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21/10/02 1920年代のイラストレーション … 壽屋のビールのポスターとガゼット・デュ・ボン・トンから


■今週水曜日、何年ぶりかで新幹線に揺られて三島へ。台風前夜の青空のもと、駅のホームで真正面から富士山を拝んだ後、あるコレクターの方が所有するポスター・コレクションを駆け足で拝見してきました。
蒐集対象とされているのは某ワンテーマ。特筆すべきはその質的な充実ぶりで、およそ1世紀にわたって発行されたポスターから厳選された約1千点にのぼるコレクションのもつ重量級の質量にただただ圧倒される1日となりました。
一日おいて金曜日。台風の接近する東京では荒れ模様もどこ吹く風と普段通りに市場が開かれました。
何もこんなタイミングで出なくてもと思いながら、ついつい買ってしまったのが1点目のポスター、壽屋=後のサントリーの高級ビール「新カスケード」。ポスターを自分で扱うのはもうこりごりと思っていたはずが、三島で観てきたばかりのタイミングの良さとこのデザインにまいりました。
新カスケードビールとは? 寡聞にして知らず。ですが、流石は壽屋=サントリーの商品だけあって、商品の歴史については簡単に調べがつきました。
カスケードビールはもともと日英醸造株式会社が1920(大正9)年に横浜に建設した工場で醸造していた商品。1923(大正12)年の関東大震災で経営不振に陥っていたこの会社を1928(昭和3)年に鳥井信治郎が買収、翌29年に「新カスケードビール」を発売したのだそうです。
その翌年には商品名を「オラガビール」に改称していることから、このポスターは1929年の発売から1930年の改称までの約1年というごく短い間につくられ、つかわれていたことが分かります。
「Extra Cascade Beer」「Kotobukiya Beer Brewery ,yokohama」のタイポグラフィから、キリスト教の宗教服を思わせるお揃いの赤い衣服をまとった男性4人がジョッキをかかげる図案まで、極端にバタ臭いデザインは、日英醸造から受けついだものか海外のデザインを流用したものか、いまのところ画像検索でも類似デザインはみつからず、この洒落たデザインが誰の手になるものか、気になるところではあります。 

2点目は先週の市場で落札したポショワールのファッション・プレート。小店お客様にはお馴染み、1910~20年代フランスの高級婦人雑誌の代表格『ガゼット・デュ・ボン・トン(Gazette du Bon Ton)』から。
新着品としてアップするには、みなさんもう見飽きているのではないか?と思いこんでいたのですが、今週、Instagramに1~2年前に入荷したジョルジュ・バルビエその他のファッション・プレートを投稿したところ、思いのほか好評だったというので慌ててご紹介することに。飽きたかな?と思っていたのは実は店主ひとりだったのに気付いて反省いたしました。
十数点入荷したなかから画像には7点をピックアップ。
画像上段左から1点目と2点目は、マドレーヌ・ヴィオネのアトリエのアイコンをデザインした未来派のアーティスト、タヤート(THAYAHT)によるヴィオネのスタイル画。ヴィオネのバイアスカットが洋服に与える流麗な美しさを未来派らしい動きのある曲線で表現。『ガゼット・デュ・ボン・トン』のファッション・プレートとしては多分に前衛的な異色のプレートです。
上段右から1点目と2点目はエリック・サティとの共作『スポーツと気晴らし』でもご紹介したシャルル・マルタンによるポール・ポワレのスタイル画。ヴィオネと比べるとクラシックなスタイルですが、軽快な都市のリズムを感じさせるマルタン描く背景によって、とてもモダンなプレートに仕上げられています。
下段の左2点もシャルル・マルタンのイラストで、先の2点と並べてみると作風の違いが顕著、幅広いニーズに応えられる器用なイラストレーターだったことが伺えます。依頼によって絵を描きわける必要に迫られていく20世紀の商業画家・図案家のありようを先取りしていると云えるのかも知れません。
下段右端はフェリックス・ロリオウ(Felix Lorioux)によるロンドン(リージェント・ストリート)の化粧品・美容品店「モーニー」のためのプレート。描かれているモチーフはこのなかで最もクラシックでありながら、現代のイラストレーターか漫画家が描いたかのような印象を与える不思議な魅力をもつ作品です。
考えてみると『ガゼット・デュ・ボン・トン』の揃いばかりかプレートも少なくともこの7~8年、全く目にしてこなかったように思います。今後、ますます数を減らしていくのは必至。
根雪のように置いているバルビエのプレートも時間はかかるものの着実に在庫を減らしてきていて、この辺りの商品については可能な限り、今後も在庫を確保していくべく努力したいと思います。

■今週の斜め読みから。
小さな嘘を重ねる人は、平気で大きな嘘もつける人です。
https://infact.press/2021/10/post-13859/?fbclid=IwAR0f1ao0j0nRRWg2hAUo26jYnBvcVbbLYBn1aaAAqCs6Zwc5ulfChzWI2w0
説明責任も果たせない人にこれから先、どんな責任が負えると云うのでしょう。
https://twitter.com/kokkaiwatcher1/status/1443550102715469842?s=04&fbclid=IwAR2PwIXJyb8IgRJwhT_MijxhsCdnP1dg7jy7eXOeAcrrX_kD4vhm3EHOwAc
かくして問題の本質を見極めることもしないまま、「みんなで一緒に」落ちてゆく美しい国 ?

 

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