■作業をしていると5分おきくらいのペースで更新プログラムのために再起動せよと云ってくるのがあまりに鬱陶しくて、ついつい「今すぐ再起動」をクリックしたところ、およそ2時間にわって作業を中断されてしまいました。
今日はともかく思い切り早足でまいります。
先ずは、『図案服紗合』(上下巻揃)。
明治27(1894)年、東京は日本橋にあった大倉書店から発行された木版刷りの図案集で、久保田米僊が編集。上下とも折帖仕立て、和紙に多色木版刷りの図案を2冊合計で36図収めています。今回、2冊とも、筒上の袋付き。袋付きは稀。
服紗のための図案と銘打ってはいますが、染めや塗りなど工芸品にも十分応用可能で、実際にはデザインソースとして、さまざまな分野のニーズを勘案して企画・編集されたものではないかと思います。
全体に、いまだ図案化の度合いが浅く、具象画が多い印象ですが、画像にとった「蕨」のような作品が散見され、美術とデザインとが分かれていこうかという、ちょうどその過渡期を思わせる図案集です。
■もう1点は、『移動演劇図誌』。昭和18(1943)年、日本移動演劇連盟を著書とし、芸術学院出版部が発行。
すでに紙質も劣悪化しつつあった時代の本ですが、何といっても『犯罪科学』掲載の「グラフモンタージュ」とテイストがそっくりの巻頭58ページにわたって続くグラフィック表現(椀飯振舞!!!)が目を惹きます。写真は植木康次、編集構成は大町糺。
大町糺は、久保田万太郎を担ぎだして戦後すぐに発行した俳句誌『春燈』の発行人にすわったかと思えば絵画で個展を開き、カレー屋を始めたかと思うと『カ リー伯爵の憂鬱』という著書をものするといった調子で、ちょっととらえどころのない人。植木については、これまでのところ、どのような人だったのか不明。
「移動演劇」は大戦下日本の国策団体である「移動演劇連盟」による事業でした。広島で原爆にあった「桜隊」でご存知の方も多いかと思いますが、東宝、松 竹、吉本から、左翼演劇運動までをも糾合した団体です。イデオロギーとしては息の根を止められていた左翼思想の一部が、体制と一体化した団体のメディアの中で生き延びているという皮肉。たいへん興味深く、また珍しい1冊です。
ちなみに、画像中、一番左のページは、開くと横4P分一連で舞台が姿を現す仕掛け。発行時期を考えると随分贅沢な誌面構成でもあり(そう云えばちょっと『FRONT』っぽい)、要はいまもむかしも、権力とむずびついたところにお金は落ちると云うことですかねえ。
■明日土曜日、1910~1930年代の大型ポスターが十数点入荷いたします。すべてリトグラフで、内、1点はカッサンドルのポスター。もちろんオリジナル。明日はお客様からのご蔵書も入荷の予定で、また店内、大変なことになりそうで。
ますます暑い、暑いのに、何故だか汗だけは冷たい夏であります。
末筆ながら、暑中お見舞い申し上げます。みなさまどうかご自愛くださいますように!