深く関わる問題です。http://d.hatena.ne.jp/higuchi1967/20130529 ← くれぐれも、くれぐれも「全文に」お目通し下さい。
政治家の発言に対して、とくに歴史認識に対する某首相の発言に違和感を感じるのは何故かという点については、未来社の『未来』最新号掲載の町田幸彦「くつろぎやすい過去」がその理由を明確に教えてくれました。
ナチスは過去であって過去だけのものではありません。日中戦争も太平洋戦争も過去であって過去だけのものではありません。これら歴史の遺物をまっすぐに見るということだけが、光さす未来へと続く道なのだと思います。
* 最後のブロックの冒頭部分について、例示として不適切なところがあったため、一度アップした後、加筆訂正いたしました。悪しからずご了解下さいませ。
■今週は久しぶりに、フランスの挿画本が入荷いたしました。アンドレ・マルティのポショワール挿画入り『LES AMOURS』のシリーズ。16世紀フランスの詩人ピエール・ド・ロンサールによる『マリーへのソネット(LES AMOURS DE MARIE)』『カッサンドラへのソネット(LES AMOURS DE CASSANDRE)』『エレーヌへのソネット(SONNETS POUR HELENE)』にマルティの挿画を入れた3冊揃っての入荷です。限定部数は1,950部で、3冊ともこの内の699番。
25×20cmと比較的大ぶりの本で、3冊ともそれぞれ金色1色で装飾文様をあしらった函、背にタイトルの入ったスリップ付き、未綴じ174P。本文全頁に多色刷の飾り罫が添えられてテキストを取り囲んでいます。これらの飾り罫、および、表紙等にあしらわれている草花をモチーフとした装飾図案のデザインはレイモン・ジャケによるもの。表紙や扉には、やはりジャケの意匠による金色を用いた贅沢な装飾図が使われていますが、繊細な描線などマルティの挿絵ともよくマッチしています。
マルティの挿画はいうまでもなく全点ポショワールで、7×10cm前後のサイズの挿し絵を1冊につき各28点所収。ロンサールの作品はギリシャ神話に題材をとった定型詩ですが、これに対してマルティの挿画は、ロンサールの作品が生まれた時代を意識してかルネサンス期の風俗を背景として描かれたものと思われます。この他、章末の余白部分には、いかにもマルティらしい小さなカット - これもポショワール! - が置かれていて、マルティ好きには見落とせないところでしょう。
練馬区立美術館恒例の「鹿島茂コレクション」展、3回目となる今年は「モダン・パリの装い-19世紀から20世紀初頭のファッション・プレート」展と題して、7月14日から開催されるということですが、20世紀のパートはルパブ、マルティ、マルタンを中心に構成、マルティについては下書きなど肉筆まで含めどっさり展示される可能性もある模様。先だって高島屋の戦前の写真で試みた美術展便乗商法は不発に終わった小店ですが、さて、マルティは首尾よくいくものか、その結果は神のみぞ知る。果報は寝て待て。武士は食わねど高楊枝。う。なんでそーなるの。
■こちらはイギリスからやってまいりました写真集、『THE BOOK OF FAIR WOMEN』。FAIRは「公正な」という他に「麗しい、美しい」という意味もあるそうで、つまり『美人の本』。タイトルそのまま、世界各地の美女を選りすぐっての肖像写真集です。1922年、ロンドンで初版限定500部が出版された内の461番が当書で(他に非売品60部有)、ちなみに、同じ年、イギリス版とは異なる装丁のアメリカ版が、ニューヨークの書肆よりやはり初版限定500部で発行されています。
さて、、タイトルに恥じないこと充分すぎるでしょうという世界の美女32名が登場するこの『THE BOOK OF FAIR WOMEN』、写真を撮影したのはE.O.HOPPEという当時すでに世界的に名前を知られていた写真家。とくに肖像写真に優れた作品が多く、戦前の『PHOTORAMS OF THE YEAR』などでは必ず作品が複数とられていたかと思います。『THE BOOK OF FAIR WOMEN』に収録された写真は、構図など写真としての完成度は当然として、どこか物語性を感じさせる作品が多く、思わず見入ってしまうほどです。
被写体となった32名の女性はイギリス、アメリカを中心に欧米が23名と白色人種が優位を保っていますが、チリなど南米、キューバ、タヒチ、インド、そして日本や中国など、有色人種まで「美人」のくくりの中で取り上げているのは20世紀初頭の社会的意識を写して面白いところだと云えるのではないでしょうか。日本からは「Mrs.Tokugawa」がキモノ姿で収まっています。
巻頭にはリチャード・キングによる「Beauty」「Charm」「Beautiful Women the World over」と題したテキストを所収。19世紀とはすでに決定的に異なっていたはずの20世紀の女性美 - その変遷や意識について考える上での資料ともなりそうです。
尚、写真は全て別刷りして本文紙に貼込んでおり、スミの色の深さ、絵画を思わせる濃淡など、ひとことで印刷と括るのがためらわれる仕上がりとなっています。
■今週はこの他、ドゥヴァンベ美術出版の限定本についてまとめた書籍(シモ、藤田嗣治等版画入り)、フランスの雑誌『ル・リール』1904年発行分55部合本1冊、19世紀末~20世紀初頭ヨーロッパとその植民地の観光地の古い写真(大きな厚紙に貼付け)約50点などが店に入っています。