■今週はこの金曜日~土曜日に開催される、小店所属支部主催の古書の市場「南部支部大市会」に出かけるため、一日早い更新です。
明日金曜日はお休み、6月9日土曜日は、開店時間を午後2時からとさせていただきます。ご不便をおかけし大変恐縮ですが、この日のご来店につきましてはどうかくれぐれもご注意下さい。来週はまたいつもと同様、火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。
■今週火曜日6月5日にスタートした「内澤旬子のイラストと蒐集本展」。5日水曜日には、内澤さんご本人によるブックガイドの補佐役を、どうにかこうにか務めてまいりました。スタジオ イワトにお集まり下さったみなさま、本当に有難うございました。
会場では、内澤さんがこれまでに描いてきたたくさんのイラストと、初期のお仕事として手掛けられた切り紙、そして内澤さんご自身による手製本・ルリユール本や、旅先から連れ帰った思い出の本など、貴重な旧蔵書籍を展示販売しています。書籍では、チェコやキューバでもとめたという珍しい祈祷書のコレクションを中心に、スタート2日目にしてご売約多数、早いもの勝ちです。
会期は6月16日(土)までで、今週9日(土)には、“この夜だけの満月バー開店” なんていう素敵なお楽しみも。
詳しくはこちらまで。 → http://www.studio-iwato.com/studio/program/index.html
しかも、スタジオ イワトさんとルリユール作品展が開催されている「ギャラリー冊」さんとは徒歩圏。というのでこんな素敵な提案も。 → http://suigyu.exblog.jp/
案の定、ゆっくり見ることができなかったイラストと切り絵を拝見しに、私も再訪を予定しています。みなさまこの機会に是非、会場までお出掛け下さい! よろしくお願いいたします。
■画像1点目は内澤さんの旧蔵書よりイエズス会初代総長イグナチオ・デ・ロヨラが著した『霊操』で、1678年にローマで発行された版。ヴェラム革装、金属活字直刷、いかにも洋古書らしい佇まいです。宗教書なのでこうした見方をしては不謹慎かとも思いますが、、銅板画の挿絵は、人物の口元から吹き出し様のものが描かれるなど、どれをとってもかなり面白い。昨日の段階ではまだ残っていました。買いたい気持ちを抑えて帰ってまいりました。魅力的です。
■画像2点目は小店店内の古い写真から、「虎狩り記念写真」と「留学記念写真」(ともに便宜的に=勝手につけたタイトルですが…)。「虎狩」はよく見ると詰め物をしたと思しき尻尾の造形と、右側隅に写ってしまった じっとしていられない見物人たち がなかなか愉快であります。「虎狩」と同じ人がもっていた「留学」には日本人が1人。セピア色の写真には、たくさんの物語が潜んでいそうです。写真に写った人物の詳細ならびに虎狩との関係は不明ですが、しかし、虎狩りから留学まで、それなりの家系だったことだけは間違いないでしょうね。
■なぜだ、なぜないんだ……市場から自宅に帰ってきて探せども探せども出てこなかった1枚のフライヤーがこちら。来週6月5日(火)より、西神田の「スタジオ イワト」で「内澤旬子のイラストと蒐集本展」が始まります。小店は「蒐集本」の方のお手伝いで、6月6日(水)に開催される内澤さんの「ブックガイド」では、お話の聞き出し役を務めさせていただきます(但し、すでに定員一杯の満員御礼です)。内澤さんがこれまで描いていらしたイラストと、蒐められた本とを展示即売する企画ですが、蒐集本は内澤さんが旅先から連れ帰ってきた本を中心にほとんどが1点限り、そして実際に著書にも使われている内澤さんのイラストを販売するのは今回が初めてのこと。内澤さんもご自身のブログで書かれていますが、入稿までのさまざまな痕跡までとどめた貴重なものも。会場であると同時に企画と運営を主に取り仕切って下さるスタジオ イワトさんのサイト→こちらで詳細ご確認の上、是非会場までお出掛け下さい。よろしくお願いいたします。
■ギャラリー册で頑張っているルリユール作家グループのみなさんに刺激されたせいか、今週は印刷がらみの新着品になりました。
背は光沢のある茶色のシルク張り、『The Yellow Barn Press』とタイトルが記されたポートフォリオ。小口側の茶色の華奢なリボンを解くと、中から57種・60点の紙ペラ=エフェメラが現れました。タイトルの「The Yellow Barn Press」はそのままアメリカのアイオワ州にあるプライヴェート・プレスの名前で、多少他の版元のものも含まれますが、ほとんどが同プレスによる少数部・私刊本の出版案内です(多少、版元に関する印刷物も混じっています)。プライヴェート・プレスのエフェメラだけに、紙質などまで細心の注意が払われた魅惑の紙モノたち。当然全て活版印刷です。さらに、“Yellow Barn”のエフェメラには、このプレスの得意技らしい木口木版が添えられたもの - クラシックでいい感じのデザインです - が多数含まれています。
旧蔵者は、組版の意味まで含む広い意味のタイポグラフィの蒐集または研究をしていた方らしく、エフェメラは1985年から2005年頃までに刊行→蒐集されたもの。近年、日本でも人気が高まる活版印刷ですが、概ね“Yellow Barn”の印刷物が圧を感じさせずにインクののりが均一、欠けたところなど見られないよい出来なのに対して、他のプレスの刊行物でとくに刊行時期やセンスの若いものに限って印圧が強く、また文字の欠けなどにも頓着しない、いまどきの印刷物となっているのは日米、いや万国共通の傾向でしょうか。がしかし …… こうした小さな版元がいまも各地に散らばって活動を続けているアメリカ大陸では、欧文活字が失われちゃうかもなんて心配をしなくてよいという点に、彼の地と我が国の雲泥の差があるのでした。
■小店で印刷見本類をご覧の方で、さらにその一部 - つまり僅かに数人 - の方にはお馴染みのはず。フランスの印刷同業者組合の定期刊行物の12月クリスマス特別編集号『BULLETIN OFFICIEL』の1927年版。この年の巻頭特集は「印刷と本の図像学」で、エフェメラから本まで、印刷の現場とそれと関連した風景が表現されている各種図版を多数集め手厚く紹介。厚冊の残り3分の1が例によってお楽しみの、優秀印刷物の“現物”綴じ込み部分で、画像のようにアール・デコ時代の優れたデザインに次から次へとお目にかかれます。
■今週はこの他、小型ながら銅板手彩の1920~1930年代のクリスマス・グリーティングカード11点、虎の皮を囲んでの一族郎党の記念写真などを含む古い写真帖2冊、『The Yellow Barn Press』と同じ口で古いカード類の復刻やインキュナブラ関連参考図書4本分などが明日店に入荷いたします。また、藤田嗣治ら錚々たる画家が表紙を描き、グラビアページも不必要に格好いい雑誌『ホーム・ライフ』21冊は現在事故申告中ですが、来週には店に入れられると思います。
■尚、来週の金曜・土曜日は東京古書組合南部支部の大市会です。このために、当ページの更新が数日遅れる可能性がありますのでご了解いただければ幸いです。
■来週、店の営業スケジュールが変わりますので、そのお知らせを先ず。本来営業日にあたる5月29日(火)は所用のため臨時休業させていただきます。5月31日(木)と6月2日(土)は12時~20時で営業いたします。また、5月30日(水)は店内作業の関係で時間未定ながら営業を予定いたしております。またしてもご不便をおかけいたしまして大変申し訳ございません。ご来店の折にはくれぐれもご注意いただけますよう、よろしくお願いいたします。
■このままもひとつお知らせ。魅惑のルリユール本と対面できる『森羅万象ミクロコスモス』では、その会場の一角でもって、こっそり商品を販売させていただいているのですが、これまでの経過を勘案しつつ明日新たに商品をピックアップ、来週には商品梃入れの予定です。会期は6月9日(土)まで。ルリユールの布教と啓蒙に努めるべく、日替わりで Les fragments de M の女性陣が常駐する「ギャラリー冊」へ、この機会に是非お出掛け下さい。
■今週火曜日に終了いたしました「リュシアン・ヴォージェルの仕事場から」。はじめてのお客様にも多数ご来場いただくなど、お陰さまでいつもよりずっと活気づいた3日間となりました。シャルル・マルタンのフルプレート、サティ署名入の『スポーツと気晴らし』はじめ、過半の商品がご売約となり、今年前半最大の“急勾配上り坂”は息を切らしつつもどうにかこうにか越えられたようです。ご来店、お買い上げ下さいましたみなさまに心より御礼申し上げる次第です。本当に有難うございました。
がしかし、依然、小店で長逗留をきめこむつもりかジョルジュ・バルビエ画文集『今日の幸福 あるいはモードの魅力【現代モードの美】(Le Bonheur du Jour ou Les Graces a la Mode)』、バラ売りが決まった『ガゼット・デュ・ボン・トン(Gazette du Bon Ton)』1924-1925年発行分8冊など、残った品物については引き続き店頭で販売いたします。初めても再度も再三再四も何度だって見るのはタダ。みなさまのご来店をお待ちいたしております。ふっふっふっ。見ているうちに欲しくなる(はずなのだが…)。
■ここ2週間、更新作業に時間がかかり過ぎたという反省もあり(もうヘトヘト)、今週は作業軽減を眼目とさせていただきます。『少年倶楽部』昭和8(1933)年1月号の附録、「空中軍艦大模型 九枚一組」の9枚揃いは、袋にイタミと汚れ、組立パーツ9枚に汚れと余白部の欠けなど、さすがに経年の疲れは見られますが、肝心のパーツに欠けがないという点では上出来ではないかと思います。『少年倶楽部』専属で、附録づくりの名人・中村星果の考案・設計による紙模型は、できるだけ糊もハサミも使わず組み立てられるようにできているのだとか。星果の大型紙模型シリーズは少年たちに熱狂的に支持され、海空両用という大胆な着想による「空中軍艦」の他、組み立てると全長82cmになるという「軍艦三笠」はじめ当時世界一の高さを誇った「エンパイヤビルデング」など、昭和6年から12年までの間に少なくとも16点の附録が生まれました。袋に描かれた想像図は挿画家として活躍していた鈴木御水の作で、この後、戦時色濃い挿絵や戦争画を盛んに描くようになっていきます。
■商標、賞状、証章、チラシ、海外旅行のパンフレット、何故かJALパックのショルダーバック…年代まちまち、カテゴリーばらばら、何の脈絡もない紙モノが真鍮金具のついた革製の立派なトランクに放り込まれて出品されていました。いまも紙モノは好んで、かつまた小店商品の大きな柱のひとつとして積極的に仕入れていますが、さすがにここまで雑多なのに手を出すのは久しぶりです。古本屋になった当初、当時はほとんど誰も札を入れないこんなものばかり買っていたことを思い出しました。
今回の狙いは2冊の写真帖でした。巻頭は立派な髭をたくわえた若き当主。次にその幼い娘と妻と思しき女性。本格的洋装の男女、洋犬を抱いた中年女性、装いを整えた女子どもに深々と頭を下げている一人の男、父母娘を乗せた馬車とその横に立つ御者、洋風水着を着用しての海水浴、その奥に町のひとつふたつ控えていそうな立派な木戸…… と、明らかに、一般市民とは全く異なる上流階級の家から出たもの。木戸が大きいがためにサイズが不釣り合いに小さく見える表札に目を凝らすと「松平頼親」とありました。調べてみると、頼親は讃岐高松藩の最後の藩主となった第11代松平頼聰の六男で、伯爵となっていた松平家の世継。この浮世離れした生活風景も - 大体この写真が全部、写真家をその場に呼んできて撮影したものばかりです - なるほど納得というものです。巻頭の揮毫の日付=明治43年4月と、巻末に置かれた医師で漢詩家、初代高松市長となった赤松渡の謹呈言から、明治末頃の記録と推察されます。髪形や服装、写真に撮られる時のポーズ、住まいと庭、屋敷前に犇めく人力車など、風俗的な資料として意味を持つのはもちろんですが、そうした杓子定規な価値とは別に、ページを前に後ろに繰っていると、やがて柝の音とともに物語が動き出しそうな気がしてくる - 写真に写るものすべてがあまりに清潔で つくりものめいているせいなのか - 不思議な写真帖です。
■今週はこの他、写真帖の収まっていたトランク(トランクだって売るのが小店)、トランクの中身(少なくとも 武井武雄の専用封筒・便箋使用直筆連絡文1通がある他は未だ詳細不明)、戦前国内観光案内冊子・パンフレット類約10点、『赤い風船あるいは牝狼の夜』(削除後の完本)、マリー・ローランサンが表紙を描いている『モンテカルロ グラン・バレエ』プログラム1冊、大岩オスカール幸男のドローイングが『peace』と『war』の2点、などが明日、店に入ります。