■ここ十日間ほど、全く熱の上がる気配がなく食欲は旺盛、お医者さんで処方してもらった風邪薬は全然効かず(しかも二軒かかって)、しかし鼻水と咳が出続けているのは「花粉症かもよ。」との指摘を受けて嫌な予感がしております。どうやら大した病気でもなさそうですので、来週も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。寒い中のご来店には礼を尽くすべくお待ちいたしております。 ■咳による筋肉痛に身を捩りながらも、入札はやっと調子が出てきたようで、今週は落札点数二桁台。先ずは上の画像、『Tom Padgitt Co. ILLUSTRATED CATALOGUE 50』。アメリカはテキサスの専門メーカーが発行した馬具のカタログです。無刊期ですが、19世紀末から20世紀初頭の発行かと推察。夥しい種類とデザインの組み合わせで販売されたハーネスなどの皮革製品と、鐙や蹄鉄用の釘各種など鋳鉄製品とを中心に扱っていたようですが、この他にも鞭などの調教用具、ブラシやワックスなど手入れ用品などまでに至る総ページ数461Pの総合的なカタログとなっています。巻頭約160ページにわたり、淡いベージュで描かれた馬のシルエットの上に、様々に渡されるハーネスの図が展開されるあたり、瀟洒であり多様であり、見ていて飽きることがありません。かの「エルメス」が馬具メーカーからスタートしたのは周知のことですが、この一冊に見られる皮革加工技術の多彩さからすれば、バッグへの技術の転用はなるほどと頷けます。テキサスのトム・パギット社も今頃はバッグ・メーカーか……と、ちょっとアメリカまで行ってみると(勿論ネット上)、これが。何と。いまはオーディオ・ビジュアルのメーカーに転身しておりました。おおおっ。こんなケースもあるんですねぇ。一体、何がそうさせたのかは、同社のHPでご覧ください。ところでこのカタログにはいかにもカウボーイなアイテムも掲載されていて、ジーンズの上から片脚毎に装着する皮製のエプロンみたいなの(上の画像右端)は一体何と呼ぶのだろうと思って調べてみると、ありました。「COWBOY LEGGINGS」…カウボーイ…れぎんす!だぁ。踝から下をちょん切ったようなタイツ様のファッション・アイテムで、「スパッツ」と呼ばれてすっかりオバちゃんの防寒アイテムに成り下がっていたのが、去年、呼び方を変えてみたら若い子たちの注目を集めたという…その改称されたネーミングと同じ、「レギンス」ではありませんか。カウボーイから“2007 Tokyo Fashion Seen”へ。ううむ。これもまた一つの転身といえましょうか。
■「印刷解体」が終わって以降というもの、印刷がらみのあれこれは仕入れたところでほとんどが店頭長逗留の在庫と化しているのですが、やはり気になることには変わりなく。今回は京都・内外印刷出版株式会社の営業用印刷物6点一括での落札でした。画像はこの内、同社『拾周年記念 インサツ』(昭和5年発行・非売品)と『ないがいの印刷』と題されたペラものの活字・罫・花見本。同社は活字の自社内鋳造から印刷までを一貫して請け負っていたようで、『インサツ』は約160Pと小ぶりながら、これ一冊まるまるで“商品カタログ 兼 刷り見本 兼 印刷関係便覧”となる優れもの。とくに欧文書体の充実ぶりは、この規模の印刷所としては目をひきます。また、「網目銅版「線」比較」など、視覚的な工夫と解説でたいへん分かりやすくかつ勉強になる情報も多く、この一冊だけでもせめて「印刷解体」が終わるまでに入手しておきたかったと悔やまれます。残された印刷物から見る限り、よい仕事をしていたに違いない内外印刷出版ですが、いまは姿を消してしまったようです。2004年から2006年まで、三年にわたって「印刷解体」でお世話になった印刷工場もまた、来月「工場解体」、つまりは取り壊しが決まりました。古本屋の眺める風景には、「転」よりもずっと多くの「廃」が潜んでいます。馬具メーカーからオーディオ・ビジュアル・メーカーへ…ではありませんが、「廃」を予想もつかない「転」へと繋げるような、奇想天外な仕事ができないものかと、またしてもそんなバカなことを考えてしまう今週の新着品です。町工場で…懲りなかったかこの人は。 ■先週は早々に情報を下さった方がお二人あり、本当に有難うございました!気をよくして引き続きのお願いです。大正年間から1980年までに発行された『黒髪』『新美容』『しんびよう』『美容師の友』『TOMOTOMO』と、『しんびよう』の付録『しんびようプラス』と『みわく』を只今必死で探しております。どんなに小さな情報でも構いませんので、ご一報いただければ幸甚に存じます。ご所有の方がいらっしゃいましたらお客様・ご同業問わず「誠実評価・高価買取」いたします。何卒よろしくお願いいたします!
■厳しい寒さにもってきて経済の先行き不安まで加われば、古本屋なんぞに出掛ける必然性など全くなく、それでもわざわざ―しかも限定された営業日に―ご来店くださるお客様に心の中で手を合わせながら、来週も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。 ■最新の落札品から選んだ今週の新着品。先ずは上の画像、向かって右は1930年から1932年にかけてベルリンを中心に欧米に身を置いた藤森成吉の見聞と考察とを一冊にまとめた『ロート・フロント』。帰国した翌年にあたる昭和8年発行の初版です。著者・藤森が「半分グラフ的な本にしようと試みた」と記した通り、現地で自身が撮影してきた写真や持ち帰った資料からの転載など、本文内には図版多数。扱いは決して大きくありませんが、レイアウト、アレンジもなかなかのものです。渡航期間中、長く滞在したベルリンでは、当時、ドイツ共産党が台頭する一方でナチスが勢力を拡大していた時期にあたり、斜め読みした限りではありますが、ヒトラーとナチスの怪しさと民衆の熱狂など、結構生々しいレポートとなっています。世界恐慌後のアメリカと、疲弊したドイツとを比較した藤森の見方も興味深く、時代の転換期を捉えた知識人の記録として位置付けたい一冊です。向かって左『ソヰエート ロシヤ詩選』は昭和4年、その名もマルクス書房という版元から発行された初版本で、黒田辰男、村田春海、園田時子の翻訳によるアンソロジー。巻頭には、当時のロシアの詩人と詩壇に関する詳細な解説が収められています。鍬をデザインした装丁イラストの下の方には「katsue」のサインがあり、これはあのカツエさんによるものでしょうか。格差ではなく階級化の段階を迎えたともいわれる日本では、いまのところケータイ小説が売れているようですが、なぁーに次はプロレタリア文学でしょ!-というのはあり得ないでしょうねぇ。
■下の画像も新着品。『築地小劇場』創刊号から第二巻第十号(大正13年6月~大正14年10月発行)までの揃い・17冊。年頭の休みの間、自宅に溜まっていた紙モノ・冊子の類を整理するのに丸四日間、お陰でデータアップの仕事に辿り着けなかったのですが、随分前に仕入れたままになっていた築地小劇場のパンフレット類を発掘。それだけでは少々寂しいかと思っていたところでの出品につい手が出ました。以前、何度か扱った同誌では、縦長のチラシが挟まっているのだとばかり思っていたものが、実は帯だったというのも恥ずかしながら初めて知ることとなりました(画像の表紙二冊にかかっている白い紙の部分がそれ)。第二巻第七号までは、この帯の裏と表4はクラブ化粧品の広告まで入っています。さすがは! しかし一番驚いたのは画像右端の第一巻第五号に載っていた雑誌『DAMDAM(ダムダム)』創刊号の広告でした。「散文への挑戦!詩の要求!」というコピーの下には巻頭言から始まる目次が並び、罫下には発行所としてあの「南天堂書房」の記載があります。これだけでも充分価値あり、と見るのですが、折角の創刊号からの揃いをバラして売るのもどうかと思われ、一方でこの広告をはじめ各冊ピンポイントで欲しいという気持ちもよく分かり…バラすかまとめるか。それが問題だ、というわけで、明日の朝までしばし黙考……(そんなに慌てなくても売れるとも思えないんですけどね)。 ■先週、このページでお願い申し上げたところ、「実は、ありました」との有難い情報が。「でも二年前のことで」……ううう。遅かったか。それでも一週間で情報をいただけたのをいいことに、再度のお願いです。大正年間から1980年までに発行された『黒髪』『新美容』『しんびよう』『美容師の友』『TOMOTOMO』と、『しんびよう』の付録になっていた『しんびようプラス』と『みわく』を熱烈に探求いたしております。「あそこなら持っているんじゃないか」「〇×△という古本屋に譲っちゃったよ」等々、どんな小さな情報でもお知らせいただければ幸甚に存じます。勿論「持ってます!」という場合には、文字通り「誠実評価・高価買取」いたしますので、どうか皆様、ひとつよろしくお願いいたします。
■今年もやはり営業案内から。来週も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。今週、市場が始まり、有難いことに来週にはお客様からご依頼いただいたご蔵書の整理にも着手。これで2008年の仕事が本格的に始まります。相変わらずご不便をおかけいたしますが、ご来店のほど、何卒よろしくお願いいたします。 ■こちらも恒例の新着品情報。上の画像は1930年前後の独逸日本人会の各種催し案内DM約40通の内の3点と、1930年12月27日の日付のあるセルジュ・リファールの写真が使われている絵葉書。日本人会のDMは全て、横浜高等工業学校の化学の先生がベルリン留学中に受け取ったもの。リファールの一枚は東京帝大の教授宛に、「東京帝大 火薬」に在席していた某氏がシャルロッテンブルクから投函したものです。リファールの写真は、「ゼフィール」か「放蕩息子」か、バレエ・リュス当時のものではないかと“希望的観測”をしてはいるものの、どこか違うようにも見えて、いま現在は確定できておりません(何しろ午前0時をまわって作業を始めたため本日のことろ時間がなく…)。確定できればバレエ・リュスがらみの絵葉書は初見で個人的にはかなり嬉しいのですが、さて。しかしさらに面白いのは日本人会の方でありまして、江口隆哉夫妻による社交ダンスの講習会、岡本一平の講演会から小旅行のご案内、ピンポンのお誘いに果ては大粒ダイヤの頒布会(←ちょっとあやしい)等々、ときに満洲をテーマとしたおかたい勉強会などもありながら、しかし留学というのが単に「お勉強」だけを指すものではなかったことの証拠品といった趣があります。最も驚いたのは画像中左上の欧文DMで、アンナ・パブロヴァ協会主催、ドイツ-日本協会後援、“日本人ダンス・ペア”による公演の案内。演じるのは「RIKUHEI UND TOSHIKO UMEMOTO」とあり、これは上方舞の家元にして草創期の宝塚で振付なども手掛けた楳茂都陸平のことでした。楳茂都であればおそらくは日舞の公演だったのでしょうが、その横に何故か“歌い手”として「RYOZO OKUDA」(=奥田良三 当時ベルリン音楽大学留学中か)の名前があり、ううむ。一体どんな舞台だったのでしょうか、日舞とオペラ。それにしても、社交に教養に人脈づくり…なるほど、当時の留学経験のもつ意味の重さがうかがえるというものです。理系人間でも舞踊くらい分からないとね。いまはその片鱗も残らない(と思える)、古き良き時代の教養人の面影でもありましょう。
■下の画像・向かって右は『学用文具製作実演会 文具読本』。各種文具メーカーから成る文匠会という組織が主催、日本橋三越で昭和12年に開催された催事用に作られた冊子です。煎じ詰めれば文房具に関する知識啓蒙と販売促進とを兼ね合わせたもので、紙、ノートブック、万年筆、鉛筆、ランドセル、セルロイドなどの基礎知識と製造方法とが図版・写真多数を配して紹介されています。それにしたって百貨店の催事場で実演は無理、と思うのは機械化時代以降の人間だからで、紹介されている当時の製造法を見れば、必ずどこかに手作業の工程があり、これなら「実演」というのにも頷けます。向かって左の『近代流行の栞』は昭和4年発行の雑誌『婦人世界』の付録冊子で、衣服のデザインやテキスタイル、装身具などの流行を豊富な写真とともに紹介。袖珍本程度の小さな冊子の1ページに、20数点の髪型をモンタージュしたページはなかでも圧巻です。「近代人の嗜好する流行煙草」という記事には、時代の差を感じさせられます。かつてタバコは「たしなむ」ものだったわけで。これ以上は申しませんが。手仕事にしてもタバコにしても、世の片隅に追いやられて― ああ昭和は遠くなりにけり。気が付けば、平成も20年を数えました。 ■ここで世の皆様にお願いです。わけあって次の雑誌を探しております。大正年間から1980年までに発行された『黒髪』『新美容』『しんびよう』『美容師の友』『TOMOTOMO』と、『しんびよう』の付録になっていた『しんびようプラス』と『みわく』。いずれも専門誌でしかも流行を敏感に映すものだけに、現存しているものは少ないのではないかと思われ、それだけに皆様の情報だけが頼り。もしお心あたりのある方は、是非是非ご一報ください。誠心誠意、評価させていただきます。何卒よろしくお願いいたします!