■お決まりの営業ご案内。来週も店は16日(火)・18日(木)・20日(土)の各日12時~20時で営業いたします。その後、月内の営業日は「一新会大市」というのがある関係で、23日(火)、27日(土)、30日(火)を残すのみとなります。催事(後述)に気をとられている皆さま、店もよろしくお願いいたします。 ■店もよろしくというからには「新着品も大丈夫なんだろーな。」という声も聞こえそうで。はい。お陰様で新古本中心ですが、今週は久しぶりの大量入荷。問題は、値段をつけて棚に出しデータを入力する私の手が追い付かないだけでして。そんな今週の新着品から、先ずは『CHEMINIMENT(=歩み)』と題された上の画像、左端の函のサイズで11.5×10.5cmの小さなアーティスト・ブック。1985年にパリで発行された限定75部本です。装丁・図版はドルネー(DORNY , Bertrand)、テキストはミシェル・ビュトール。ビュトールのテキストは、一連の“空間詩”のひとつかと思われます。奥付頁の両名の署名に加え、表2にあたる頁には1989年の日付のあるビュトールの署名があります。本文頁の色の帯が絡み合うような図版の白い部分はエンボス、着色部分の手法がどうもよく分からないのですが、エアブラシを使っているように見えます。書籍本体は開いていくと全長1m30cmに及ぶ紙(一か所貼り合わせ)の片面刷り、函は白の厚紙の上から色紙を貼り込むなど、手が込んでいます。と表層をなぞるのは簡単なわけで、ああ折角のビュトールのテキストが読めない。従って表=造本と内=テキストとの連関を理解することができない。というのは古本屋としていかにも“弱い”なぁ。
■原書には手こずるばかりなので、次の新着品は翻訳書。大田黒元雄著『ペトルーシュカ』は大正9年の刊行(初版)です。大田黒のこの「第三訳著集」は、当時大田黒の大森の自宅におかれていた「音楽と文学社」から発行されました。レイ・ヘンリーによる表題作、アーネスト・ニューマンの「音楽批評家を掛ける罠」など翻訳に加え、文字通り音楽に関して見た夢を綴る「夢と音楽」、コンサートの聴衆を軽妙かつ少しの皮肉をまぶしてスケッチした「WHO’S WHO IN AUDIENCE」と大田黒自身の著作が収められています。「音楽と文学社」からは、当書刊行前年まで同人誌『音楽と文学』が発行され、またこの大森の自邸では月に一度、当時の先端音楽をとり上げてコンサートまで開かれていたといいます。自著の出版にサロン・コンサート。大富豪の一粒種の好き放題と片付けるのはこれまた簡単なことですが、例えばディアギレフのバレエ・リュスの紹介をとっても、この人には常に批評-何を紹介するのかという「選択」を含めた-の姿勢が見られます。流行や先端といった表層をなぞるだけなら、おそらくは、どんな時代にもそう難しいことではないでしょう。けれど、時間とともに変化してやまない表層の、その向こう側にあるはずの客観的な真実や普遍的な核心を説明可能にし、指し示すことのできた人たちだけが-少なくとも古本屋の扱う世界では-名前を残しているように思います。自問はこのくらいにして、大田黒といえば『露西亜舞踊』(大正15年刊行・限定750部の方ですが)も久しぶりに再入荷、この他音楽・演劇の古書・新古本、建築、ファッション、美術関係の新古本等約150冊は日々コツコツと棚入れ&データアップに努めたいと…。 ■先週までの“さわり”から、今週は決定事項をご案内。「ムラカミさん家のガレージセール(仮)」はタイトルを「Open-House-Market. 2008. October. series.1 築73年・ムラカミさん家に見る昭和のくらし - 大田区・村上邸」に変え、10月12日(日)開催で決定いたしました!お気付きかも知れませんが、series.1ということは…そうです。同じく10月中に場所を変えて「series.2」を連続開催する可能性が濃厚となってまいりました。「series.1」については来週初め頃までに詳細をご案内し、「series.2」についても決定次第詳細をお知らせいたします。ともに個人様宅での開催のため、事前のお申し込みを必須とさせていただきますので、HPの動きにご注意ください(お申し込みフォームもご用意いたします)。 「しばし待たれよ。さらば扉は開かれん!」
■今週、店にだぁーれも来ないのは何故? 思い当たるフシがあるとすれば…すでに興味は先週さわりをお知らせした秋の企画展に??? うぅーむ。ウチならあり得る。ですが、みなさま。分けても今年の企画展は「余技中の余技」でありまして来週も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたしますので。ええ。なかなかフクザツではありますが。はい。ご来店の程、よろしくお願いいたします。 ■先週に続いて金曜日の市場はワンフロアーのみ。夏の荷枯れが続いているだけならいいのですが。ともあれ最も落手を願っていたものが落とせたのは幸いでした。二年ぶり、二度目に手にしたそれが上の画像、1969年、翌年に控えた大阪万博の記念イベント『クロス・トーク/インターメディア』のプログラム等一式(正方形の紙箱に10点の冊子・パンフレット等を収めた完揃い)です。このイベント、芸術とテクノロジーの融合をテーマに、前衛音楽を中心として三夜連続で開催された大規模なもので、実験工房、フルクサス、グループ・音楽、草月アートセンターといった戦後日本の前衛芸術シーンを包括したかのような内容と、これに連なる内外主要人物を網羅した顔ぶれが揃っています。企画・構成は秋山邦晴、ロジャー・レイノルズ、湯浅譲二。『エッセイ』と題された冒頭の冊子のそのまた巻頭を瀧口修造の一文で飾るのは当然の人選というべきでしょう。イベントとこのプログラムについての驚くべき詳細は、以前に一度ご紹介したWeb版特集目録『机上のK.K氏』(このページのNo.33)をご覧いただければ幸いです。
■日本国民待望の万博前夜、高度経済成長の渦中にあって一万人を集めたという「クロス・トーク/インターメディア」から遡ること四半世紀。そこにはアートに関わる人たちまでもが戦争に駆り出される状況がありました。右の『新制作派作品集』は昭和16年=1931年の発行でモダンな表紙は同派協会会員の三岸節子、同じく内田巌が編集人を務めており、図版の他に同人の比較的長い文章が収められています。翌17年発行の二冊で落札したのですが、二冊を眺めると猪熊弦一郎「コレヒドールへ行く」、小磯良平「南方絵画通信」、荻須高徳「仏印で遭った仏蘭西人」、佐藤敬「従軍想抄」その他、現在再録=再読の難しい従軍や時局がらみの文章がとても多いのに気付きます。「独逸を追はれた猶太人」の脇田和が、ベルリンで見知ったユダヤ人と日本で偶然再会したのを“独逸を疲弊させた”ユダヤ人が日本でも増える“警告”として受け止めているところなんゾ、国際的ポピュリズムとでも評したくなります。もちろん、時局に関係なく画業や日常について綴った随想が主流ではあり、この当時同派唯一の女性同人だった三岸節子が寄せたのは「画事徒然」。自分は“生涯の仕事が明日から始め(ママ)ると思ひきはめる所まで漸くたどりついた”ばかり、しかも“芸術の世界は永遠”なのだから、画家として生きると決めた“私は命が惜しい”のだと。あくまで自身の、画業に対する思いの丈を綴ったかに見えるこの文章ですが、しかし、最後の最後に改行をして置かれた一行は、「命を大切にすることだ。」-あの時代に、同人のなかたったひとりで記した、この短い一行のもつ重みには、付け加える言葉などありません。 ■さてさて。先週、“さわり”をご案内した「ムラカミさん家でフリーマーケット」ですが、先ずは訂正。フリマではなくこの場合、正しくは「ムラカミさん家でガレージセール」(仮)でした。昭和のくらしの空間をご覧いただく機会でもあることから、オープンハウスといった意味もこめられないかと只今タイトル思案中。販売する商品例の写真撮りは終えましたので、詳細ご案内の文章とご来場申込のフォームなど用意が整い次第、来週後半か再来週初めには当HP内に別ページをアップする予定でおります。会期はいまのところ10/11~13頃の一日か二日を予定(まだ変更の可能性あり。必ず続報でご確認ください)。また、解体直前とはいえ個人様宅での催しとなりますので、必ず事前にお申し込みをいただきます(お申し込みがない方はご入場をお断りする場合もございますのでご注意ください)。お待たせいたしまして恐縮ですが、2004年開催時の様子などもアーカイブでご参考までご高覧いただきながら、いま少しお待ちくださいますようお願いいたします(あっ。2004年の時の商品は全て売り切れ御免なさい)。乞うご期待!
■闇を貫く閃光と轟く雷鳴のなかでパソコンに向かっています。荒天続きの8月も残るは二日。来週、9月第一週目も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。天候をお見極めの上、ご来店いただければ幸いです。 ■撃沈した先週の市場から、今週は少しだけ浮上できたようです。新着品、左の画像は2点分。昭和4年・朝日新聞発行の『藤田嗣治画集』だけなら小店でも何度か扱っておりますが、今回は「藤田嗣治君歓迎会」の案内状付き(封筒・返信用葉書の揃った3点。封筒には墨書きの宛名入り)です。この歓迎会、昭和4年に上野精養軒で開催されたもので、案内状にもある通り、この時藤田は17年ぶりの帰国を果たしています。すでにフランスで名声を博していただけあって、案内状に並ぶ発起人のメンツは豪華絢爛。フランスでは一時起居をともにしていた川島理一郎をはじめ、島崎藤村、与謝野寛・晶子夫妻、岡本綺堂、有島生馬、杉浦非水、山本鼎、足立源一郎、市村羽左衛門に市川は左団次と猿之助、同期生有志には岡本一平、池部釣…といった具合。渡仏前、洋画壇から見向きもされなかった日本への、文字通りの凱旋帰国。藤田の人生をドラマに仮想するなら、宴の開かれた昭和4年10月8日は前半生最後のきらびやかな場面となる、その日の貴重な証拠物件。もう一点、画像の右下の女性像は、 “guen”と署名の添えられた猪熊弦一郎の直筆ペン画。そのへんにあった袋か何かにいかにも気軽にペンを走らせたという感じにむしろ惹かれるものがあります。ところで猪熊が渡仏した1938年は、藤田の渡仏から遅れること丁度四半世紀。今回、ご紹介にあたってはじめて知ったのですが、その年月の開きにはちょっと驚くとともに、“先駆者フジタ”の印象を今更ながらに深くした次第です。
■藤田、猪熊とどこか端正かつゴージャスなのから一転、こちらは左翼系の書籍の一群。今週は戦前日本で発行されたソビエト・ロシア関係書約30冊が新入荷となります(画像の5点はいずれも昭和一桁~10年代初めの発行)。ここのところ落札するのがこの筋のものばかり。買っても買っても売れる…からではなく、いまどき売れるはずがないのを買い続けている理由はといえば、小店の場合、ひとえにこうした装丁にあります。店の本棚ひとつ、いやふたつくらい、このテの装丁で埋め尽くしたらさぞや壮観であろうと、そんな野望を抱いてしまったがためのもはや病。我ながら病であると認識しながら、しかしそれくらい集めてしまえば“左翼系表象の研究”なんてもっともらしい目録だって作れそうだし、資本主義末期とでもいいたくなる只今現在へのささやかなテーコーといった気分もあり(何しろもともと店自体が赤いので)。普通、古本屋の「集める」という野望というものは、店先で売れていく=いいものから欠けていくがために、なかなか叶わぬものなのですが、何だかこれだけはある程度思いを遂げられそうな気が……って、大丈夫なんでしょうかウチの店。今週はこの他、早く売れてくれれば嬉しい『たて組ヨコ組』約30冊、やっぱり好きな各種カタログ『商報』類がやはり約30冊、ファッション関係の洋書7冊、美術・芸術論考書籍約20冊などが店に入ります。雑書目録も随時更新中。ご高覧のほど! ■と、ここで急告です。2001年以来、ほぼ毎年秋にあった企画展が今年はない。「なぁーんて気楽なんだろー」と思っていたのも束の間。実は2004年にロゴスギャラリーで開催した企画展「東京・山の手・昭和三代 ムラカミ家のモノに見る昭和史」のそのムラカミさん宅が10月末に取り壊されることになり、であれば現地でフリーマーケットが開催できないかと調整に入りました。実施が決まれば築70年を数えたお宅の建具各種から電笠、陶磁器等骨董類、レトロなカーテンや1960年代のAラインのコートといった衣類や小物雑貨まで、そもそもそれがあった場所でご覧いただき、かつお求めいただければ、という趣向。詳細ご案内までにはまだ少しお時間をいただきますが、今から頭のスミにでも置いておいていただければ幸いです。ちなみに本は一冊も-ただの一冊も!-なし。またしても古本屋の道を踏み外す。実に日月堂らしい秋であります。ははは……。