18/10/20
土
江戸~明治の古裂と 学生たちによる忖度無用の広告批評。2点に関係はないけれど。
■一週間が経つのは早く、時差ボケからの脱却が全く追いつかない …… というのもいわゆるひとつの老化現象かと思われますが、それにしてもこのペースだと、来月半ばの「銀座 古書の市」合同目録の締め切りに全然間に合わない! しかも、2年ぶりの目録作成で、作業がものすごくトロくなっちゃってるし!!
どうするよ!!!!
という緊急事態を受けて、大変申し訳ございませんが、来週より最短で二週間の間、事前アポイント制とさせていただきます。通常の営業日にあたる火曜・木曜・土曜日の12時から20時の間で、ご来店希望日時について、あらかじめお電話かメールでお問い合わせ下さい。
ご不便をおかけし大変申し訳ございませんが、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
■といったところで今週の新着品です。
旧蔵者とされる宇野信四郎という人の名前には全く心当たりがなく、とりあえずいつものように市場で品物を拝見。新しいものは明治、古いものになると「桃山時代」とか、なかには何と「藤原時代」なんて書かれた錦織を中心とした古裂の蒐集帖『織女餘香 五十二種』と『金絲捃拾四十五種』の2冊に、ガラス板に挟んだ(これはほんとに古そうな)更紗、組紐の老舗・道明が正倉院の宝物をもとに再現した小さな組紐、その他標本数点の一括。蒐集帖には「宇埜文庫」の朱印があります。
宇野さんという人は東京堂書店のサイトによれば、「早くから関東各地の古瓦研究をすすめ日本歴史考古学会の創設に関わりその中核として活躍」した人で、同社発行の『宇野信四郎蒐集古瓦集成』には1100点の古瓦の写真が収められているとのこと。
古裂帖に書かれたメモを見ると、名物裂(多数!?)に始まり、八幡宮伝来もの、有名神社の旧蔵品、宮中御殿調度品、田楽や能衣装に使われていた裂の一部分など、なるほど古瓦を蒐集・研究していれば、結びつきがあってもかおしくない筋の品々です。
問題は時代。これまで扱ってきた古裂をめぐり、折々に同業者やお客様から教えていただいたことをベースにして考えると、書き留められた文言ほどには古いとは思えないものが多数。小店としての評価は、ほとんどのものが江戸期~明治期と見てのものとなります。また、バラすに忍びなく、一括での販売とさせていただきます。
*手偏に君と書く「捃」は訓読みで「ひろう」「とる」、音読みで「クン」とのこと。『金絲捃拾』は「きんしくんしゅう」と読ませるものと見られます。
■趣向はがらりと変わりまして、昭和13(1938)年に慶應義塾大学広告学研究会によって開催された「第二回新広告写真コンクール展」の出品作を集めた『ad.photo』です。
学生による広告展なら学生の手になる作品だろうと思うと大間違い。「第一部」で一流企業の広告表現に対して、「第二部」で今度は一流制作集団の仕事に対して、学生や展覧会に関わった関係者・来場者などによって行われた品評会のような構成となっています。
協賛各位として「第一部」に参加した企業は資生堂、日産自動車、日立、森永製菓、明治製菓、小西六、オリエンタル写真工業など一流企業23社、「第二部」には凸版印刷、共同印刷などが9社が並ぶ筆頭に「日本工房」の名前が見えます。
また、「あとがき」によれば、「表紙に、作品レイアウトに」山名文夫が「多大なるご援助」を寄せ、会員の指導に関しては井深徴が支援していたとのこと。確かにこの冊子のデザイン、かなり洗練されています。
各社の写真広告には、学生や関係者による短評がついていて、例えば日本工房の広告に対して「夏秋の夜空は星が多すぎて寧ろ悪どい感じがする 全体から見てもう少し上品さが保たれないものかな・学生・」とか、資生堂の広告について「写真から商品への連想はどうつけるのですか・学生・」などなど、忖度の付け入る隙もないなかなか手厳しい批評も多数。なかなか面白い1冊であること請け合います。もちろん、珍しいものであることも!