■パリ新着情報Part.2 その①:画像はタイポグラフィの見本集『LES TYPOGRAPHES D'ESTIENNE 1938』。この場合のタイポグラフィは、書体ではなく「組版」を意味します。活字と約ものだけを使って構成された、いわゆる「紙モノ」の優れたデザインを集め、片面刷り・現物サイズで収めています。現物の貼込みも多数あり。とにかくどの頁も捨てがたいデザインで、パリの紙モノの高騰からしてみて、いまとなってはこちらの方がお買い得感もあります。こうした見本集は他にも数冊入手、パリからの到着待ちとなっています。最も小店らしいこの手の商品、出揃うまでいましばらくお待ちください。
■パリ新着情報Part.2 その② はルノー社の企業パンフレット『RENAULT LE CAMION DE FRANCE』。奥付がないのではっきりしませんが、1930年代初め頃の発行と思われます。業績をはじめといる各種データが写真やイラストなどとの組み合わせで見事にビジュアル化されています。ちょっとUSSR風でもあり、正直にいって私の好みで選んでしまいました(…大丈夫かね。っていっても。全部そうなんだから。いまさらねぇ…)。全頁観音開きという豪華さ、印刷も二色刷ながらフルカラーと比べても全く見劣りしない仕上がりです。画像がうまく撮れずかえってマイナスとなっているくらいで、ご興味をお持ちの方には是非、現物をご覧いただきたい一冊です。パリ新着情報は、この前の頁にも続いております。
営業ご案内 3月1日夕方、予定通りパリより帰国いたしました。店は来週より、通常の火・木・土曜日、各日12時~20時の営業に戻ります。また、当HP雑書目録についても来週より復旧いたします。 ■二年ぶりとなったパリはかつて連日雪に見舞われたのが嘘のような暖かさ。しかも。「安い!面白い!」というのもかつてのこととなってしまったのか、品薄に加えて何を見てもどれをとっても高いのなんの。円安・ユーロ高は覚悟していたとはいえ、とくに紙モノの高騰はこたえて、これまでになく厳選しての買い付けとなりました。さてさて。以下は一部持ち帰ったものから「パリ新着情報」Part.1~3の一挙アップです(慌ててのアップ。誤字脱字等お赦しのほど)。 ■パリ新着情報Part.1(パート2・3は順次以下をご覧ください) : Part.1は今年、パリで買い付けた白眉二冊(白眉ったって、値段もレベルもまだまだこんな程度で喜んでいてはいけないんですけどね。とパリの古本屋さんたちを見ているといつもつくづくそう思うのですが。とそう思うこともパリ行きの大切なところでもあり。自分なんぞ「吹けば飛ぶ」と。ともあれいまの日月堂にとっては、ということ意味ではあり)。上はエンリコ・プランポリーニが編集主幹を務めた『RIVISTA D'ARTE FUTURISTA』の1923年発行・3/4号合併号。副題に「NUMERO SPECIALE L'ARTE DECORATIVE FUTURISTA」とあり、未来派芸術家によるインテリア・デザイン(!)の特集号です。ベルリンやプラハのカフェ、プランポリーニのデザインによる椅子や机の実作写真(…カフェは…何といいましょうか…かなりエキセントリック)、ドースブルグの幾何学的ステンドグラス、デぺーロのタピストリーなどどれも風変わりな図版が多数収められています。「あちら」では、アヴァンギャルドに関しては例えば日本のハイレッドセンターに至るまで評価が高く、未来派もダダもシュルレアリスムもこれまで全然手が出なかったのですが、円安にユーロ高、パリの品薄感など、今後を考えるとますます手が出ないだろうというので思い切って購入。しはしましたが。長く在庫することになるのは、ええ。それはもう覚悟の上で。
■パリ新着情報Part.1 その②:この二年の間にパリで高騰したものを見ていくと、紙モノがほぼ以前の二倍~三倍で、さらにその上をいっていたのが「カッサンドル」ものでした。二倍・三倍どころか、へたをすると以前と一桁、値段が違っており。昨年パリで開かれた回顧展の影響もあったようです。それにしてもああ。ワインの「デュボネ」のノベルティで、小さなメモ帖がどこで見ても一冊45ユーロ(=約7,500円)、同じくノベルティの注文票の1枚(一冊ではなくて「一枚」ですよ)25ユーロ(=約4,200円)。小店の売値をどれもかるぅーく超えてます。なぜ。どうして。もっと買っておかなかったのか。で、今回かろうじて買えたカッサンドルは3種4点。画像はそのなかの『LE SPECTACLE EST DANS LA RUE』。1935年の発行で、サンドラールの献辞を巻頭に配し、カッサンドルの代表作を見事な印刷(一部はシルクスクリーンか)で収めた小冊子です。図版の対向頁に置かれたタイポグラフィ(文字・組版ちも)にいたるまでケチのつけようがありません。しかもこれ、綴じのプラスチックが一箇所・極小さな欠けがある以外、シミの点一つない極極極美本。この状態の良さも値段に乗っていて、とんでもない値段でしたが、こればかりは二度とお目にかかることはあるまいというので購入。ええい。これももちろん抱えることは覚悟しております。はい。他の二種、一つは観光案内広告のおそらく仮刷の一枚と、ルノー社の戦後のノベルティ。とくにルノーのものは蚤の市の古道具屋で掘り出したもので、作品自体ほとんど知られていない(…と思う)、文字通りの「掘り出しもの」と自負しております(多分…)。
< attention!! >来週より仕事の場所を移してパリへ。ひたすら地を這うような仕入れの旅に出掛けます。このため2月17日(日)~3月5日(月)の期間中、店は臨時休業させていただきます。また当HP掲載品の受注についても一時休止いたします。どうかご注意ください。3月6日より店もHPも再開いたします。パリで仕入れた品物については、3月半ば頃には店頭でご紹介するとともに、このインフォメーションでも少しずつご紹介してまいります。店もHPも、どうかご再訪のほど何卒よろしくお願いいたします。 ■置き土産の新着品。上の画像は1925年にドイツで発行されたエル・リシツキーとハンス・アルプの共著『THE ISMS OF ART』の忠実な復刻版で、1990年・ドイツで発行されたものです。『諸芸術主義』などとも邦訳されるこの本は、元版発行当時、芸術の分野で叢生していた様々な「主義」を取り上げ、図版を中心に構成したもの。簡潔な解説はドイツ語、フランス語、英語の三ヶ国語併記、未来派、キュビスムからピュリスム、シュプレマティスム、構成主義映画などまで、当時の綺羅星のごとき前衛芸術家名とともに作品図版多数を掲載。なかでも「メルツ」のページでは「MURAYAMA T.(J)」つまり村山知義の作品が紹介されていて、その才能が世界的注目のもとにあったことをうかがわせます。永遠に憧れ続けることになるであろうパリのアヴァンギャルド専門古書店「ディディエ」には、かつてこの本の元版が置いてあり、ガラスケース越しに目をとめながらオソロシくて値段を聞くことすらできなかったのを思い出します。もちろん、いまも。ですが。この本、装丁はリシツキーが担当、中面の図版レイアウトやタイポグラフィの成果までお見せできないのが残念です。
■下の画像も新着品。オランダの美術家にしてタイポグラファー及びプリンターの肩書きを持つヘンドリック・N・ウェルクマンが1923年から26年にかけて発行していた個人雑誌『The Next Call』に関する論考とデータをまとめたのがこちらの一冊。1995年に発行された限定600部本で、テキストはオランダ語と英語の併記です。ウェルクマンは日本ではあまり知られていませんが、『The Next Call』はダダイズムの自作詩やテキストをコラージュ、タイプフェイス、印刷素材など、様々な試みとともに展開したもので、重要なアヴァンギャルド雑誌の一つとして位置づけられています。しかしその実作は、1945年、ウェルクマンがナチスによって惨殺された数日後、やはりナチスにより焼失させられた、とあります。シュビッタースやリシツキーに連なる才能と、タイポグラファー・印刷者としての技術に裏打ちされた作品群が残されていたなら、もっとメジャーな位置を占めていたのではないかと思えてなりません。 さて、パリ出発前の新着はここまで。ですが、来週月曜日には「中央市会大市」というものが開催されることになっておりまして。また毟られるのか。大丈夫かパリ。と考えていても仕方なし、あとはもう出たとこ勝負で。運を天に任せて。とにかく。とりあえず。なんでもいいから。――「行ってまいりますっ!!」