■本日よりちょうど一週間後、10月20日(土)より、日月堂展示即売企画として、「Jean-Emile Laboureur ラブルールの版画展」を開催いたします。今年4月~6月、練馬区立美術館で開催された「鹿島茂コレクション2 バルビエ×ラブルール」で初めて知った方も多いラブルール。かくいう私もラブルールがモダニズムに接続する作家だという認識は、この展覧で初めて得られたものでした。バルビエやマルティ、マルタンなど、同時代のイラストレーターと比べるとどうしても地味に見えるせいか、日本国内にはあまり入ってきていない印象があります。
今回の展示即売会では、そんなラブルールの署名入りオリジナル銅版画を中心に、初期の木版画からラブルール夫人のサイン入り後刷、版画レゾネなど含め約50点をご紹介いたします。
ラブルールの版画は、基本的に自画自刻自刷。バルビエなどイラストレーターの作品とはこの点で決定的に異なり、本国フランスでは、ファインアートに位置づけられていると聞きます。版画手法はエングレーヴィング、エッチング、ドライポイント、木版と、作風によって多様に使い分けがなされています。キュビスムの影響が認められる作風、時にロシア・アヴァンギャルドにも通底するモチーフなど、20世紀初頭の時代精神に彩られた作品世界を見ることができます。
会期は10月20日(土)、23日(火)、25日(木)、27日(土)の4日間で各日12時~20時。小店店内のキャビネットと壁面を使っての展示となります。価格は夫人の署名入り後刷で1点12,000円よりご用意いたしております。
つい最近読んだ朝日新聞の鹿島茂教授のエッセイによれば、借金をしてまで本を買うようになったきっかけが、バルビエとこのラブルールだったのだとか。人生を変えてしまうかもしれないラブルール、この機会に是非、間近にご覧下さい。みなさまのご来場をお待ちいたしております。
■「はいはい分かりました。しかしそれにしたって今日ですか…。」というのが先ず頭に浮かんだ感想。狙いすましたようなタイミングで出てきたのが何というひとかバルビエ(←悪い冗談みたいです、本当に…)で、しかし自宅に持ち帰って確認してみると、ポショワールのプレートに欠け有! やれやれ。 本日、ラブルールと並べてご紹介する予定でしたが、事故申請のため、古書会館に一旦出戻りとなりました。予定外ということもあって慌てて差し替えたのが、岡本太郎の直筆書簡ハガキ5通・便箋2枚1通の合計6通。岡本太郎は原稿や署名本は時々目にしますが、原稿では署名のみ自筆で岡本敏子が原稿部分を書き、色紙もほとんど署名だけというケースが多く、自筆ものは珍しい。受取人は全て柳沢健の娘、柳沢和子(後、高木和子)。岡本太郎と柳沢健は、柳沢が外交官として赴任していたパリで親交を温めた間柄で、ハガキの内の1通は「柳沢健君遺稿刊行会」への返信であり発起人になることを承諾、他の5通からは、受取人との仲の良さが伺えます。しかも内2枚は差出人も受取人も国内に居るというのに何故かフランス語。消印を見ると、後に養女として迎える岡本敏子とは出会った頃と思われるタイミング。ややや、これはもしや…?と、ついつい妄想(多分)したくなるのですが、しまった!フランス語が読めない……。すみません。内容は現在調査中ということで、店に出すまでいましばらくお時間を頂戴いたします。
■今週はこの他、藤田嗣治の書簡1通、渡邊一夫・草野心平・上林暁・木山捷平等日本ペンクラブ宛て葉書の一括が入荷いたします。バルビエはどうなりますことやら、来週の更新まで、こちらもいま少しお待ち下さい。来週は何はさておき「ラブルールの版画展」。ひとりでも多くの方のご来場をお待ちいたしております!
■明日土曜日に店に届く新着品を体積として見ると、200枚くらいはありそうな木版刷りの「唐紙」と、フェルナン・レジェ他抽象美術系のリトグラフのポスター13枚1巻がほとんどを占めて、あとは軽いものばかり。
その軽い方から、先ずはこの「大倉陶園」の印刷物。日本の陶磁器メーカーのなかでも、とくに高級洋食器メーカーとして知られる大倉陶園の宣伝と販売用のツールで、いずれも昭和6~8(1931~1933)年頃に使われていたと思われるものです。
専用タトウ入に入った未綴じの製品写真リーフ - 必要に応じて組み合わせていたらしい - がカラー印刷含め20枚・26図、12P立て製品カラー写真入り英文パンフレット、モノクロ8P・写真入りの冊子「陶磁器の工程」、英文小型二つ折の会社案内、以下1枚もので「大倉陶園の沿革概要」、価格入り「製品御案内」、「高級洋食器大揃値段表」、さらに製品写真紙焼7枚、専用袋入り絵葉書2種2枚入り2組(計4枚)。
大倉陶園のウェブサイトによれば創業は大正8(1919)年。6年後の1925年にはもうパリ万博=アール・デコ博に出品しています。アール・デコ博で得た収穫か、日本におけるアール・デコ最盛期にあたる昭和初期のこれら印刷物には、カップ&ソーサーはじめ洗練されたアール・デコ様式に彩られた製品も多く、またキュビスムの影響の見られる磁器人形、意図的と思われる洋風の和 - 逆輸入されたジャポニスムのような絵付け - など、モードとアートに対する高い意識を見てとることができます。
■明治時代末から第二次世界大戦突入直前まで。日本帝国海軍中佐、大佐、司令官、中将と歴任した長沢直太郎が残した紙モノにつぐ紙モノが本日の2点目。何しろきりがないので、画像はそのほんの氷山の一角です。
どんな紙モノかということだけざっくり書き出してみると、東郷平八郎、鈴木貫太郎、岡田啓介、田中義一などの名前で、或いは英国皇太子来日などを記念して開かれた宴席の案内状、各種宴席でのメニュー及び付随する音楽会のプログラム類、久邇宮朝融、井深徴や福原家の名前の見える結婚式の招待状、天皇家主催観桜会・観菊会の招待状とそれに付随する案内やチケット、紀元二千六百年他記念式典の案内状と会場図、乗車券(フリーパス)等、観艦式他軍艦関連記念行事案内状、イギリス滞在中の各種宴席招待状及びメニュー、そして海軍および軍用艦関係の写真アルバムが1冊、これはもう薄れつつある南方航海中の写真アルバムが1冊、点数にして150点は超えようかという紙モノの詳細についてはこれからぼちぼち楽しみながら道筋を見つけていきたいと思います。この華やかな舞台と人脈 …… 上流と称された階層の人々が戦前、どんな社交を繰り広げていたのか、翻ってどんなしばりの中で生きていたのか、その一端が現れてくるはずです。
■積み残しになっている洋雑誌の落丁・切り抜きチェックに唐紙の状態確認とグループ分け、洋書の値札貼り、そして、そろそろ目録品のピックアップも。今年もはや急ぎ足の季節です。
■台風一過の東京は10月とは思えない暑さ。それでも、穏やかさを取り戻した風には、秋の気配が感じられるようになってきました。さて、いつもより2日ほど遅れての新入荷品のご案内、1点目はポップ・アート花盛りの1964年2,000部限定で発行された『ONE CENT LIFE』。サム・フランシスが編者を務め、視覚詩として定着されたウォーラス・ティンの詩と、62点に上る多色刷オリジナルリトグラフから成るアーティスト・ブックです。参加アーティストはサム・フランシス、ピエール・アレシンスキー、カレル・アペル、ロイ・リキテンシュタイン、トム・・ウェッセルマン、クレス・オルデンバーグ、アラン・カプロー、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンバーグ、ジム・ダインなど、綺羅星の如き全28名。奥付ページも作品のような構成で、シリアルナンバーがシルクスクリーンで刷り入れられるなど充分アート。全頁未綴じのリーフで、布装上製スリップケース、カヴァー付き、布装の函入りの完本となっています。尚、ケースの装画はリキテンシュタイン、カヴァーの装画をアレシンスキーが手掛けています。
限定2,000部というのは限定本としてはかなり多い方ですが、書籍のタイトルでケンサクしてみると、当書の作品のバラ売りが目立つことなどから考えて、完全なカタチで残されているもの・今後残っていくものは、大きく数を減らしている・減らして行くのではないかと推測します。小店あくまで古本屋であるという認識が果たしてどこまで届いているのだか怪しいところですが、何分にも本来小店古本!屋でございまして、当然ではありますが、完本として1冊まるごとの販売となります。悪しからず……。
■この溶接工を写した格好いい写真の載ってる印刷物は一体何?と思ったら、中西夏之が26歳当時に いとう画廊 で開催した個展のパンフレット(もしくは少し大き目のDM?)でした。写真はスウェーデンの写真家で、来日中に東野芳明の案内により中西のアトリエを訪問したクリステル・ストロンホルムの作品。赤い紙にスミ1色刷の1枚とモノクロ両面刷の2枚を重ね合わせた体裁のパンフレットには、この辺りのことを記した東野の比較的長い文章も収められています。
この1点に気付いて子細に見始めたOPP1袋は、今年5月19日付の新着品と同じ美術関係者の旧蔵品で、今回もまた興味深い紙モノの一群の入荷となりました。
江原順の構成で赤瀬川原平個人の展覧会としては2回目にあたる1961年サトウ画廊での「現代のヴィジョン展2」の未使用DM、瀧口修造が企画を手掛けたことで知られるタケミヤ画廊のDM2点 - 加納光於を差出人とする1956年「第2回銅版画展」、翌年の「第3回銅版画展」は未使用 - 、この他DMとしては1959年村松画廊「福島秀子 個展」、合田佐和子のデビューとなった銀座・銀芳堂での展覧会「合田佐和子/作品展」(展覧会開催を勧めた瀧口修造の文章を含む)、倉俣史朗・山口勝弘・戸村浩などの名前が並ぶ「明かり オリジナル照明器具展」。1960年、国立近代美術館「ブルーノ・ムナーリ氏のダイレクト・プロジェクション」のチラシ - 音楽・武満徹“静かなデザイン”解説・瀧口修造 - 、瀧口修造のメッセージ入りのリーフレットが1961年「靉光 歿後15年を記念して」、1960年の南画廊「加納光於個展」と南天子画廊「瀧口修造 私の画帖から」、矢内原伊作の長文のある南天子画廊「ジャコメッティの落書」などの他、女流版画家の展覧会関係資料等。物体として捉えてしまえばとるに足らない、だからこそ存在として重要な意味を持つ紙ペラたちです。
■今週はこの他、『Cosmopolitan』他1955年前後の洋雑誌約60冊、富岡多恵子『物語の明くる日』等献呈署名本2冊、木村荘五旧蔵洋書大量一括などが入荷いたしております。
秋の気配が潜んでいるのも当然で、思えば今年ももう10月。小店はすでに、来年1月下旬の即売会に向けて、“準備に入るための下準備”に入らねばなりません。うかうかと過ごす1年の何と短いことか!アタマが痛い …… 。