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21/08/21 茶室起こし絵図と唐子遊の図


■小店、いわゆる「茶室起こし絵図」というのを扱うのはこれでかれこれ4度目です。最も近いところでは2020年10月と、いまからわずか10ヵ月前のことでありまして、今年初めに売れたばかり。と、こう云ってしまうと「なーんだ茶室起こし絵なんて結構でてくるじゃん。」と思われる方も出てきそうですが、頻繁に入荷しているように見える理由は、少なくとも市場に出品され自分で目にした分は、確実に落札するゾという気持ちで入札し、幸いにもこれまでのところ都合4回、100%落札してきたから、というところにあるのであって、商品の希少性とは少し異なる理由での4度目の入荷と相成りました。
商品の正しいタイトルは「茶室起こし絵図」ではなく『数寄屋おこし絵図』。函に貼り付けてある奥付には昭和6(1931)年、発行人・鈴木行三、三昧社発行となっています。
布装函入りで全58点全揃い。「すき屋之沿革」と題された冊子付です。
肝心の紙模型の部分も確認しましたが、組み上げるのにないと困る爪など部品の欠けや傷みなどはありません。と云うか、ほとんど組み上げてみた形跡がないので傷みようもないといったところ。
画像にとったのは「利休 一畳半」と「小板 竹釘類」の2点です。利休から始まり道安、宗旦、不白、織部などなど、高名な茶室の他に、釣刀掛、竹垣、寸戸など、しつらえのひとつに焦点をあてた紙模型が入っているのも面白いところです。
茶室起こし絵図を始めて落札したのはかれこれ10年以上前のことになりますが、今回の落札価格は初めて落札した際の価格のおよそ6倍、販売価格は最初のそれの約3倍となります。仕入れ価格は落札のたびに高くなり、利益は入荷のたびに順調に減少(!)してまいりました。
この状況がどこまで続くのか、次回、市場に出てきてみないと分かりませんが、デジタル化の状況がいま程度のうちは “リアルな物体だからこそ意味をもつ”茶室起こし絵のような性格の商品については、今後も暫くこの傾向は続くのではないかと見ています。
しかし! 3Dプリンターの一般ユーザー向けの普及がいわれる昨今。
次のライバルはつい目と鼻の先にまですでに迫っているようで…。 


■「こわかわいい」と云う言葉を聞く度に小店店主のアタマに浮かぶのば砂目石版で刷られた子どもを描いたプレートです。その多くが明治20年代に刷られたもので、「砂目石版」で画像検索して出て来るプレートを見ると、「本当にこれを飾ったのだろうか?」というような図版がたくさん出てくるのですが、これがまあ人気を博したらしく、市場ではいまでも刷り物の一角に必ず数点は出品されています。ですが、今回入荷した唐子と象という組み合わせは珍しい(はず)。
どちらのモチーフも、海外輸出向けのマッチラベルではよく見るものですが、砂目石版のプレートにあわせ技で出てくるとはと、ちょっと驚きました。
砂目石版のお約束通り、子どもも象も可愛くないところも魅力です。そうなのか? そうなのでは? それはさておき。
先前より砂目石版と知ったようなことを書いておりますが、これを説明すると「石版石を磨いたものに、金剛砂をふりかけ、それを鉄板で擦って一面にきずをつけたもの、即ち砂目を立てた石版石面にクライオンといふ脂肪性の鉛筆芯の太い様なもので描写するのです」と昭和5(1930)年発行の『広告印刷物の知識』にあります。
分かりますか。分かりませんよね。要は石版=リトグラフだということで。リトグラフと聞いて一般的に思い浮かべるのは、「磨き石版」と云われる手法で擦られた刷面がなめらかなものではないかと思いますが、明治の一時期、砂目石版という手法で擦られた、荒い粒子の目立つ印刷物があったということを抑えておけばよいのではないかと思います。ちなみに、明治中期に急速に普及した砂目石版ですが、その後、「写真応用版」に食われて衰退していったということが前掲書に書かれています。
プレートの話に戻るとこちらの1枚、「唐子遊」と題され明治26(1893)年、日本橋通・深瀬亀次郎により出版されました。深瀬亀次郎は亀治郎とも云い、丸亀或いは亀屋を屋号とした地本問屋だったとwikiが教えてくれました。

■沖縄の病院で発生したクラスター、救いの手が届かなかった新生児、パラリンピックに動員されようとしている小学生、約9万7千人に上るという自宅療養者、メダルを胸にテレビで笑顔をふりまくばかりのアスリート …… 今週は斜め読みするまでもなく、この国はもう狂ってるとしか思えなくなりました。
 

 

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