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12/02/11 薄暗がりに潜む歴史の断片 満鉄食堂車メニューと元印刷工の手紙 / プロパガンダ誌『偉大なる建設-満洲国』


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「御夕食献立」に出てくる「やま芋キヤンデー」とは? 一体なに?? どんなしろもの???

■「満鉄のメニュー同封します。喜んでいただければ倖せです。大連駅の、旅客課で、僕が印刷していたものです。プリンターという職種で、この、メニューが一通り解ってきますと、『あじあ』の食堂車の、給仕長になれたわけです。お粗末な、印刷技術です。たった一人で、薄暗い駅の、3階の片隅で、活字を拾っていますと、目が充血してしまうような毎日でした。二十才でした。」
古本の市場にはこんなふうにして、歴史の断片がふっと姿を現すことがあります。それだから、市場に行けない日には市場の様子が気になって気になって仕方ありません。昭和13年(1938)年11月3日、この当時、明治節(明治天皇の誕生日)として祝われた日の「満鉄食堂車」の「本日の御昼食献立」と「本日の御夕食献立」、つまりはメニュー2点を、冒頭の文章の記された手紙・封筒などとともに落札したのは、行かないつもりだった市場へ、どうにも気になって仕方なく、即売会の会場を2時間だけ抜けだして出掛けた先週のことでした。その後即売会の戦後処理に追われて落札したまま、今日まで店にも入れず放置するに任せていた新着品です。
手紙の主であり、メニューを印刷した「プリンター」は、川村禾門という人。実際にメニューを見ると、文字間や行間のバランスの崩れ、印圧がかかり過ぎているところなど、決して上手いとはいえない出来です。「目が充血してしまう」というのですから、活字を拾い、版に組むところから、おそらくはろくに教わりもしないまま一人でやらされていたのでしょう、大陸をゆく列車の発着、行き交う人々のさざめきをよそに、物置のような駅舎の暗い片隅で青年がひとり、黙々と慣れない仕事に取り組む姿が目に浮かんできます。
大連駅の駅舎内に印刷道具一式が整えられていたこと、メニューの印刷が社内で行われていたこと、印刷工→「あじあ号」の給仕長という昇級のステップなど、冒頭の短い文章だけでも、満鉄にまつわる幾つかの事実を確認することができ、満鉄メニューというだけでも珍しいのに、僅かとはいえまさかその印刷の様子まで、実際に携わったことのある人の言葉によって示されているのには驚きました。


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さて、川村禾門(かわむら かもん)という人については映画や新劇史に詳しい方ならご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、「無法松の一生」などに出演した俳優。この当時は独身ですが、この後結婚した女優・森下彰子は「桜隊」に加わり広島の原爆投下で亡くなります。手紙はテレビドラマの演出家に宛てて書かれたもので、引用部分から後は大連芸術座のこと、山本嘉次郎「坊っちゃん」での映画デビューのこと、新劇から渡満まで、「満鉄社歌」への思い、などが綴られています。この手紙(400字詰原稿2枚)と封筒、そして、少なくとも小店店主所有のテープデッキでは再生できなかった、従って、一体何が録音されているのか分からないカセットテープ2巻がついての一口でした。カセットテープにどんな“歴史”が潜んでいようが、この一口全部をお引き受け下さる方に - という方が現れれば、のお話ですが - お任せすることになりそうです。
2点目は同じ満洲がらみとうことで、東方社製作、昭和18年発行のプロパガンダ誌で、FRONT』の日本語版のひとつ『偉大なる建設-満洲国』。私が初めてこの雑誌を市場で見たのはまだ神田の古書会館が建て替わる前、入札会場奥の立てかけ台 - こちらも陽の届かない薄暗がりでした - に、遠目にもあれは何だと目に付く赤い表紙が1冊、出品されていたその風景をいまでもよく覚えています。手にとりページを開いて、その大迫力に息を呑みました。編集人は林達夫、企画編集委員に春山行夫、美術部主任に原弘、写真部は主任の木村伊兵衛の他、濱谷浩など、錚々たる名前が並んでいるのに深く納得したのが、もう一昔前のお話です。一昔を経て、『FRONT』に代表される危うい時代は、むしろ近づいてきているように思えてなりません。
■さて、来週ですが、金曜日に千代田区立図書館でのイベントと市会スケジュールの関係で、新着品のご紹介は一回お休みをいただきます。店の営業は変わらず、来週も火・木・土曜日の各日12時から20時となっておりますので、新着品の如何に関わらずお運びいただければ幸甚に存じます。それでは、次回ご案内まで、しばしお待ちを!

12/02/04 「銀座 古書の市」を打ち上げて、また店での日々が始まりました。フレデリック・キースラーとブルーノ・タウトの著書で新着情報も再開です。


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■1年を通してたった1度の“土日祝日関係なし・1週間ぶっ続け”営業期間であり、店をスルーした商品含め有象無象の雑書・紙モノをご覧いただく機会であり、さらにまた店主の顔色を気にせずあれもこれも手にとって吟味していただける絶好のチャンスともいえる「銀座 古書の市」。今年、第28回を数えた伝統の - といっても小店参加はまだたったの3回目 - 即売会も今週月曜日に無事打ち上げることができました。
搬入日前夜の雪に始まって、期間中ずぅーっと続いた厳しい寒さにも関わらずご来場下さった方々には、心より御礼申し上げます。ご来場、本当に有難うございました。ご注文品の発送や店の復旧作業もほぼ済ませて、明日からは何事もなかったかのようにまた店に戻りました。1週間皆勤で通した即売会とは違い、こちらは週に3日ではありますが、ご来店をお待ちいたしております。また、目録掲載品で在庫のあるものについては引き続きご注文を承ります。どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。何卒よろしくお願い申し上げます。
今週の新着品は前回に続いて“長期熟成塩蔵品”からのご紹介。日本では、山口勝弘の著書『環境芸術家キースラー』で僅かに知られるばかりのフレデリック・キースラーによる『contemporary art applied to the store and its display』。1930年、アメリカ・ブレンターノ社の発行です。前にも後にも日本の市場で、少なくとも私自身が目にしたのは当品を落札した時の一度きりで、紛失を告げられた時からせめてこれだけでも取り戻せないかと何度願ったことか。改めてページを繰ってみて、天と小口ギリギリのところに組まれたテキストや天地左右いずれか一辺を断ち落としにした写真図版の扱い等、印刷工程でのリスクを顧みない大胆なレイアウト、世界各国から集められ厳選された図版に漲る緊張感などなど、バウハウス叢書を足場にしてキースラー流に深められた造本とエディトリアル・デザインで、記憶に深く刻まれているのも当然の完成度です。
著者であるキースラーはデ・ステイルのメンバーとして1920年代より展覧会や博覧会の装飾、舞台、ウィンドー・ディスプレイなどを多数手掛けましたが、まとまった書物の出版は当書が初めてだったようです。キースラーは当書のなかで、前衛芸術をモダニズム装飾の基本として位置づけ、彼の考える新時代のウィンドー・ディスプレイ、照明設計、グラフィック・デザイン、建築などを豊富な図版とともに示しています。


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図版には、ピカソの絵画、バレエ・スエドワのための(!)レジェの衣裳、ヴェスニンの舞台装置から、B・タウトの建築、ミースの椅子、ツァイスの望遠鏡等の他、1925年パリ万博における展示設計や宣伝用印刷物の組版などキースラー自身の作品がかなり多く含まれており、アンビルドアーキテクトとして知られるキースラーの実作を知り、思想を辿る上で、おさえておく必要のある資料のひとつといえそうです。
■こちらもまた同じような装丁が施されており、バウハウス叢書というのが当時のブックデザインにいかに大きな影響を及ぼしたのかを思い知らされるわけですが、ブルーノ・タウト著『EIN WOHNHAUS』もまた、8年を経て帰ってきたなかの1冊。1927年発行の元版で、一応カバーも - 傷みばかりか欠けまであるのが残念ではありますが - 付いています。
内容はといえば世界的建築家ブルーノ・タウトが自邸を自身で設計して建てた際の建築設計と家具・インテリアデザインの記録をまとめた詳細な書籍でありまして、巻末にはカラーチップまで添えられています。タウトの自邸は、ラウンド型のケーキを6分の1に切り取ったような不思議なかたちをしています。この当時、タウトが労働者のための集合住宅に熱心に取り組んでいたことを考えると、自邸もまた、次なる集合住宅設計への足がかりだったかのように見えてきます。
この本、空白の8年以前は、市場で時々見かけることのできる本だったのですが、最近はとんとご無沙汰で、本当に久しぶりの入荷となりました。8年の歳月の間には様々な変化があったわけですが、しかし最も著しい変化と云えば、キースラーの生年月日や書誌を、或いはタウトが何年にどこにいて何をしていたのかを、私は机の前に座ったままどこに行くこともなく、目の前にある道具ひとつで瞬時に知ることができるようになったというところにあるのでした。便利になった分、今度は私の脳ミソの塩漬けが、ただいま着々と進行いたしております。いつになればかえってくるものやら。いやいやそっちはかえってこないって。
そんなアタマでこんなところにもお邪魔することになりました。詳細はこちらから。下の方にある「展示関連イベント」がそれです。それにしても大丈夫なんだろーか。もちろん大丈夫、私以外は …… 。

12/01/21 いよいよ来週から「第28回 銀座 古書の市」がスタートいたします。 新着品は8年の長期熟成塩蔵品より。


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■昨年来お世話になってきたステロイド剤から、今週初め、漸く卒業いたしました。ご心配下さった方々には心より御礼申し上げます。残る胃痛のタネは即売会の成績だけダ。というその即売会も目前に迫り、本日の更新はそちらに関連したお知らせをメインにさせていただきます。
来週1月25日(水)より1月30日(月)まで、小店も年に一度参加させていただいている古書即売会 「第28回 銀座 古書の市」松屋銀座8階イベントスクエアで開催されます。営業は各日10時~20時で会期中無休最終日のみ17時半閉場となります。
このため、1月22日(日)より2月1日(水)までの間、店の営業、HPを通じた在庫品の通信販売、HPの更新などについてはお休みをいただきます
会期中は全日、会場で目録品のお引き渡しやその他会場用商品の販売にあたります。会期中のご連絡は松屋銀座 03-3567-1211(代表)より「古書の市」会場経由で日月堂を呼び出すか、日月堂・佐藤の携帯までお願いいたします。
携帯の番号につきましては、ご注文いただいた方でご連絡の必要が生じそうな方々にはすでにお知らせいたしました。う。のはず。うう。のはずだがしかし。万一、まだお知らせが届いていない方がいらっしゃいましたら、大変恐縮に存じますがひとことお申し出でいただければ幸甚に存じます。粗忽者のことゆえ何卒お赦しの上、平に ……
目録掲載品のご注文は、作業の関係上、できるだけ1月23日(月)の夕方までにご連絡いただければ幸甚に存じます。ご注文が重複した場合の抽選は翌日24日(火)、抽選結果をお伝えできるのは1月25日(水)会期初日以降となります。予めご了解いただけますようお願い申し上げます。
合同目録のご郵送につきましては21日(土)お申し込み到着分、PDFファイルは23日(月)午前中いっぱいまでにお申し込みいただいた方までで一旦締め切らせていただきます。併せてご了解のほどお願い申し上げます(但し、切手を同封して目録をご請求下さった方には多少お時間がかかりますが追って郵送させていただきます)。
■経費や予算の関係から、どうしても値の張るものに偏りがちな目録とは別に、会場用商品には戦前の雑本から戦後の翻訳文学・雑誌まで、こちらは店頭に出すことのないまま即売会に直行するものが多く、また定価や相場に関わらず300円~500円を中心価格帯に割安感のあるものをと心掛けました。そしてもちろん、絵ハガキ、ラベル、古い地図やパンフレットなど紙モノも100円から、種類も量も豊富にご用意いたします。お時間がございましたらこの機会に是非、会場にもお運び下さい。ご来場を心よりお待ちいたしております。


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左がヨゼフ・チャペック、右がカレル・タイゲ装丁によるチェコの本。J・チャペックのリノカットの表紙画は改めてそのよさを感じさせられました。帰ってきたばかりのこの2冊、即売会に連れていくかどうかはただいま検討中です。

いまから8年ほど前、ある経緯から某業者さんにお預けし、その後紛失したと云われてすっかり諦めていた洋書の一群がありました。いい本なのに自分の力では売れない- 複雑な思いでお預けした本だっただけに、紛失を告げられた時にはむしろ自分の力不足を情けなく思ったものです。それが思いがけず、この度無事戻ってきたではありませんか! というわけで、今週は、8年にわたり塩漬けにされていたダンボール箱の中から2点を、新着品としてご紹介させていただくことにいたします。
悲しむ人・祈る人の姿をリノカットで表紙まわりに配したタイトルのない小冊子は『IN MEMORIAM JOSEFA CAPKA 1945』1945年 プラハ刊 初版 ノンブルなし、中綴じ(針綴じ)24P。チェコの重要なアーティスト、ヨゼフ・チャペックの作品集。表紙の図版の他、6点の復刻作品を所収(内1点はカラー)。扉の1点はチェコ語に訳されたアポリネールの詩に着想を得ています。
『Listy z vyhanstvi』1946年 プラハ刊(再版か) フランス装、156P余。第二次大戦下の技師を描いたエゴン・ホストヴスキーの文学作品。装丁はチェコ・アヴァンギャルドの担い手の一人で、タイポクラフィーやフォトモンタージュに優れた作品を残すカレル・タイゲによるもの。裏表紙に英文書評誌掲載の梗概、論評有。
それぞれの解説は、8年前の納品時に商品に添えた内容を基にしています。流行りのチェコの本なら売れるだろうと買い、まだインターネットがいまほど頼りにならなかった時代に、苦手な外国語を何重にも迂回して、売るための言葉を捜し出すのに悪戦苦闘していた頃の、つまりは売るために必死だった頃の、記憶ごとまるまる塩蔵されていたというわけです。それからの歳月が古本屋を少しは洗練させたのか著しく堕落させたのか、そのあたりのご判断についてはみなさまひとりひとりのご判断にお任せするとして、来週は場所を移し、景況も販売力も販売努力も8年前よりずっとずっとずうっと昔に巻き戻して、古本屋という名の商人としての、最善を尽くしたいと思います。
それでは銀座で。お目にかかれますように!

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