左右は『La Coiffure de Paris』1961年発行の表紙。メンズのみならず、子供向けの新しいスタイルの提案も。中央の2点は『百日草別冊 髪形の祭典』より。「アン王女」より年上のマダム対象の新スタイルながら、主流はカールをきかせたショートカット。「カリタ氏」はじめ各スタイリスト名の記載あり。
■大晦日、森閑とした神保町に朝から参加書店関係者が集まって、「銀座 古書の市」最終日の札計算(=売上計算)をしたのが2009年の仕事納め。大晦日から元旦にかけて年賀状を書いては投函し、合間に、これは恒例の近くのお不動様へ初詣、境内でお焚き上げのご声明を有難く拝聴するとようやく怒涛の2009年を抜けて2010年へと時が移ったのを実感、帰宅するとさすがにこの日ばかりは呆けて過ごし、2日からは全く手をつけていなかった2009年の経費・交通費等もろもろ清算作業が延々と続き、即売会から戻ってきた荷物の市場出品を準備して初市に出す …… はずだったのにああ今年もまた目標倒れか出品完了までには至らず迎えた今年の初市から、新着品のご案内です。フランスの『LA COIFFURE DE PARIS』など1950年代半ばから1960年代初めの欧米の美容専門誌が33冊入荷となります。この当時としては他にも時々見受けられるスタイルですが、直輸入した雑誌に主要な記事の翻訳(抄訳)冊子をはさんで販売していたもの。『LE FESTIVAL DE LA COIFFURE』というタイトルの金文字も美しい1冊は、裏表紙に『百日草別冊 髪型の祭典 昭和29年』とあって、美容専門雑誌・製品で知られる「百日草」さんのお仕事。今回入荷の33冊は、百日草さんを通じて美容院に流通していたものが、たまたままとめて残されていたものと推測されます。この当時、女性の髪形は大人も子供もショートカットが全盛で、あの「アン王女」の髪形をベースにアレンジを加えたようなものばかり。1953年に公開された映画「ローマの休日」は世界的な規模でモードに影響を与えたといわれますが、33冊眺めるとその事実を改めて思い知らされます。さて、そのスタイルの製造過程(?)はと拝見いたしますと、カーラーとピンが頭中に盛りまくられていて、いかに思う方向にカールさせるかが当時最大のモンダイであったのでありましょう。美容とその動向についてはトンと不案内な私ですが、いまでは当たり前の「ナチュラル。」という言葉の気配のケの字もないことだけは断言できます。とすると、「ナチュラル」の発見は美容界における新大陸の発見みたいなもんだったんだろうなというのはさて措き、日本の子供はといえばほぼ総員「女の子はワカメちゃん、男の子はカツオくん」だった当時、海の向こうのフランスでは、早くも子供のヘアスタイルの新しい提案があったり、最新の美容室のインテリアやゾーニング提案などもあり、びゅーてい&こすめ(と書いてるだけでも似合わない)方面にトンと不案内な人間から見てもなかなか興味深い33冊ではあります。この他、『建築写真文庫』8冊、19世紀末・ロンドンのファッション週刊誌合本1冊、福袋のごとく何が出てくるかは“入荷してからのお楽しみ”な古い紙モノのダンボール1箱など、2010年の初荷は土曜日に店に到着の予定です。
エイゼンシュテインによる演劇関係のスケッチ集より。左から、1921年「誘拐犯」のための衣裳デザイン、1921年「Puss in Boots」の舞台装置、1920年ジャック・ロンドンの「メキシカン」のための舞台美術
■時は少々遡って2009年12月25日。朝8時半に銀座の松屋・搬入口に集合。前日に集荷まで済ませていたカーゴ3台分の出品商品を搬入口から会場に上げ、ワゴンや棚など全部で8台分に陳列、12時半に陳列を終えるとその足で神保町へ出て、2009年最後の市場へ。いま思えばよくまぁそんなことが。と思う1日だったので、その極私的記念。新着品2点目は昨年末の落札品から、1968~1971年の間に当時のソヴィエトで発行されたエイゼンシュテインのデッサン・スケッチ集より、画像はエイゼンシュテインが演劇作品のために残した画集『THEATRICAL SKETCHES』に収められた3葉。落札はエイゼンシュテインのテキスト「ドローイングに戻る」を付しメキシコ滞在中のスケッチを集めた『MEXICAN MOTIFES』、同じくテキスト「いかに描くことを学んだか」を付した『DRAWINGS OF DIFFERENT YEARS』と、合わせて3冊でした。いずれもかなりの大判、ポートフォリオに未綴じのリーフを収める体裁(同じ体裁のエイゼンシュテインの画集にはもう1冊、映画『イワン雷帝』のスケッチ集が出版されています)。残された作品は、表現主義、キュビスム、構成主義など当時の前衛アートを追い、黒人ジャズやメキシコの民族文化に新しさを見出し、戯作調の具象画があり、コクトー風の単純化された線があり、1910年代後半から死の直前まで続けられた試行と変化の痕跡とが … いやいや。何しろ「上手いっ!」。新年くらい能書き抜きに、洒脱で達者な作品にはただ目を楽しませていたいと。年末の市場からはこの他、1900年パリ万博関係書・銅版画入大判3冊、ポショワール挿画入り19世紀フランス演劇人名事典、1806年イギリス発行・銅板地図類などがこちらは自宅に届いてそのまま越年。何しろともかく重いので、適当なダンボール箱が見つかり次第、店に向けて発送いたします。年末年始で入荷が前後いたしますが、こちらはいま少しお時間をいただけますようお願いいたします。
■本日1月9日(土)正午より、2010年の初売りとなります。福袋なし。バーゲンなし。先着プレゼントなし。ポイント還元なし。ご来店をお待ちいたしております。それでいいのか。
■謹んで新春のお慶びを申し上げます
店舗の移転を余儀なくされた2009年を、昨今の景況下にあって無事乗りきることができましたのも、偏にみなさまより賜りましたご厚情によるものと心より御礼申し上げます。
また、年末の「第26回 銀座 古書の市」では、多くの方々にご注文・ご来場賜り、本当に有難うございました。
井戸の中とはいえ、嵐に見舞われたような昨年とは一転して、2010年はじっくりと足腰を据えて、また一から店を育て、HPを充実させていかねばと存じております。
再び、遅々たる歩みの一年となりますが、そのひとつひとつを大切にしてゆきたいと存じます。みなさまには旧倍のご支援・ご教示を賜りますよう、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
■新年は店の営業、HPによる受注とも、1月9日(土)より、来週から店は火・木・土曜日の各日12時~20時の通常営業とさせていただきます。HPの新着情報もこれに合わせて再開させていただきます。
昨年積み残した雑務や即売会から戻った商品の整理のため、スタートが遅れまして大変申し訳ございません。何卒ご容赦の上、いま少しお時間をいただけますようお願い申し上げます。
年頭にあたり、略儀ながらご挨拶かたがたお願い申し上げる次第です。
2010年も何卒よろしくお願いいたします。
[画像について] 昭和12年、右文章館発行による『育児画譜 ゆりかご』の最初におかれた「誕生」を記すページ。子供の誕生から5才までの生育の記録を、写真を貼付しながらまとめてゆける贅沢な育児日記で、随所に添えられた多色刷りの三澤佐助による挿画が洒落ています。
■年内も残すところ十余日。年内、沼辺信一氏のご連載をもう一度アップする予定ですが、当新着品ご案内は今週が年内最後となります。来週の金曜日は「第26回 銀座 古書の市」の搬入・陳列と明治古典会クリスマス大市とをカケモチしようという過酷な一日を過ごしているはずで、HPの更新は到底不可能かと。店は来週の22日(火)と24日(木)で年内の営業を終えますが、仕事は続いて26日(土)~30日(水)、「古書の市」会場=松屋銀座8階大催場に出店いたします。「古書の市」では目録品以外にも『ガゼット・デュ・ボン・トン』のファッション・プレート(ポショワール多、2千円から)、フランス挿絵本の挿絵見本や銅版画(プレート、1千円から)、資料兼見た目も優れた1930年フランスの印刷見本(プレート、2千円から)、1930~60年代の『VOGUE』『HARPER’S BAZAAR』、1920年代フランスの型紙付きファッション雑誌、戦前洋モノの絵葉書やこまごました印刷物多数(100円から)、「カッサンドル=デュボネ」や「マドレーヌ・ヴィオネ=タヤート」による広告紙モノの額装仕立て、まだまだ続くゾ唐長さんの唐紙、木版刷の千代紙や着物柄下絵などなどなど和洋紙モノ中心の編成に、戦前の書籍(500円前後の格安品多数!)までを加えて展示即売いたします。また、目録掲載品で事前にお申込のなかったお品物についても会場出品の予定。紙モノ好きのみなさま、目録品で現物を確認したいと思っていらした方々、どうか是非、会場までお運び下さいませ!
■今年最後の新入荷品ご紹介、先ずは欧米の航空機関係専門誌の山から。その名も『FLIGHT』というイギリスの雑誌の1928年前後発行分から始まって、アメリカの『Bee-Hive』1950年代発行分まで、床から積んで約1mの高さになる量がどどっとまとまって入荷いたしました。これらの雑誌で辿って見る航空機は、双葉機、飛行船からジェット機へと飛躍的に発展…なんてことは改めて云うまでもなく、しかし、これがたったの30年間でのことかと思うと、時間の流れる速度のギアを「より早く」へと切り替えた20世紀を象徴するカタマリのようにも見えてきます。21世紀ももうすぐ二桁に突入する2009年年末、時代のスピードはますます速く、その加速ぶりは留まるところを知らないかのように感じられてなりません。
■そのたった30年間のうちに世界恐慌があり、第二次世界大戦があり、朝鮮戦争がありと、世界は激動していたわけですが、昭和14年=1939年には日本でもこんなことがありましたよ、というのが『ファシスト伊太利展覧会目録』。ファッショを高らかに・堂々と・胸を張って謳ったこのタイトルや、その路線を正当化して恥じるところのない巻頭挨拶文-伊太利大使館とともに展覧会を主催した大阪毎日新聞社の会長氏による-は、いまとなってはあり得ませんね。A5判36ページはイタリアの(歴史・文化よりも)工業、軍事、政策に主眼を置いた当時のコンテンポラリーな展示構成と内容を詳しく紹介。で、一体何が展示されたのかと見ると自動車や軍機やポンペイの遺跡やら出てまいりまして現物を展示したとは思えず、しかし意外にこの展覧会に関する情報が少なく(東京文化財研究所で当品とは別装の冊子かペラものが出てくる程度)判然とはしないものの、おそらくは写真展示を柱として、この当時得意のジオラマか何かを添えて展示構成されていたのではないかと推察します。冊子の表紙、網点を拡大したムッソリーニの肖像写真と、その下、ツブツブにしか見えないところは実は熱狂する群衆で、このセンスもまたこの時代特有。極東の島国においてもかように持ち上げられたムッソリーニですが、この6年後には処刑され、20世紀、真っ先にスピードを礼賛したのがイタリアの未来派だったことを考えると、こちらはいかにもイタリアらしいスピードとでもいいましょうか。極美のまま今日に残されていた冊子には、同博覧会で上映された「映画プログラム」もきれいなまま挟まれていました。
■今週はもう1点、気楽なものを。『星名刺』と表紙に印刷された1927年頃の日本製・名刺用紙の見本帖5冊の入荷です。基本は白無地のサイズ違いなのですが、楽しいのは「婦人用」各種。最小で11×46mmというのまであるサイズや柄の豊富さ、エンボス等加工や素材のバラエティ、羽子板や扇子などを象った形態まで、見ていて単純に楽しめます。婦人用ということですが、主な需要は花柳界のものと見てよさそう。それにしても婦人用の名刺はどうしてこう小さいものばかりなのか - 女性は“控え目”にあるべきという考えに基づくものなのか、いや、紳士諸氏がご家庭に持ち帰っても露見しないようにという配慮なのか、「古い名刺のコアのコレクター」がいらしたら是非ご教示いただきたいと思っております。さて、今週はこの他にも、藤田嗣治献呈署名入り『巴里のプロフヰル』、コブデン・サンダーソン率いるダヴス・プレスが1911年に発行した出版目録『CATALOGUE RAISONNE OF BOOKS PRINTED & PUBLISHED AT DOVES PRESS 1900-1911』、戦前英語版・金属製道具工具類のカタログ(約8cm厚)、明治期の大衆向け絵入り英語辞書5冊などが入荷いたします。残り少ない営業日、即売会の準備に新着品の整理にと、スピードがいま一番必要なのは何のことはない小店のお話なのでした。ともあれ年内、店で、松屋銀座で、一人でも多くの方にお目にかかれれば幸いです!