■店は来週も火・木・土曜日の12時~20時で営業いたします。月曜日は古書会館で市場出品のための仕分け、水曜・金曜は目黒・ジェオグラフィカさんに入れる商品の準備と今月が年度末となる組合への清算(…もちろんですが支払いです)で、まだまだジタバタ過ごす日々が続きます。 ■先週末よりネット環境に不具合が続き、一時はHPが閲覧不能となってしまいました。週に二度の更新どころではなく、明日は店のパソコン、モデムの診断から始める予定です。このため、とくにメールのご返信等にはお時間がかかる場合がございます。お急ぎのご用件はお電話でご連絡いただければ幸いです。ご面倒をおかけいたしますが、どうかご理解のほど…。 ■この一年を思い返して、痛恨の不落札品は何か-そんなものは実に山ほどあるのですが、わけても悔しかったのが戦前の舞踊関係の雑誌・冊子の一口でした。バレエ・リュスだスエドワだといったところで、肝心の本邦資料がないことにはあまりに表層的ではないかと、落札できなかった自分がいかにも情けなく、こればかりは忘れられずにおりました。それが今週金曜日、何とまた市場に出現!-以前は一括で出品されたのが、今回は二口に分けられていること以外に違いはありません。前回の落札価格はもちろん、上札がどこまで入っていたかも鮮明に記憶しています。こうなると意地です。前回の落札価格の少し上を今度の最低入札価格に置き、前回の上札を超える上札を書き、封筒が札で膨らむ度に用心のために札を改め…二口とも「再改め」で落札。しかし、ムキになって落札したところで、小店ではいまだかつて舞踊関係の資料が売れた試しがなく、これはもう自分のための買い物じゃないか…といった愚痴はさておき、新着品のご紹介です。いかにも新興写真風の女性の肖像が表紙を飾るのは、『崔承喜パンフレット第一集』で昭和10年・崔承喜舞踊研究所発行の第二版。初版の売切れ、第二版発行の遅れを詫びる言葉が編集後記に記されています。グラビア中心の構成ですが(見ているとノイエ・タンツばかりでなく古賀春江や宝塚まで想起されます)、巻頭の川端康成の「崔承喜論」(転載)の他、村山知義、杉山平助らのテキスト、光吉夏弥、永田龍雄らの批評抜粋も。なかでも来日当初、石井獏の研究所に起居していた頃のことを記した中根宏の文章は印象的。また表2~表4まで広告も全て崔がモデルを務めていて、タイアップ広告のはしりとでもいいましょうか。メイクアップはM.Ushiyama…メイ牛山だぁ(最近は色紙
に「長寿は芸術」と書かれるのだとか。ううむ。正しい)。その隣は今度は崔の師匠の出版物で『石井漠パンフレット』昭和8年・石井漠舞踊研究所の発行。こちらも中心はグラビア頁ですが、「舞踊芸術の理想について」と題された、石井の比較的長文の論考が収められています。論考によれば…って、調子に乗ってると全然終わらないのでは…… ■……はい、そうです。先、急ぎましょう。まるで洋雑誌のような表紙は『世界的舞踊詩人サカロフ夫妻舞踊公演』の公式パンフレット。A.サカロフ「舞踊私見」、クロチルド夫人の講演原稿の翻訳が収められており、これはしっかり読んでおきたいところ。葦原英了が多くの頁に関わっている点、少し甘さが予感されますが。それにしてもこの夫婦、二人そろって発する空気の何とも色っぽいこと。『舞踊 創刊号』『舞踊 第二号』はともに昭和9年の発行で、第二号の表紙デザインは河野鷹思。創刊号の巻頭言にあるように“総合舞踊誌”として、内外の尖端舞踊情報を伝えます。グラビア多し。最後は原弘が表紙を手掛けた『舞踊日本』昭和9年10月号。石井漠を発行人とし、発行は舞踊日本社。同誌を支える「舞踊懇談会会員」には、板垣鷹穂の名前も見えます。無記名の「舞踊往来」の頁では崔を評価した川端康成から、サカロフをノイエ・タンツの元祖だと“途方もない迷説をはいている”としてあの葦原英了までこき下ろし、「私の印象に残った舞台」アンケートでは堀口大学が“十数年前に見た/アナ・パヴロヴァと/ニジンスキイ!/理由は?理由は?理由は?/理由なんかないかも知れません!”と答えていたりするこの一冊、かなり面白そう。この六冊については別の頁でまた改めてご紹介したいと思います。その楽しみを私的・趣味的買い物の、せめてもの余禄としないことには、落札価格がせつないので。しかしなぜどうして。ウチは“こんなん”ばっかりなんだろーか……。新着品はこれだけでなく、来週市場は休みですが、店頭でも未紹介の商品をお披露目いたします。ちなみに次回は洋書、ドランとジャリの、パスキンが挿絵を……っと今週はこのへんで。
■明日6/16(土)、店は通常通り営業いたしますが、夜より地方出張に出て、帰京は18(月)夜の予定。「雑書目録」等の通信販売は18(月)まで、実質的にお休みさせていただきます。この間のご照会、ご連絡には火曜日以降、順次ご連絡申し上げます。ご不便をおかけいたします。どうかお許しください。来週も店は火・木・土曜日各日12時~20時で営業いたします。 ■金曜日は神保町の市場「明治古典会」へ。以前は年に数度は市場に出て、それほど頑張らずとも落札できていたのに。久しぶりに出てきたら状況は大きく変わっておりました。『NOUVELLES COMPOSITIONS DECORATIVES』シリーズ1・2の二冊はパリで発行された石版刷の図案集。各刷ともポートフォリオに未綴じのプレートが48点ずつ収められています。作者はSERGE GLADKYとあり、無刊期ですがアール・デコ盛んなりし1920年代の発行と見て間違いないでしょう。シリーズ1は抽象的なコンポジション、シリーズ2は動物や昆虫、魚などをモチーフとした図案となっています。アール・デコの図案集は何度か扱ってきましたが、今回のこの二冊、とくにシリーズ2の動物モチーフの例は珍しく、全体に図案というよりも作品集といった感が強いのも特徴。微妙な中間色の組み合わせなど「さすがはフラン
ス」と唸らせられます。しかし。再改メまで札を入れ直して、落札価格を見た時にはもっと唸りました。あちらではよく、プレート毎に2~3千円でバラ売されているものですが、日本でももはや限りなくこの値段に近づいてきてしまったようであります。これもまた、当分在庫品。はい。そのようで。 ■お次は小店好みの戦前・海外渡航関係。当時、台湾銀行にお勤めだった某氏が昭和8年に香港を発し、アメリカ西海岸まで渡航した際に入手した、主に日本郵船がらみの紙モノです。しかし、この手のモノの出方としては点数が少なく、上陸後の某氏の足跡まで辿れないのがいかにも残念。モノの向こうに人の姿が立ち現れる-そんな時、紙モノは単なる紙ではなく、物語へと姿を変えて迫ってきます。かつては旅の出発地点から帰国まで、日時が追えるのではないかと思うほど、レシートや切符の類までまるまる残され、それがそのまま市場に出品されていたものですが、最近はそうしたケースがめっきり減りました。このHPをご覧の方のお宅に、とくに戦前の渡航にまつわる紙モノ・小冊子が残されていましたら、是非、小店までご相談ください。「ちょっと待て。捨てちゃう前に日月堂」。よろしくお願いいたします。ちなみの海外渡航関係の紙モノはバラ売りの予定です。この他、ジグ描くところの「ミスタンゲット」のコスチューム・デザイン直筆原画なども入っております。
■今週も来週も店は火・木・土曜の各日12時~20時で営業しております。天気予報によれば明日は雨。入梅も近づき、古本・紙モノを扱う商売にはつらい季節ではありますが、物見遊山にご来店いただければ幸いです。 ■ここでご紹介している品物、これ全て販売している商品です。時に、個人的なコレクションと思われる方もいらっしゃるようですが、当方古本屋である限り、お客様にお見せしたものはお売りするのが筋というもの。これはいいゾと思うものからご紹介してこその新着情報であり、それをお手にとっていただいてこそ、店の意味もあるというもの。販売価格はもとより、ご質問・ご要望(ときに「それは無理」という場合もありますが。何分にも一人でやっているもので)などありましたら、どうぞいつでもご連絡ください。 ■さて、週二回の更新を目指しての新着情報。云ったからにはやらないと。というので先ず最初は折戸彫夫『詩集 化粧室と潜航艇』。昭和4年・名古屋のウルトラ編集所から発行された初版本。折戸、ウルトラとくれば、ピンとくる方にはすぐにピンとくる、マイナー系における王道ものとでも申しましょうか。本文頁に多少の埃シミのあるのが残念ですが、表紙まわりの状態は良好です。表紙を一見しただけではとても和書とは思えないフランス装を引き写した造本は、「シネマ都市」「ガラスの機械室」「自動車とポスター」などのタイトルが並ぶ作品にとても似合っています。“私は私の詩学
的根拠をモダニズムのサイコロジーに置くのである。/モダンはスピードと多元性と鋭角的回転性と飛躍と軽快さである。”(当書所収「モダニズム詩学小論」より)。これぞ、モダニズムの真骨頂。たった55頁の小さな本に、時代の精神がしっかり刻まれています。 ■画像下の正体不明の出版物。これが2000年に一度手放して以来、再会を期しつつもなかなか叶わずにいた『CATALOGUE OF SOVIET FEATURE FILMS』。平たく言えば旧ソ連が映画の海外輸出を目論んで発行した映画ソフトのカタログで、今回入手したのは三冊。1961年版は英・仏・西の三ヶ国語併記、1963年・1964年版はそれぞれこれにロシア語を加えた四ヶ国語が併記されています。一作毎に見開きを使用、片面は主演俳優、監督、撮影監督、梗概が記され、片面は図版で構成されるのですが、この図版が何といいましょうか-映画の内容は児童向けから恋愛もの、大河ドラマにSFにと、色々ありはするものの-どう見ても何を見てもものすごくキッチュなのは何故か(特にSF=かぶりモノ系)、といえば、おそらく映画自体の低予算にフォトモンタージュのやりたい放題が重なった結果ではないかと推察します。ともあれ、ロシア・アヴァンギャルドの遺伝子をちょっと(……大いに?)違ったテイストで引き継いだ珍本。オードリー・ヘップバーンのそっくりさんも出てきます。らち?…まさか!