■今週、「一新会大市」では5口を落札。ところが市場から落札品を引き上げるタイミングの問題があり、こちらの方からの新着品のご紹介は週明け月曜日とさせていただきます。大変申し訳ございませんが、来週月曜日の深夜にでも当ページまでご再訪いただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
店の方は明日の土曜日、来週の火・木・土曜日といつも通り営業いたしております。
■かわりにお知らせをひとつ。10月20日(土)、23日(火)、25日(木)、27日(土)の4日間、小店店内で銅版画を中心にラブルールの作品を展示販売することになりました。ラブルールの署名入りの銅版画および木版画約25点、ラブルール夫人の署名を得て後に刷られた木版画と銅版画14点、版画オリジナル24点入特装16部本他関連書籍等5種、その他あわせて約50点の展示販売を予定いたしております。今年、鹿島茂教授の個人コレクションがバルビエとともに展覧会で紹介されたばかりラブルール、展覧会も稀なら日本国内で商品としてこれだけまとまって出てくるのもまた稀なこと。価格は現在最終的な詰めに入っておりますが、可能な限りお求めいただきやすい価格でと考えております。会期が近づいたところで改めて詳しくお知らせいたしますが、10月下旬のこの企画、いまから頭の隅に置いていただければ幸いです。
画像は販売予定の内の1点「三人の船乗り」。1922年の作品でエングレーヴィング限定7部内、ラブルール署名入り。キュビスムの特徴がよく出ている作品です。
■先ずは大切なお知らせです。明日22日(土)はいつも通り12時~20時で営業いたします。来週は下見・入札日が9月26日(水)・27日(木)と続く「一新会大市会」が開催されます。可能な限り水曜日に用を済ませてくる予定ではおりますが、出品の量や内容によっては27日(木)も市場へ出向くことになる可能性があります。このため、27日(木)にご来店の際には、必ずお電話で在席をご確認の上、お出掛けいただければ幸甚に存じます。ご不便をおかけし大変恐縮に存じます。何卒ご海容の上、よろしくお願い申し上げます。
■金曜日の市場、シャルロット・ペリアンはこれまでの小店の売値を超え、最終台の『飛行官能』函付き美本は「これ以上はもう絶対にゼッタイにぜぇ~ったいに、無理。」な札で臨んだというのに二番手に終わって今回もやはり落手叶わず。これまで逃し続け尚且つこんな格好でさらに負けたとなると、もはや縁に恵まれないものと思い定めることにしました。「飛行官能よ、さよーならぁ~」。ううう。
それはさて措き。現実を直視して、新入荷品のご紹介です。
『伸びゆく東京 大東京ゲブルトの歌』『ニュース短歌 戦慄エポツク』『ダイア・パレード』『フェブルアールの芸術』『踊る南洋』『明暗フリユーリンク』メルツってシュビッタースの真似なのか『メルツの詩歌陣』…e.t.c. “モダン”っぽいタイトルが並んでいて、しかも、稚拙なところはあるものの、ドイツ表現主義の影響と思われる木版画が表紙を飾る冊子。全冊「藤田江牛 著作及装丁」もしくは「藤田江牛作歌」とあるけれど、藤田江牛なんてもちろん聞いたことがない。毎号A4の用紙を二つ折した表紙と本文が1折だけ、つまり表紙から裏表紙まで毎号たったの8ページで、昭和7年から12年までに発行された52冊の落札分の奥付から見ておそらく毎月発行されていたらしい、藤田江牛という人の「詩歌芸術」(一部短篇の抜粋みたいなものもありますが)作品だけを発表するために発行され続けた一人雑誌。しかも、超マイナー …… ってだから何。そうなんです。だから何だというのでしょう。因みに、藤田氏、自ら名乗る肩書は「歌人、詩人、短篇小説家」と欲張っていて、行は「東京白星会新明星社」となっています… ってだから何。そうですよね。いや全くもってその通り。
実のところ、この発行元とされる新明星社には「後援名家」の方々というのがいらして、日本画家・渡邊華石、金工工芸家・栗田雪雄、伊東深水の師匠・中山秋湖、象牙彫刻の名人・菊地互道、お茶大教授・下村三四吉、教育学の稲毛詛風など、それらしい名前が並んでいたりするもので、藤田江牛という人のことも、ま、ケンサクでもしてみればどこかで簡単に引っかかってくるはず……と思ったのが甘かった。大甘でございました。市場から自宅に戻り18時半頃には本日の更新作業に着手したというのに、土曜日の夜中の1時をまわってもどうにもまったく詳細不明です。やれやれ。
ただ、52冊中の数冊に掲載されている、ちょっとダンディーに決めてみたサイン入り!の自らの肖像写真、昭和11年1月号に掲載した「藤田江牛氏著作 カタログズ」に並んだ4冊の内『抒情詩集 有曇華』があの「南天堂版」となっていること、さらに版画に見られるドイツ表現主義的作風やタイトルのセンス、そして、毎月コツコツと作品をつくり、印刷して折って重ねて穴開けて紐で綴じて毎回そんなふうにして発行だけは続けたらしい、けれど実りがあったのか不毛だったのかまるで分からないその情熱など、藤田江牛氏ご本人も人並みではなく、どこかはみ出してしまっていた人であったことだけは確かでしょうね。
さて、その文学方面の作品ですがちょっと読んでみますと……ははははは。今日名前が残っていない最大の要因は、もしかしたらココ - 藤田氏にとって最も肝心だったはずの文学系の作品 - にあるのかも知れないと、ここで再びうなるしかない日月堂です。ううううう。あ。国会図書館にもない、誰も知らない、という点では稀覯本かと。ってだから何……。
■今週は“木版つながり”で画像の2点目は『花詩集七 志きしの巻』。木版刷りの図案意匠集はお馴染みの京都・芸艸堂により昭和11年に発行された初版。経本仕立て片面多色木版刷りで32ページ。同一モチーフで一単色刷りと多色刷り各1図を組み合わせた28図を収めています。「色紙(=色紙と短冊)」のデザインということになっていますが、もちろん何にでも応用可。小店、図案集や印刷見本など好んで仕入れるのですが、図案集は元々そのデザインを“使ってもらう”ことを目的に作られたものであり、印刷見本は当然ながら複数の注文主の依頼にも応じる著作権のしばりのないもの。つまり、パクリや複製を忌避するどころか歓迎するものだったわけで、さらに時を経、スキャンや加工も自在となった現在、何にどう使うのかはお求めいただいた方の発想とセンス次第なんであります。
■今週はこの他、久しぶりに『山口勝弘 360°』(勝井三雄装丁、初版、完本)=画像3点目も入荷。また、ただいま店内で洋古書18本口=約400冊が積み上がっていて、できれば明日から荷解きにかかりたいと思っております。
■交遊関係をぐるっと見渡してみても、どうやらいま話題の方とその配下-或いはそうなりたがっている - 方々を支持しようという人がいないものだから、盛んに報道される支持率などを見たところで、政権掌握の可能性についてはどうもピンと来にくいのだけれど、どうやら世の趨勢は我等の方にはなく、件の方が権力の座についた折にはその勢いを駆っていよいよ遷都、はいささか無理があるとしても分都、くらいのことは起きるのかも知れないな、あ、それより道州制が眼目だったっけ、なんてことを考えながら、今日一日足元の地面が揺れたり割れたりせず天から灰が降ることなく海から水が駆け上ってくることもなく済んだこと、もうそれだけで充分奇跡じゃないかと分かってくると、もはや遷都程度のことが起こったところで驚かないしリスクの分散にもなるなら結構、ともあれ遷都もしくは分都があるとすればこのあたりしか考えてないんだろうという - がしかしこちらも足元に危険を潜ませている - 大阪の、昔の姿を留める『大阪府写真帖』。
“大阪府御編纂”で 東京市・田山宗堯という人を発行人として刊行された大正3(1914)年11月28日付の再版。因みに初版は同年同月5日となっているので、短期間に相当な数がさばけたということになります、これが事実であれば。
B5判布装上製、タイトル金箔押、天金。写真は片面刷の86Pで全130カット所収。写真の対向頁にあたるところには、それぞれの解説文を印刷した薄い紙が綴じ込まれています。
凱旋門の上にエッフェル塔を継ぎ足した旧通天閣の姿は「新世界」の写真の中に僅かに写っているだけというのがちょっと残念ですが、見晴かす大空間に機械が文字通り櫛比する近代的な空間に、そこだけ時代から取り残されてしまったような丸髷にキモノの女工が散発的に配置された「東洋紡績」の工場、大阪電燈株式会社の“大発電所”整然とした造幣局印刷所の内部、金融市場の活況を物語る大阪株式取引所、煙突から盛んに煙の立ち昇る工場地帯、建造中の大阪控訴院、どこか江戸時代にも通底する繁華街・提灯と幟とで満艦飾の道頓堀を埋める人波や、江戸時代とそう変わらないようにも見える雑喉場魚市場、鉄路の上に大きな空が広がる大阪駅、どこかのんびりした大阪港……思わず見入ってしまう面白さは、近世の面影と、モボ・モガが登場する近代の予兆とを同時にあわせ呑んでいた、まさしくこの時代特有の面白さといえるものでしょう。
■大正3年=1914年の大阪から遡ること約20年、こちらは1893年のシカゴの写真帖『CHICAGO AND THE WORLD’S COLUMBIAN EXPOSITION』。この年シカゴでは、コロンブスによるアメリカ大陸発見400周年を記念した国際博覧会「シカゴ・コロンブス万国博覧会」が開かれており、写真帖はシカゴの都市の偉観と博覧会の盛況とを写したものとなっています。ページによって、几帳面な毛筆書でメモが書き込まれていて - 例えば「シカコ河橋 コノ橋ハ 大船ノ通航スル時 クルリト 廻ハル 仕掛ナリ」など - 当時、実際にシカゴに行った日本人が持ち帰ったものと思われます。
表紙は深いエンボスにタイトル金箔押し、写真帖の最後を、アメリカ人技師のジョージ・ワシントン・ゲイル・フェリス・ジュニアの設計でエッフェル塔に対抗して作られたというモーター駆動による機械式観覧車(フェリス・ホイール)- 直径75.5m、2,160人乗り!- が飾っています。
天空高く聳え立つ建物、立派なパヴィリオンや不思議な装置の並ぶ博覧会会場 … 明治の日本人が夢に描いた未来の断片を、この写真帖に見つけることができるかも知れません。
■時代は下って1930年代後半、ところはナチス政権下のドイツ。こちらも実際にドイツに渡航した日本人が持ち帰ったものだと思われます。『ERMANY MUNICH』は1938年夏のイベント一覧の掲載あり。『GERMAN RAILWAYS』もほぼ同時代。ミュンヘンの観光案内の写真も、国営鉄道のバンフレットに見られるスピード感溢れるパースペクティブも、すでに完全に移行していたモダニズムという新しい時代の空気を映したものになっています。
■この他、20世紀初頭・外国人肖像写真約40枚、戦前の英米文学関係洋書18本(400冊くらいか?)、大正時代・骨董品売買取引台帳3冊、書物関係洋書6点、額装済・石版刷のチャップリンの戦前ポスター1面などを落札しました。店への入荷は作業スケジュールの関係で来週木曜日9月20日となります。ただいま美術・文化系の書籍や洋書絵本など値段付けと店頭出しの作業を続けております。先ずはそちらの方からご高覧いただければ幸いです。