■先ずは来週の営業のご案内です。来週は10月5日(月)から6日(火)にかけて「資料会大市」が開催されます。これに伴い、来週、店の営業は10月8日(木)と10日(土)の2日間とさせていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご承知おき下さいますようお願い申し上げます。
■新着品の1点目はドイツ語圏のアール・ヌーヴォー = ユーゲント・シュテールを代表するデザイン画集のひとつ『ALLEGORIEN - Originalentwurfe (寓話 - オリジナル・デザイン)』。
1896~1898年頃にかけて順次発行されたプレート集で、入荷したのはプレートナンバー1から120までのフルセットのうち、プレート4点欠の116葉。オリジナルのポートフォリオに扉と序文、延々4ページにわたる目次とともに収められています。
「アレゴリエン=寓話」という共通タイトルの下、「愛、音楽、ワイン、歌と踊り」「芸術と科学」「スポーツ」等のテーマを設定。毎回画家を選定の上、オリジナル作品を書き下ろさせ、プレートのスタイルで複製し数年にわたって随時刊行したものとみられます。
(当書についてはこれまでのところまとまった書誌情報にたどり着けておらず、当欄の記述は断片的な情報をつなぎあわせた内容となっています。このため、推測にとどまる要素を含んでおり、例えば刊行年については、プレート毎に拾えた情報から見て、これまでに把握できた最大幅をとっていますが、多少前後に広がる可能性があります。また、海外のサイトのなかには「12束」という記述も出てくることから、10葉ずつ12回のシリーズ発行された可能性がありますが、いまのところ断言は差し控えます。いずれにしてもこれだけのプレート数がまとまってケット=売買の場に出てくることは稀なことだと思われます。)
起用された画家にはまだ年若いカール・オットー・チェシュカやハインリッヒ・レフラーが居て、コロマン・モザー(プレート多数!)の名前があり、そして何と云ってもグスタフ・クリムトの名があって、さながらユーゲント・シュティールのショーケースの様相。図版はクリムトによる絵画的なものからレフラーのグラフィックデザインよりの作品まで、ヴァリエーションにもこと欠きません。
印刷も単色、フルカラー、金彩など多彩なら、技法もコロタイプや特色刷りからリトグラフまで実に多様。各作家のオリジナル作品を忠実に複製再現するべく心を砕き、仕事を惜しまなかったさまがうかがえます。
116枚を繰っていく醍醐味は捨てがたいものがありますが、当初よりプレート欠があるため、バラ売りの方向で明日以降、検討の予定。
ちなみに今回の更新で2点目に掲示している図版はクリムトのプレート3葉。欠番プレート4枚の内の1葉がクリムトのプレートで、本来なら4葉あるべきものでした。
こちらの商品も実は福富太郎のコレクションで、おそらく額装してどこかで使ったのか楽しんだのか、欠葉は鍾愛の証とも思われます。もちろん悔やまれることではありますが、プレート集の楽しみ方としてはむしろ正しいと云うべきなのかも知れません。
■こちらは店内の根雪からの発掘品。商品のタグと広告等切り抜きを集めたスクラップブックですが、特徴は何といってもアタマから尻尾の先まで"紳士用帽子と紳士用帽子に相応しい広告・プロモーションに関係するものだけ"というところにあります。
今回改めて仔細に眺めていて、つい5年ほど前まで営業していた新潟の帽子専門店「ダイマル帽子店」に関係する人の旧蔵品だと気付きました。実用性満点のスクラップ帖だったものとみられます。
なかでも面白いのはタグなどトレードマークに関する紙片。当初、一見海外のトレードマークにしか見えず見落としていたのですが、こまかく読み始めてみるとローマ字表記の「帝国ハット」のヴァリエーションだったり「麒麟ブランド」「向い鷹」「飛龍」だったり、そのほとんどが国産品のそれ。
また、広告は日本の百貨店各店や丸善などの紳士用帽子の商品広告と、同じく紳士用帽子セール用の広告とで占められています。
戦前から終戦直後、都市の雑踏を写した写真を見ると男性の9割以上が帽子をかぶっていたりして帽子着用率の高さには毎度驚かされますが、男性のおしゃれに欠かせないアイテムであったこと、広告やディスプレイなど人の目につくものについてはとくに、おしゃれアイテム(う。死語だ…)に相応しいハイセンスを目指していたことがよく分かると同時に、努力のほどが伺えるスクラップブックになっています。
つまらないお話しですが、今回初めて気付いたことがもうひとつ。
インスタグラムの「お気に入り」は 21世紀のスクラップブックだ !
■今週の斜め読みから。ってか、言語道断だという自覚がない人に政治を任せていることがそもそも言語道断だと痛感した一週間でした。
問題はもちろん あれですね。
https://www.facebook.com/shigenori.kanehira/posts/3340451459370121
https://www.tokyo-np.co.jp/article/59110
おまけ、ではなくまじめに。この言いぐさの酷さもまた…。
https://lite-ra.com/2020/09/post-5655.html