8月25日(火)より9日間、「Marche*マルシェ*Marche」が小店隣室で期間限定オープン ! カッコイイ印刷物に眼は釘付け、サンプル本の安さに仰天、こんなものがあったのかと眼を啓かれ…と楽しい市場に是非ご来場下さい。
■今週は先ず、大切なお知らせから。 8月25日・来週火曜日より、小店隣室を会場に「Marche*マルシェ*Marche」がスタートいたします! 出版社・工作舎さん、洋書写真集専門書店・shelf (シェルフ)さん、少数部限定ビジュアル書籍販売・Ricochet (リコシェ)さんという個性派三社が集結、それぞれ得意分野の書籍はもとより、入手機会の少ないノベルティ・グッズやポスターなどの印刷物にアート・グッズ、その安さに私も驚いたサンプル・ブックのセールまで、タイトル通りの楽しい「市場」となること必至の期間限定ショップです。会期は9月12日(土)までの毎週火・木・土曜日、各日12時~20時 (詳細は当HP左上から二番目の「その他のご案内」をご参照下さい)。部数に限定のあるものも多く、早いもの勝ちのこの限定ショップ、すでに某社には遠方のお客様の「行きます!」の声も届いているとか。どうかこの機会をお見逃しなく、みなさまのご来場をお待ちいたしております!
■市場もお盆明けで今週から通常に戻り、恒例の新着品です。はじめは『The Paris Exposition Reproduced From The Official Photographs』、アメリカで発行された1900年パリ万博の写真集です。1900年の第5回パリ万博は4月15日に開幕していますが、この写真集は開幕から約1カ月後の5月1日に第1号を発行、以後週刊ペースで発行されており、さて一体何号まで続いたのかはいまのところ分かりませんが、今回小店には少なくともその第9号までが入ります。B4よりひとまわり大きいサイズで1Pに写真1点、それぞれ詳細な英文の解説が付され、1号あたりのページ数は16~20P前後、従って9冊で170~180点の図版を眺められるという寸法。印刷は当時のオフセットとしては細部までよく再現されている一方、作りの方はソフトカバーと軽くしているのは、できるだけ詳しい情報を気軽に届けよう、つまりは大衆向けの商品にしようという姿勢の表れでしょうか、当時からアメリカは大衆文化へのアプローチを心得ていたと見ることもできそうです ( あっ。ついでにもひとつ云っておくと、TVCFでお馴染みデアゴスティーニのパートワークや分冊百科のご先祖筋ともいえそうですね ) 。
『The Paris Exposition Reproduced From The Official Photographs』はアメリカで同年に発行された1900年・第5回パリ万博の写真週刊誌。上左は全号共通の表紙、右上は参加22ケ国の国旗も並ぶ大ゲート、左下の図版中、蝙蝠のようなものはフライング・マシーンの展示、右下はエッフェル塔と同万博当時すでに始まっていたグローバリゼーションを象徴するかのような地球を象った建造物。
1900年パリ万博では、一部にアール・ヌーヴォー様式を取り入れたグラン・パレとプチ・パレが誕生、木製ベルトによる歩く歩道-3.6km !-やマルセイユから横浜まで航海するマレオラマなるものが登場、電気宮や月世界を展示して見せた幻想宮が人気を呼び、X線にライノタイプ鋳植機に自動車などが出品され、川上音二郎・貞奴の公演が大人気となり、ロンドン留学途上の夏目漱石が訪れ…と、科学、技術、商業、工業、興業、文化、国際交流とあらゆる分野の“尖端の坩堝”。としかまとめる言葉がございません。この9冊のなかにその内の一体何が、どれほど残されているのかは、これからゆっくりページを開いて確認したいと思います。
■さて、今週木曜日の昼下がりのこと。店でメールの返信作業をしているとパソコンが突如フリーズ。待てど暮らせど動く気配なく、電源を切り再度立ち上げると当然通常に起動。ところが。ブルーの画面に警告文が次々と現れ、途中の対応をすっ飛ばしていうと最後に「STOP : c000021a Unknown Hard Error」という文章を残して完璧にダウンいたしました。あっ、あんのうんってあなた、あなた(つまりパソコン)自身与り知らぬことを私が知ってるわけないでしょーがしかもそんな簡単に云っていいのかアンノウンって製造物責任はどうなるそれはおいても一体何がどうなってるのか調べようにもネットに繋がるパソコンはなし閉店と同時に急ぎ帰路につき帰宅するなりパソコンで「Hard Error」なるものを検索したところ……こちらのメッセージ、またの名を「死のメッセージ」というそうで。店のパソコンはこうして天に召された模様であります。
うわぁあああどうす……というのはここでは飲み込むことにいたしまして、次の新着品はカラー印刷もしくは手彩色の施された絵葉書24枚がコーナー留めされ、別にカード3枚が挟まれている珍しいセルロイド製のアルバムが1冊。絵葉書はほとんどが子どもをモチーフとしたイラストですが、左右見開きで見た時の組み合わせは熟考の跡といって過言ではなく、森の中をゆく馬車を図案化したカードに始まり、最後のページには森を抜け草原へと続く坂道を下る馬車のカードを配するという物語まで想定されたかのような拘りようで、こうなるともう一種の作品といっていいのかも知れません。デリケートなセルロイドのアルバム本体にも割れや欠けが一ヶ所もなく、大切にされてきたものであることが伺えます。コレクションは完璧であればあるほど匿名性が高くなり (何しろ旧蔵者個人に関わるものまで全てが排除されるので)かえってつまらない場合も多いのですが、アルバム全体から旧蔵者の審美眼や人となりが伝わってくるこの一冊に関してなら、Unknownも歓迎する次第。業務に関わるUnknownについては当面自宅のノートを使いつつ、お客様にはできるだけご迷惑をおかけしないで済む体制といたしますので、変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。今週バレエ・リュスの公式プログラムご紹介は一回お休みとなりましたが、新着品はこの他、戦前の美術関係書約40冊、猪熊弦一郎肉筆1点を含む『トラベル・イン・ジャパン』挿画画稿4点、戦前の写真論・写真術関係書3冊、戦後美術・表象関係書約20冊などが入ります。これらのパソコン・データ上でのご紹介はいつになることやらunknown…。
1971年、日本で開催された『Olivetti concept and form』展のカタログ。未綴じのリーフはどれも一枚の印刷物として立派に成立するデザイン。ベン・シャーンとフォロンの作品はシルク・スクリーンによる。日本語版挨拶状・メンバー一覧、会場図などを含み、函入りの完品。
■お盆休みもはや終盤。小店は一足遅れで8月14日(金)~17日(月)の間、店、HPを通じた通信販売ともお休みをいただいております。来週8月18日(火)からはまた通常の火・木・土曜日各日12時~20時で営業いたします。休業期間中に頂戴いたしましたご注文・お問い合わせ等につきましては、18日以降順次ご連絡申し上げます。ご不便をおかけいたしますがどうかご容赦のほどお願いいたします。また、8月25日からはこちらもスタート。あっ。こちらやこちらもご参照下さい。休み明けにはまたすぐ走り出します。ご来店のほど !
■休業明けより店頭でご紹介する新着品から、先ずは『Olivetti concept and form』と題された未綴じ・二つ折り印刷物の集合体。そもそも『オリベッティ コンセプト・アンド・フォルム』とは、フランスはルーブル美術館付属装飾美術館の招請で“産業と現代文化の出会いにおける新しいフォルム”をテーマに、技術・製品から文化・社会活動にまで及ぶ“オリベッティ独自の研究と創作を公開”した展覧会。何やら1925年と1937年のパリ万博を折衷したみたいなテーマですが、1969年にパリの招請先で開催されたこの展覧会を、1971年・日本オリベッティ創立10周年を記念して日本でも引っ越し興業した際に発行されたのがこの一冊、というわけです。「カタログ」として発行されたので会場図なども入っていますが、内容的にはむしろ、オリベッティの活動に関わるデザイナー、アーティストの作品集といった方が適切。ソットサスJr.によるタイプライター、マイクロ・コンピューター、ベッリーニによるビデオ・ターミナルなど、工業製品の部分をクローズアップした写真、ジョバンニ・ピントーリ、ミルトン・グレイザーによるグラフィック・デザイン、プッシュピン・スタジオによるサービス・マテリアルやカルロ・スカルパによるショールームのディテール、ルイス・カーンによる設計工場、丹下健三による建築モデルなどをビジュアル・モチーフとし、左右断ち落とし、1枚の印刷物として見て十分成立するグラフィック・デザイン-フォロンとベン・シャーンの作品はシルク・スクリーン!-によって収められています。当品、小店としては4点目となりますが、最初に扱ったのは約10年前、五反田の競りで500円かなんかで落札したのに混じっておりまして、店に持ち帰って中身を見て思わぬ余禄に大喜びしたものですが、それも“いまはむかしのはなし”。牧歌的な時代というもの、過ぎ去るのは早い。夏休みもまたしかり。
1961年、初来日を果たした『ART BLAKEY AND HIS JAZZ MESSENGERS(アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズ)』の公演プログラムの表紙&裏表紙。当品はアート・ブレーキーをはじめとする来日メンバー全員の署名・識語入り。中面のグラフィック・デザインもなかなか。
■1960年代、モダン・ジャズの来日公演のプログラムが5点入荷。画像はこのうち、1961年1月に初来日を果たした『ART BLAKEY AND HIS JAZZ MESSENGERS(アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズ)』の公演プログラムです。画像の表紙&裏表紙でお分かりいただけるように、中面までどのページも非常に格好がよろしい。カッコイイ上に、植草甚一、野口久光、今では忘れられてしまったかしかしダンディな人だった久保田二郎、戦後日本芸術史上、決して小さくはない足跡を残した(ようですが勉強不足です。すみません)アート・フレンド・アソシエーションの神彰が夫々結構長い文章を寄せ、で、最後の一押しはアート・ブレーキー、リー・モーガン、ボビー・ティモンズ、ウェイン・ショーター、ジミー・メリット、そしてビル・ヘンダーソンという来日メンバー漏れなく全員の直筆署名・識語入り、という貴重な一冊。他に、同年5月に来日した『THE MODERN JAZZ QUARTET(モダン・ジャズ・カルテット=MJQ)』と翌年1月に来日した『CHRIS CONNOR AND HER TRIO + HORACE SILVER QUINTET(クリス・コナーとホレス・シルバー・クインテット)』のプログラムにも各々、メンバー一人残らず全員の署名と一部識語が入っていて、余程の関係深かった人の旧蔵品ではないかと推察しますが、残念ながらどこをどう見ても誰かは判明いたしませんでした。因みに、クリス・コナーのプログラムでイラスト年表を手掛けているのはMakoto Wada、ライトパブリシティ入社数年を経た当時の和田誠だったりします。
1920年12月、シャンゼリゼ劇場での公演でのバレエ・リュス公式プログラム。画像左端の表紙には「パラード」のためにピカソがデザインした衣裳画が石版刷りで。右端、当日のプログラムにある「春の祭典」7年ぶり再演の際のスタッフや内容、真ん中はこの時の「春の祭典」を振付たレオニード・マシーン。マシーンはこの二ヶ月後にはディアギレフに解雇される。
■先週一回お休みししてしまったバレエ・リュス公式プログラム、まだまだ続きます。今回は1920年12月、シャンゼリゼ劇場での公演時のもの。この公演では新作がかけられることなく-ストラヴィンスキーの「結婚」作曲の遅れのため-代わりに「春の祭典」が7年ぶりに再演されています。1920年12月15日付の当日プログラムが残る当品には、再演された「春の祭典」がありました。脚本、音楽、ニコラ・レーリヒによる美術・衣裳はそのままですが、振付は初演時のニジンスキー版に変わってレオニード・マシーンが新たに担当したことが記されています。今年話題となっているのは何故かディアギレフではなくシャネルの方ですが、この両者が出会ったのは1920年の夏。その数ヶ月後には、「春の祭典」再演のために30万フランをぽーんと提供、一方で、バレエ・リュス初期の重要作品の新生を任されたマシーンですが、その振付はあまり話題にならず、その上この公演から二ヶ月後にはニジンスキー同様、女性との恋愛問題によって解雇される運命が待っていたのですから、人との出会いや別れさえもまた、才人にとっては必然であるかのように見えてくるのでした。今週はこの他、『Japan Interior Design』1960~70年代発行内10冊、ロシア・アブァンギャルド関係研究書、人文科学系図書など白っぽい書籍50点前後を中心とした入荷となります。
ランジェリーというカテゴリーに絞った珍しいカタログ誌『LINGERIE DE PARIS』。当時の下着は現在の立派な外出着、若い女性にとってはファッションのヒントにもなりそう。カラーページは石版刷に近い風合い。
■ああ~っつい8月に入ったところで、来週神田の市場は一週間の夏休みに。小店も8月14日(金)から17日(月)は連休とさせていただきますが、来週8月11日(火)、13日(木)は12時~20時で通常営業いたします。また、お盆明け8月18日(火)からは、いつもの営業に戻ります。暑さ厳しき折ではありますが、ご来店いただければ幸いです。市場はお休みですが、この機に新着品ご紹介を少しでも消化すべく、来週もHPは更新の予定、で、来週はちょっとコンテンポラリーな品筋となる予定。お休みの合間に覗いてみてやって下さい。店ともども何卒よろしくお願い申し上げます。
■今週の新着品、最初は1920年代にフランスで出版されたファッション関係誌12冊一括での落札品から、『LINGERIE DE PARIS』(但し当品は無刊期)。デザインから見てアール・デコ華やかなりし頃のもの、タイトルの示す通りランジェリーというカテゴリーに絞り込んだカタログ雑誌で、当品が180号というのですから一体何年に創刊されたものか、それにしても「パリのランジェリー」って-“パリ=最新モード”の言い換えであることに間違いはないのですがそれにしても-パリがつけば何でもいいのか!と思わず突っ込みたくなります。ちなみに、ランジェリーの専門誌、カタログというのは小店初めての入荷です。珍しい。はず。さてこのカタログ、およそB4ほどもある大判の22P、内6Pがカラーで、表紙・裏表紙含めカラーページは全て平版の多色刷りという手の込んだもの。ランジェリーといっても意味は広く、部屋着用のブラウス、ワンピースにはとくにバックスタイルのデザイン画なども添えられ、それぞれ紙幅も割かれています。で、画像右端が「夜のシュミーズ」ですが、これは21世紀現在、十分贅沢な外着。画像真中の当時の下着姿は、いまや日昼の街中あちこちで目にできるようになったニッポンの夏、であります。らんじゅりー・ど……真夏の渋谷あたりの別名にも使えそうです。
祖父江由良=二代目中村芝鶴が残した朝鮮半島訪問記念アルバム。李王家東京邸から発された書状、祖父江撮影による半島各地・人々を写した写真、絵葉書、使用済み切手やホテルのレシート、マッチラベルなどがアルバムの中に残されている。
■昭和16年7月に京城の朝鮮ホテルに宿泊した夫妻が、植民地時代の半島での見聞をアルバムにして残していました。夫の名前は祖父江由良、またの名を二代目中村芝鶴。若き日には美しい女形として熱烈なファンをもち、戦後は翻案劇の自主公演などにも意欲的に取り組んだという歌舞伎役者の元には、麹町区紀尾井町一番地、というのはそのまま現在の赤坂プリンスホテル旧館が使われていた「李王家東京邸」、その 李王職事務官・林健太郎発する立派な墨書書状がアルバムともども残されていて、半島、李王家、そして当時復興を期されていたらしい「朝鮮楽」との浅からぬ関係を思わせるのですが、芝鶴-半島との直接的なつながりについては残念ながら詳らかにしません。二代目市川左團次はじめ、歌舞伎役者による戦前の文化親善・交流には、見落とせない側面があったに違いないのですが。アルバムには、風俗関係を中心とした未使用の絵葉書コレクション(いずれも糊は使われず)の他、画像にとったホテルの領収証、「朝鮮楽大要」等小冊子、旅の途上で手にしたマッチラベル、半島とのやりとりで集めたものと思われる外地からの使用済み切手、そして祖父江由良自身によって撮影されたと思われる写真が多数、貼り込まれています。名所旧跡に混じり、道行く人の後姿、道端での物売りや物乞いの親子の姿などか残る写真には、祖父江由良という人のもつ温かな心情が感じられます。時は8月。日本とその植民地との間で占領と解放とが反転した時から64年という歳月が流れてみると、戦争に関するドキュメンタリー番組のほとんどまでもがテレビの深夜帯に押しやられ、タレントのクスリ騒動ばかりが耳目を集めているのでした。今週はこの他、戦前各種洋雑誌、フランス挿画本少々、ファッション・プレート15点、杉浦康平デザインによる東京画廊カタログ・封筒付き完品6冊、デキスタイル・デザイン画79点一括など一部「MODE展」より出戻り分含め店に入ります。
■「で、店はいつ?どうするの ?」と市場に行く度にご同業の皆様に尋ねられる小店移転問題、古本屋という業態ではすでに店ほど非効率的な形態はなくなってしまったいま、しかもこの経済状況下で店を続けることには依然幾ばくかの疑問と、大いなる不安を抱えている、というのが正直なところです。けれど、店を続けている限り、売るにも買うにも誤魔化しはききません。売れていようが売れなかろうが、毎週何かしら仕入れなければならない、という動機も、買ったものから手柄を見つけ提示の仕方を考えて、商品に変える努力を続けなければならない、と思う所以も、すべて「店」にあります。今夏の営業は、かつてない厳しさのなかにあります。店の移転は、乏しい資金でいかに知恵を絞れるかにかかっています。捨てる神あれば救う神あり。いま、若き建築士ご夫妻が移転先のプランに真剣に取り組んで下さっています。お二人の大胆かつ斬新な発想により、おおよその青写真が見えてきたところです。移転に向けての進捗状況については、これから追々短信でお知らせできればと思っております。