■正月気分もすでに完全にけし飛んで、1月25日(水)よりスタートする「第28回 銀座 古書の市」の準備を続けております。「古書の市」の目録や会期など詳細については<こちら>をご覧いただければ幸いです。散々ご心配をおかけした 慢性じんましん ですが、こちらも来週月曜日でステロイドからの離脱も叶いそう。気持ちも新たに即売会に向かいたいと思っておりますので、ご注文・ご来場のほど、何卒よろしくお願いいたします。
■即売会用に商品が抜けていくスペースを新たな品物で埋めるべく、一方では市場での仕入れも続けております。今週は、東洋趣味とアメリカン・デコを大胆な構図と華やかな色彩感覚で融合させたフランク・マッキントッシュの表紙イラストで知られる雑誌『ASIA』25冊、明治期の石版刷りで可愛いというよりコワイ顔をした「子供風俗画」シリーズ3セット、1960年と1970年の安保闘争関係の写真集・報道資料など8冊などが入荷、安保関係から選んだのが最初の画像、濱谷浩著、安保に反対した人々のうねりをとらえた『写真集 怒りと悲しみの記録』です。河出書房新社より昭和35(1960)年の発行で、当品は比較的状態のよい帯がついていました。荒々しい動きを潜める深い黒色が印象的です。
巻末に綴られた濱谷の文章を読んでいると、戦後10年を経て依然癒し難い戦争の傷、権力への不信、権力がふるう暴力への徹底的な嫌悪が、学生から市民までに共有されていたことがうかがえます。
安保闘争にせよ学生運動せよ、何か青臭い、一時の勢いだけの運動として - とくにその後に続く悲惨な運動の破たんを予め知ることのできた世代としては -正直にいって嫌悪に近い感覚でしか見られなかったものですが、最近のネット上での憎悪の共有、或いは集団における排除の同調、そして3.11以降の原発に対する不思議な寛容などといったものと比べると、ここに記録された、おそらく多くは普通の人たちの「怒り」というものが、いかにまっすぐでまともなものだったのか、思い知らされるような心地を覚えます。日本人は正しい怒り方をもう一度取り戻した方がいいのではないか。気が付くと、そんなことを考えながら眺めることになった写真集です。
■日本がそうした怒りに包まれることになった前年・1969年のロンドン。ハノーバーギャラリーではマン・レイの作品展が開催されました。タイトルもそのまま『MAN RAY』という、その個展の際の図録が今週の2点目。絵画13点と彫刻・オブジェ10点の出品リストを蔵する図録には、カラーを含む17作品の図版が収められていて、オブジェの写真の一部はマン・レイ自身によって撮影されたものであることから、結果として、マン・レイの写真作品をも収めたものとなっています。B5程度の枡形と比較的小ぶりの図録ですが、表紙と止め具はアルミを使用、厚手のアルシュ紙を本文用紙に使い、三方を黄色で枠状に染めたとても洒落た造本です。
■来週も即売会搬入直前にして、市場には出掛ける予定。ステロイド離脱の成否を含め、また一週間後にご案内させていただきます。さてさて即売会の用意、いまもまだ紙モノの束が私の目の前に………。
『華包』明治44年 芦田春寿著 大日本華道遠州流報恩会仮事務所発行 木版刷29丁 折方図解を含む。「のし」にこんなにたくさんの色と折りかたと意味とがあったとは。ひとつの文化として充分成熟していたはずのものが、いまはもう失われたも同然であることをこの1冊から教えられました。
■今日はまだ辛うじて2012年の松の内。 ならば ――
新年明けましておめでとうございます
2012年が、穏やかな日々の積み重ねのうちにすぎゆく1年でありますように
そして昨年 有形・無形の被害を被った多くの方たちの上に一日も早く安寧が訪れますように
―― 『華包』よりたくさんの熨斗を添えて、先ずは新年のご挨拶を申し上げます。
このHPをスタートして以来、新年のご挨拶もこれで5回目となりました。
大岡山から移転してきた表参道での営業も、お陰さまで今年の5月で10年目に入ります。
この10年の間には、情報環境の急変とそれを受けた商環境の激変があり、リーマンショックを契機とした世界金融危機はいままた深刻さを増しています。そうした中、極々小さい商いとはいえ、何とか古本屋を続けてこられたのもお客様皆様のご支持 - マーケットに対応する器用さを持たない小店への、いくばくかの共感もしくは同情といったものもそこにはあるように思われて、ますます身が縮こまります - によるもの以外の何ものでもありません。このような場しかないことを申し訳なく思いますが、年頭にあたり改めて心より御礼申し上げます。本当に有難うございます。
そして昨年。3月11日を境にして歴史が一変したあの日からこのかた、例年以上にご心配をおかけし、さらに年の後半は 慢性じんましん が長びくことで余計なご心配の種まで撒き散らす始末、原発に対して何の疑問も持たずにいた自分の認識の甘さを含め、実に、誠に、慙愧に堪えない1年でした。
想像していた以上に多くの方から労りのお言葉をいただいた じんましん ですが、ステロイドの内服は続いているとはいえ、お陰さまで今月半ばには軽い薬に切り替えられそうです。どうかご安心下さい。
1996年11月の開業から数えれば、あと5年弱で古本屋稼業も20年となります。電子書籍など本をめぐる環境の激変をある程度想定内のこととして心得ておく以外、この大きな「時代=歴史」のうねりがこれから5年という時間のなかで一体どんなふうに降りかかってくるものなのか、日月堂という古本屋がその間にどんな姿をとることになるのか、あるいはきれいさっぱり消え去っているのか、何をとっても未だ想像すら叶わぬ2012年の年頭ですが、まずはこの1年、変わらぬご厚誼を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
『こうりん模様』上下2冊も今週の新着品 奥付欠のため断定は避けねばなりませんが、おそらくは明治40年に芸艸堂から発行されたもので、現在手にしているものは解説が欠落しているものと思われる他、残念ながら上巻の裏表紙が欠けています。但し、中面は虫喰やシミなどのない良い状態です。云うまでもありませんがこちらも2冊全編木版多色刷。
■今週は新着品のご案内に代えて、当面の予定を申し上げておきます。
*店は4日に営業を再開、本日7日(土)以降しばらく、いつもどおり、というのはすなわち週三日ではありますが、営業いたしております。ご来店のほど、何卒よろしくお願いいたします。
*早いところでは昨日6日に入手された方もいらっしゃるようですが、1月25日(水)から30日(月)まで松屋銀座で開催される即売会『第28回 銀座古書の市』の目録が出来、明日以降、店頭でお渡しすることができます(無料)。ご希望の方は店頭でお申し付け下さい。
「ゆうメール」によるご郵送希望の方は、「ゆうメール」送料290円分の切手を必ず同封の上、封書でお申し込み下さい。また、今回当HPへの目録アップはいたしませんが、ご希望の方には1月12日以降、小店当該ページのみPDFファィルでお送りいたします。
目録ご郵送、PDFファィルでのご案内のいずれもご希望の方は標題に「第28回 銀座古書の市 目録希望」とお書きの上、①お名前(フルネーム)、②メールアドレス、③ご連絡先お電話番号、④ご住所を必ずご明記の上、封書またはメールでお申し込み下さい(①~④のいずれかが欠けている場合には、ご返信申し上げかねる場合がございますので予めご了解下さい)。お申込いただいた方には折り返しご連絡申し上げます。2012年の行方を占う即売会、目録商品のご注文や会場へのご来場など、みなさま何卒よろしくお願いいたします。
*可能な限り2月に決行していたパリ出張ですが、今年は体調のこともあり、後ろ髪を引かれる思いで見送ることにいたしました。体調やユーロ圏の様子などを見ながら、年内に一度は海外出張に出たいと考えています。
■今週の新着品は画像の2点の他、19世紀末~20世紀初頭・フランスのインテリア写真プレート集5冊(大判)、マッチ製造メーカーの英文パンフレット(マッチラベル現物貼込有)やマッチ商標登録簿など6冊、児童教育用の古い教材・イラストプレート集(英語)等が明日には店頭に並びます。
■ただいまステロイド3mg/1日で8日目に入りました。抗ヒスタミン剤との組み合わせでこの数日は安定しております。来週以降、何mgで越年することになるのかは主治医の先生のご判断次第ですが、お陰さまでいまは かゆみ もすっかり抑えられております。震災直後にいただいたメールをはじめ、思えばご心配をおかけすることの多い2011年でした。みなさまの温かいお気持ちがどれほど有難く、心強く感じられたことか知れません。みなさま、この1年、本当に有難うございました!
■クリスマス・イヴに、本年ラストの更新です。イヴ前日の23日は小店にとって市場もこれで打ち止めとなる「明治古典会クリスマス大市」でした。本気で入札する腹積もりでいた『蒼ざめた童貞狂』は1ページ補修があり入札を見送り、かなり状態のよい『死刑宣告』の再版一本に絞って満身の札で挑むも、8,990円差で落札できず。前回、やはり2番札に甘んじた時よりさらに6万円上乗せしてこの結果、久しぶりに本気で悔しい思いをしました。
がしかし一方で、入札するか見送るか、迷った末に札を入れたウィリアム・モリスのケルムスコット・プレス刊本があれよあれよと次々に落ちて、出品されていた5冊の内4冊を落札。ケルムスコットはもうお腹いっぱいです買えませんと思っていたところへ、何と落札できなかった1冊を買い引かれた荷主さんから、荷主さんの買い引き価格でいいから買っておきなさいいいものだからめずらしいでしょと半ば、というかほとんど強引に購入を決められて出品されていた5冊全点がただいまワタクシの手元にあるという …… 嬉しいんだか苦しいんだか、いや苦しい一方なのだけれど、兎も角も年末に突然の「ケルムスコット・プレス祭」みたいになっちゃったな。という感じです。画像にとってみると何だかクリスマスにぴったり! とちょっといい気分になったりしたもののしかし想定外の買い物である。と考えていても仕方ないので、とりあえず落札品のラインナップをご案内しておきます。
アルフレッド・テニソン著『MAUD , A MONODORAMA』はヴェラム革装・タイトル背金箔押、小口平紐付で1893年限定500部の発行。章頭に飾り文字と装飾図案を配置。
同じくヴェラム革装・タイトル背金箔押の小型本『HAND & SOUL』はダンテ・ガブリエル・ロセッティの著書。1895年、限定300部発行。ケルムスコット・プレス刊本としては唯一、シカゴの流通業者を通じてアメリカの読者に向けて販売された模様。
以下3冊はブルーの厚紙表紙で背に布を使った装丁。『THE TALE OF THE EMPEROR COUSTANS AND OVER SEA』は1894年、フランスの古い物語をウィリアム・モリスが英訳し、限定525部を発行。王の物語と異国の物語に分け、それぞれに見開きの扉が綴じ込まれています。
ウィリアム・モリスの著書『GOTHIC ARCHITECTURE:A LECTURE FOR THE ARTS AND CRAFTS EXHIBITION SOCIETY』は1893年、1,500部発行。章頭飾り文字のみで、ケルムスコットらしい扉がこの本にはないのが惜しまれます。
『of the Frendship of Amis and Amile』もフランスの古い物語をウィリアム・モリスが翻訳、1894年に限定500部を発行。
2冊目から5冊目までは、通常のサイズの二分の一ほどの小型本。5冊ともほぼ全ページ黒・赤の2色刷りで、装飾の異なる章頭飾り文字が配されています。
改めて5冊を並べて眺めてみれば、深いスミの色味、タイポグラフィ、印刷の圧力など、ケルムスコットならではの何ともいえない魅力を再認識することになりました。だがしかしこの5冊。5冊も来てしまったところで完売する日は来るのだろーか。
■画像2点目は古い羽織紐。日月堂は間違いなく古本屋である、そうに違いないのですが、それはともかく羽織紐が古い木製や紙製の芯の使われた糸やその他の手芸用品とともに入荷、これはなかなか面白いものが入っていそう。抽象図形を組み合わせたカラフルかつ洗練された恩地孝四郎装丁の戦前の教科書16冊、戦前海外映画俳優の絵葉書・ブロマイドがファィル1冊+しばり1本、雑誌『それいゆ』は創刊号や藤田嗣治の表紙絵の号を含む10冊、、大正~昭和初期=モボ・モガを彷彿とさせる帽子のカタログ類が10余点、露西亜を含む『現代建築大観』7点など、残り少ない営業日のなか、明日はこうした新着品が店に届きます。
■今週半ばまでにアップを宣言していた先週の新着品、ようやくお約束が果たせました。ここからひとつ前、12月17日付の方もご高覧いただければ幸いです。
■年内営業日時については、お手数かとは存じますがこのページの左上、「営業日案内」をご覧下さい。何卒よろしくお願いいたします。
色々なことがあった2011年だけに、せめてクリスマスは楽しく、そしてお正月はしみじみと、どうかお元気でお過ごし下さい !