■あれよあれよという間に前回の更新からひと月近くが経ち、この後どうする気なのかどうなっているのかと問われることが増えてまいりました。聞いている、というより、やや問うている、というニュアンスが感じられるようになってきたことから(もちろんそれもトロトロしてる小店店主のせいなんですが)改めて書いておきますと、本年10月半ばをもって日月堂は表参道の店舗での営業を終え、下記の連絡先に移転しました。
移転先 〒145-0062 大田区北千束1-4-20 G-FLAT 101号 TEL/FAX 03-3724-1338
移転先の装備が整うのが今月の24日、そこから荷解きが始まることから、本格的な仕事の再開は年明け以降となります。
また、移転先はあくまで仕事場となりますので、ご来訪はアポイントのみお受けすることになります。
郵便物も移転先に転送されています。電話も通じておりますが、移行期間中のご連絡についてはSNSのDMか、ご存じの方は携帯電話をご利用いただくのが最も確実です。
ご不便をおかけいたしますが、ご連絡・ご用命など、お気軽にご一報いただければ幸甚に存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。
■移転の途上、何もしていないかと云いますととんでもございません。
例えばこちら。FRAGILE BOOKSの「今週の1冊」では、「モノグラム手控帖」を、「博覧会」ではペーバー・エンブレムを紹介しています。
とくに、「モノグラム手控帖」は全100Pを画像にアップして下さいました。伝統的なデザインで、エンボス加工など手工業的な印刷技術の点でも興味深い印刷物のスクラップ帖として魅力的な1冊。少なくとも日本では流通する例の少ない珍しいものだと思います。詳細はこちらから。h
ペーパー・エンブレムはつい集めてみたくなるかわいい紙モノですが、スペインのフランコ独裁政権のプロパガンダという側面をもつもので、こちらも日本ではなかなかお目にかかれないものだと思います。負の遺産とする事由含め、詳しくはこちらで。
■それにしても時代は変わったと実感する今回の移転。2002年の表参道への移転、2009年のパレス青山207号から205号への移転と、移転の経験充分だったはずの小店店主ですが、今回ほどやるべきことが多いのは初めて。思えばFacebook、Instagram、TwitterといったSNSからGoogleマイビジネス、AirPay、PayPay、Rakuten Paymentなどのキャッシュレス決済もあれば、NTTは固定電話とは別に光回線がありWifiがありSoftbank光があり、件数だけでもうんざりするのに加え、加入や利用開始についてはあれだけ熱心なのに対し、その10%ほども親切でも分かり易くもなく条件までつけられる解約や変更手続きにはもうほとほと疲れました。まだまだ完璧というには程遠いというのが現状です。やれやれ。
■以下表参道退去後・撤収までの経緯と物品の行き先について備忘録かねて。
11月30日、無事に表参道の店の鍵を返上するも、表参道の片付けはまだ続き、12月6日にスチール製の本棚16台を解体、キャビネット1台を搬出。同日、夜9時頃までかかって鉄製の棚板・背板など棚毎に分類・整理して縛る作業。本棚16台分で棚板・背板は100枚を超え、棚の側面板は階段での運び出しになるので両端をエアクッションで包むなど想定外の作業続きで、今回の移転で最も助っ人が必要だったのが実はこの日だったことに作業終盤になって気付く。
12月10日午前9時よりトラックに棚とキャビネットを積み込み、表参道の旧店舗は完全に空に。施工の指示か、壁にうっすら記された鉛筆書きのメモが日月堂としての最後の痕跡となる。
最後の清掃も終えて12時少し前に撤収完了。パレス青山をあとにする。
日月堂という店舗のためにもちこんだものがすべて取り払われた空間は、実にすっきりとして清々しく、ベランダ側からふんだんに降り注ぐ光の豊かさに改めて驚くとともに、あまりに贅沢な光景に、移転前「まぢでここの家賃払っていけるんですかねワタクシに… 」と慄いたことを思い出しました。
最終的に、大岡山での開業以来26年をともにしてきたスチール製の丸善の本棚と、パレス青山での21年を支えてくれた初代のキャビネットは産廃となるのを免れ、「奥多摩ブックフィールド」で引き受けていただくことになりました。
初代キャビネットをたたき台としながら、収容力を大幅にアップ、さらにはどの向きからでも使える機能性まで付加していただいたオリジナルのキャビネットは、これを設計して下さった「トルク一級建築士事務所」に里帰りすることになりました。
「奥多摩ブックフィールド」は蔵書家の蔵書を散逸させることなく「知の集積」として活用できる場づくりを目指し、廃校となっていた旧奥多摩町立小河内小学校に開設されたプライヴェート・ライブラリーです。都内に僅かしか残っていないといわれる築60年ほどのヒノキ造りの木造校舎を利用したこの私設図書館は、2020年3月に廃業した「出版ニュース社」所蔵の出版関連書籍、出版社社史、関連資料など約3500冊を収蔵する他、「専門家の蔵書活用を考える会」メンバーによるドイツ文学を中心としたライブラリーや、本のかたちをしたオブジェをあつめたユニークなコレクション等を擁し、毎月第一土曜日に開室しています。詳細は下記のアドレスでご覧下さい。
https://okutama.org/
また、今回移転先の設備についても設計をお願いしている「トルク一級建築士事務所」のお仕事ついては下記のアドレスから。驚きの発想と緻密な計算により移転先もとても面白くなりそうです。
http://www.torque2006.com/index.html
有難いことに、いずれも恵まれた場で余生を過ごさせていただけそうでほっとしています。
こんなところでなんですが、多謝・深謝申し上げます!
■HPの更新も、今年はこれにて打ち止めとなりそうです。
みなさまどうか楽しいクリスマスを。そして、良いお年をお迎え下さい!
2023年、洗足で始まる新しい日月堂を、どうかよろしくお願い申し上げます。、