■先ずは簡単なご案内。準備の進む「Open-House-Market」から、村上邸・鈴木邸とも商品を中心に明日中に新たな画像をアップいたします。左の企画展の下にあるアイコンをクリックして是非チェックを(文末レポートもご笑覧ください)。今回、お申し込みいただかない限り、現地には辿り着けない格好となっておりますのでご注意ください。また、店は来週より通常に戻り、火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。お散歩には絶好の季節、ご来店いただければ幸いです。 ■大市の結果は時間的な問題があって来週とさせていただいて、今週の新着品からは先ず『Marionette マリオネット創刊号』。上原誠一郎という人を発行者に1971年、限定150部(内50部は刊行者本)が発行された同人誌です。一見エンボスに見える表紙は「銅版画」とする記載があり篠原佳尾の作品、巻頭には銅製の薄いシートに印刷された瀧口修造の小文「人形銭」が置かれ、執筆者には種村季弘、富岡多恵子、笠井叡、そして戦前にやはり『Marionette』という同人誌を主宰していた南江治郎(詩人で人形劇作家。ずぅーっと気にしているのになかなか全体像が掴めない人)らが名を連ね、クライストの「人形芝居」の翻訳があり……と何とも贅沢な内容なのに、限定150部の同人誌ってナンダこれ。一体この発行者は何者だろう。私、無粋なことに下戸なもので全く知らなかったのですが、日本酒には「越後鶴亀」なる銘酒があるそうです。醸造元は新潟の上原酒造、そこの五代目を継承している人こそが発行者・上原誠一郎氏。「マリオネット宣言」なるマニフェストを掲げた正統アヴァンギャルドの結構を整え、内容としては“人形-身体-速度-引力”といった極めて今日的なテーマの連関で構成された同人誌『マリオネット』から日本酒の世界へ! デジタル情報が網の目のように張り巡らされていない限り、絶対にたどり着けない結びつきでした。上原誠一郎という方、芸大を卒業後1976年に渡伊、アンジェロ・コルティに師事、コメディ・デラルテを学び、以降14年間、俳優・演出家としてヨーロッパ全土を中心に公演活動したという経歴をお持ちのようですが、イタリアに渡る以前、すでにこんなとんでもない同人誌を作っていたというわけです。栴檀は双葉より香し。さらに検索してみると、今夏、上原酒造は「清聴せよ 大吟醸」限定20本という商品を発売しているのですが、これがまた森村泰昌との“コラボレーション作品”なのだとか。上原氏、まだまだ意気軒昂と見ました。
■今週は久しぶりに「木版版下」と「版木」が入荷。お菓子の商標や企業名の版下、さらには版面の大きな多色刷木版画の版木まで各種約30点です。エッジの利いた木口木版は、今も桜材などの上にあって健在。紙に刷った画像が大甘なのは単に私が上手く刷れなかっただけで、えぇー彫りの技術・材質とも保証付きでございます。さらに、「雑書目録」には今週、建築、音楽を中心に約60点を新たにアップいたしました。この一連のご蔵書、来週も作業を進める予定。併せてご高覧のほど…。 ■「Open-House-Market」、今週は鈴木邸の準備に着手いたしました。屋根裏部屋に半世紀凍結されていた包みを開いたら、紙モノ好きにはたまらない古い包装紙・紙袋類がカタマリで出現! 鯛の尾頭付きなんてのを届けるのに使ったという塗箱や、炭を早く起こすための道具、軸物収容専用の木製什器など初めて見るようなものあり、店のディスプレイに使えそうな鉄製の行李や船旅用のトランク、珍しい半月状の座卓、そしてちゃぶ台も多数、そして必見の建具とその部品を集めて…といった具合で着々と掘り出しております。細工にスタイルに材質に、いずれも三拍子揃った家具類はとぉーってもリーズナブルな価格となる予定で、こちらは専用ページの次回更新でサイズもご紹介いたしておきます。さらにさらに。いまは亡きご当主が出演されたラジオ番組の同録テープが見つかり、書画骨董、その真贋から家業についてまで、江戸っ子の語り口で闊達に語っておられるのまで聞くことができ、これが実に面白い。もちろん当日も流します。準備はあともう一息、そして課題は一人でも多くの方にご参集いただくこと。ご参加お申し込みをお待ちいたしております!
■明日は営業時間中に台風一過となってくれよと祈りつつ席を温め、その後は9月の爽やかな気候に期待して店は23日(火)、27日(土)、30日(火)の各日12時~20時で営業いたします。「一新会大市」の関係で、24日(水)・25日(木)・26日(金)はお休みさせていただきます。何卒ご理解とご留意を賜りますよう…。 ■古書市場では市場毎に年に一度の「大市」というのが開催されるのが習わしです。業者向けの目録が出れば心せよと言い含められ、当日何が飛び出すか分かったものではないので少しでもいいから余裕が欲しいなんて邪心にとらわれ、大市前の入札は湿りがちとなる私の場合、やれやれ今週の新着品は僅かなものに終わりました。画像は石本喜久治著、大正13年・分離派建築会発行『建築譜』(初版)。日本の建築史資料のなかではよく知られた本なので説明の要もないのですが、できるだけ簡潔にまとめると“当時工学中心に考えられてきた建築を芸術・デザインの視点で捉えようとした日本初の近代建築運動である「分離派建築会」の創立メンバーのひとり・石本が、遺産処分で得た資金を頼りに1922~23年にかけてドイツを中心に海外遊学した際に撮影した写真や購入した資料の図版から50点を選び、巻頭に自身の解説を付して発行した書籍”ということになるでしょうか。洋行の成果ともいえる当書を出しながらしかし「これと云つて人に聞ひていただく話もなければ自分にも得たと思ふところがない」と洋行の効用をきっぱり否定し、むしろ関東大震災後の「バラツク芸術の出現に当面して非常な感激を受けつつある」といい、末尾に至っては「あまり面白くもない印象的解説を附けて至つて杜撰なこの不体裁な一小冊子を敢えて公に」するのだとあってハスに構えたというか韜晦というか、けれど解説が主にブルーノ・タウト、表現派のハンス・ペルチッヒ、そしてバウハウスのグロピウスの3人で構成されている辺り、そして上製&書き文字タイトル金箔押しというこの本の体裁を眺めるに、この人はなかなかのタヌキであっただろうと思われるのでした。この他、『メタボリズム以後-戦後日本建築の軌跡』等建築関係書約20冊、戦前の雑誌『フォーブス』4冊、1931年海外渡航者が残した紙モノ一括などが僅かとはいえ新着となります。
■さて、こちらもタヌキ。ではなくて。本当に昨日まで調整が続いておりましたOpen-House-Market Series2が、10月26日(日)で開催決定となりました。画像のアップはまだですが、専用ページには概要とお申し込みフォームをアップいたしました。シリーズ・タイトルは「築76年・スズキ邸に見る和のしつらえ-中野区・鈴木邸」。こちらは数寄屋造りの純和風建築。昭和7年の新築以来、ごく僅かな建て増し部分を除けば、全く手を入れることなくつい最近まで現役を通したというお宅です。新築当時の図面(パース、平面図)も残されていて、当日はこうした資料も展示できればと思っています。後日改めて画像をアップいたしますが、鈴木邸での物品販売は、ガラス器や家具など趣味的な性格のもの、そして建具や建具の部品など、何かの素材として活かしたくなるようなものが中心となりそうです。Series1の村上邸とSeries2の鈴木邸とでは、奇しくもほぼ同時代の個人住宅で空間として見るとカジュアルとシック、販売する商品で見れば実用性の高い商品と趣味的・素材的な商品という両面をご覧いただけるのではないかと思います。この頁の「企画展」の項にある「Open-House-Market」のアイコンをクリックして専用ページをご高覧の上、お申し込みフォームを利用して是非Series1と併せてお申し込みください。来週末頃までには販売する商品の画像を追加アップする予定です。みなさまのご参加を心よりお待ちいたしております。そして決して忘れたわけではない古本屋業。来週「大市」では少しでも面白いご案内ができるようにと念じつつ戦ってまいります。
■今秋の小店販売企画「Open-House-Market 2008 October Series 1 築73年・ムラカミさん家に見る昭和のくらし - 大田区・村上邸」をアップいたしました! 当ページ内「企画展」の下、「Open-House-Market」のアイコンをクリックして、別ページの実施要領にお目通しの上、ご来場ご希望の方は専用フォームからお申し込みください。今回、ご来場には事前申し込みが必須となります。また、来週半ば頃をめどに決定次第、Series 2 もご案内いたします。一人でも多くの方のご来場を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 ■数日前の更新と重複しますが、手前ども日々の暮らしにこちらも大切な今月の店の営業案内を再び。今月、店は16日(火)・18日(木)・20日(土)・23日(火)、27日(土)、30日(火)の各日12時~20時で営業いたします。「一新会大市」の関係で、24日(水)・25日(木)・26日(金)はお休みさせていただきます。残り少ない9月の営業日、合間を縫ってドシドシ入ってくる(←本人が入れといてこの言い草) Open-Houseの準備作業…いや、その、店も頑張ります。はい。 ■更新するついでに新着品を1点。
A.TOLMER著『MISE EN PAGE』。1931年、ロンドン・ストゥディオ社発行の上製本です。副題に「the the theory and practice of lay-out」とある通り、本来は当時のモダンなグラフィックデザインのための指導的な書物なのですが、画像にあるように優れた事例の現物綴じ込み多数とプレート好きの方にはお楽しみ。しかもこの本、テキストの頁も全てスミ+ブルーの二色刷りで、組版・デザインともなかなかのもの、つまりデザイン見本として見ればかなりの情報量をもちます。表紙もそうなのですが、こうしたテキストのページの印象がとくにフランス的なのに驚いていたところ、奥付をよく見るとパリで印刷されたものでした。この本に対する欧米での非常に高い評価の根拠はこのあたりにも何かありそう-と思ったのは私の深読み。「20世紀を代表する美しい本の一冊」といった評が根拠のひとつではあるようで。同じような内容なら、デザイン・情報量ともさらに充実した『CARACTERE NOEL』あたり、もう少し評価されてもいいだろうに…というのは件のブツを抱える古本屋の独り言。