■先週は何のお知らせもしないまま更新を1回サボりました。仕事が少しばかり重なりまして本の状態を表わす「つかれ」という言葉を彷彿とさせるテロテロでヘロヘロな具合と相成りまして、用心して休ませていただきました。ご心配をおかけいたしましたが変わらず元気ですのでどうかご安心下さい。
東京の感染者数は激減しおりますが、小店では用心のため、引き続きアポイント制をとらせていただくとともに、不織布マスクの着用と入店時の手指の消毒、三密の回避についてご協力をお願いいたしております。ご理解・ご協力を賜れば幸甚に存じます。
来週よりぐっと冷え込むとの予報もありますが、換気のため定期的に窓を開放いたします。併せてご理解を賜りますようお願い申し上げます。
■今週の新着品、1点目は“日本最初の児童文化映画劇場”として、有楽町駅前・東日会館の地下に設けられた「東日児童文化劇場」のプログラムで、昭和15(1940)年から16(1941)年にかけて発行されたもののうち、25部が入荷しました。
東日会館と云えば天文館=プラネタリウムはよく知られていると思いますが、子どもだけに対象をしぼった映画館があったことは全く知らず、慌てて検索してみても出てきたのはこのパンフレットに関する商品情報だけで詳細は不明。現状では、あくまで手元のパンフレットに記載されている事実に頼るしかないようです。
最も番号の早い「第7号」は1940年のお正月第一弾の発行分にあたるようで、巻頭言に「このお正月には記念すべきことがあります」とあり、映画法改正で小学生は一般の映画館に出入りできなくなるかわりに、「皆さんがいつも安心して、大威張りで(映画を)見る事の出来る」東日児童文化劇場が開かれたことを挙げています。東日児童文化劇場は「子供には子供の映画を」をモットーとした「日本最初の児童専門の劇場」でした。
東日会館は当時の東京日日新聞の社屋に開設された文化施設。その一角を占めていたらしい児童文化劇場の運営に、新聞社がどの程度関わっていたのか断定するのは難しいところがありますが、既述の引用文はじめ、パンフレツトに「東日小学生新聞編集部」の筆による一文があちこちに散見されること、当然とはいえ東日大毎ニュースが毎週上映されていることなどから、上映プログラムの編成からパンフレットの編集・制作まで、主体的に関わっていたとみるべきではないかと思います。
プログラムの内容は、たった2年のうちにも変化を見せ、当初、比較的多くプログラムに組まれていた内外漫画はだんだん影がうすくなり、プロパガンダ色の強い記録映画や文化映画、科学映画へ、ハリウッド製ではなく同盟相手のドイツ映画へ、と傾いていきます。思いつくままに書き出してみると…
ポパイやベティのシリーズ多数、極彩色漫画・狼の退治、同・お化けパーティ、漫画・夢の火星探検、パテー外国ニュース、夢のハリウッド、外国漫画・お父さんの仮病、影絵・朱金昭、独逸映画・世紀の凱旋、同・鉄路を守る、文部省認定文化映画=少年剣道、海の荒鷲、行商部隊、上海戦線、資源土、新支那の出発、落下傘部隊、少年戦車兵、ともだち(横山準・李聖春主演)、実る大陸、航空基地だより、わが海軍、海底の砂金、大毎東日映画読本・敬紙の国、同・国士防衛の歌、東宝文化映画作品・上海航路、国民教育映画協会作品・先覚者崋山、大日本飛行協会作品・空の第二陣、松竹文化映画部作品・海を照らす人々、朝日映画作品・戦地の子供、日本映画社作品・河船に生きるもの、日本ニュース映画社作品・海軍空襲隊、大日本教育映画社作品・整備兵…
といった具合。記録映画・文化映画系の制作会社がこんなにたくさんあったのかということも驚きでした。
また、場内陳列「満洲国児童作品展覧会」などの展覧会、毎週日曜日には教育者をゲストとした「日曜童話」なども開催されていたようです。
画像中、グリーンの目立つハガキサイズの紙ものは東日児童文化劇場とタイアップした、紙細工と引き換え券用のハガキが一体化しているグリコからのオマケ。
東京の一拠点での活動が、一体どの程度の影響力をもちえたのかは分かりませんが、プログラムに残された情報は質量の両面で貴重なものではないかと思います。販売はグリコのオマケまで含む25点一括とさせていただきます。
■今週は久しぶりに戦争関係資料が並ぶことになりました。
『昭和二十五年四月 辞令叙位叙勲綴 佐藤久八 六十一才』とある1冊の巻頭序文に曰く
「本綴は明治卅八年七月仙台陸軍幼年学校卒業以来、生涯に亘り陸軍在職関係諸辞令、叙位、叙勲令書及び中島飛行機株会社在職諸辞令等々網羅して綴り合せ生涯の記念として残存するものとす。」
書かれている通り、この1冊には、広島・仙台地方陸軍幼年学校に始まり、陸軍中央幼年無学校卒業、陸軍士官学校卒業までそれぞれの卒業証書、士官候補生から歩兵少尉に始まり、陸軍航空兵中佐に至る時々の任官状、叙正八位から始まる勲記と有位届出書、(満洲)建国功労賞證書、満洲事変従軍記章勲記、賜餐御沙汰書、寄付寄贈謝意状などが分野別・時系列順に綴られています。
最後に綴じ込まれているのが「中島飛行機株式会社関係辞令其他」の22点。このうち1点は中島飛行機を示す「皇国第一八四工場」名によるもの。俸給月額190円から320円に至る時々の交付状、給与明細もそれぞれ複数含んでいます。
『陸軍幼年学校ニ関スル綴』には入学者の府警への注意事項から身上明細、生徒納金関係連絡通知、受験の心得、成績表、「少尉任官ニ際シ必要ナル最小限ノ単装備品及価格調書」、卒業授与式式次第まで、細大漏らさず紙記録原本を綴じています。
『退職後参考書類』には恩給関係の必要書類を中心に、私物拳銃保管證、陸軍偕行社関係書類、そして、昭和22年12月1日付けでの「公職追放の仮指定者」通知、昭和24年の「追放指定緩和緩和申込規定」昭和26年8月16日付けによる「(公職追放)指定理由取消書」が綴じられています。公職追放について、段階を踏んでまとまった資料をみたのは小店店主、初めてのことでした。
『思出之草』は卒業時の寄せ書きで、鉄心、嘆堅といったいかにもな詞書のなかに時々とぼけた絵などが混じり、しかも、「時に声アリ お母ちゃん…」といった実録となっている点でこの中では異色。
それにしても、やはり面白さは私的な記録にあるということのようで。佐藤久八さん(=作成者で旧蔵者)が肩を落としていなければよいのですが…。
■今週の斜め読みから。今週は本当に色々ありました。
https://globe.asahi.com/article/14459119?fbclid=IwAR3VTihDVKZWlwi9BCBpHSk8tnJ2FIXAsfya9fmFZWeGJC6U2brdy9S8jRw
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2402150226584358&id=100003682130924
https://mobile.twitter.com/ombon8/status/1448801275802312704/photo/1
https://mobile.twitter.com/TomoMachi/status/1250449599279456260
https://friday.kodansha.co.jp/article/209480?fbclid=IwAR3VTihDVKZWlwi9BCBpHSk8tnJ2FIXAsfya9fmFZWeGJC6U2brdy9S8jRw
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88255?fbclid=IwAR02Tnv3GO_ndouGxX7-lWwyBCKsKel_2YYw4kFSGIv2G0n-P9xV0vcSnIw
https://toyokeizai.net/articles/-/278638?fbclid=IwAR27XJ6O0aa0y27uTSGlWRS48e3BbZ0Ga_sEyNDQ0RIhMo9roPJpZRu_DsY
もうすぐ選挙がやってきます。