■先週は、新着品のご案内をさぼってしまい失礼いたしました。こちらは繰り返しになりますが、先ずは夏休みのお知らせを。
8月6日(土)と8月9日(火)はそれぞれ12時より19時で通常営業した後、8月10日(水)より8月17日(水)まで夏季休業させていただきます。
ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
コロナの感染拡大が依然続くなか、今週は列島各所、猛暑と豪雨に見舞われる過酷な夏となりました。どうかくれぐれもご用心のうえ、よい夏休みをお過ごし下さい。
■先週から繰り越しとなった新着品のご案内です。1点目は、教文館が発行した『国際子供 はめ絵カード』。これが実によく出来た世界文化を学ぶための知育カードで、日本、支那、アメリカ、イタリー、オランダ、ロシアの6ヵ国をとりあげたもの。それぞれの国ごとに、①お手本にあたるカラー印刷されたカード、②二つ折りで背景が起こし絵になる線画のカード、③型抜きした線画の人物 という①から③が揃ってワンセットとなります。当品は、お手本にあたるカードの絵の部分に窓をあけた専用の袋付。
「日本」のお手本カードに遊び方が記されていて、抜き書きすると-
「この遊びには六つの國が出て居ます。皆さんはこれに色をぬつて、きれいにして、お客様ごつこや、世界漫遊や、其他色々なおあそびにつかつて下さい」-
というもの。
②の背景が起こし絵になるカードの台になる方のスペースには、どれも二筋の切れ込みがあり、人物のカードについている足の部分を折って差し込めば、ジオラマのような、簡易模型のような、簡単なオブジェが出来上がるという仕組みです。
絵の部分に「mitsuko」のサインがある以外、誰のテキストか、いつの発行かは不明。mitsukoについても一体誰なのか、残念ながらたどりつけておりません。
試しに国立国会図書館の蔵書から、1900年から1945年までの間に教文館から発行された刊行物で、タイトルに「子供(子ども、こども)」の文言が入るものを検索すると22件。そのほとんどが1927年から1932年(昭和2年から昭和7年)に集中しています。また、その書き手の多くが村岡花子。このカードもこうした路線に沿って企画されたのではないかと考えたくなりますが、これはあくまで当て推量。
ですが、「シナ(支那)」のお手本カードに記された文章-「日本に一番近いのは支那/昔は色々の先生が来て私共に/よいことを教へて下さいました。/たくさんの日本人が支那に行き/たくさんの支那の人が日本に来て/住んでいます。/私共はお隣どうし、もつと仲よく/なれば、どんなに愉快でせう。」-を見る限り、日中戦争前夜の1930年前後とみて間違いないように思います。
もうひとつ。教文館がアメリカから派遣されたメソジスト教会の宣教師たちがつくた組織から発したことを考えると、ヨーロッパから何故ドイツでもイギリスでもなく、イタリアとオランダが選ばれたのか…? こちらは謎のまま。
それにしても中国のカードに書かれている「もつと仲よくなれば、どんなに愉快でせう」という一文。例え難しいことだとしても、理想を掲げない限り理想には近づけないことを思うと、軽いようで重い言葉だと思います。
■よくよく考えてみると、都市の中にガレージだとか駐車場が必要とされるようになったのはごく最近、せいぜいこの100年ちょっとのことであり、モダニズムの時代、駐車場や自動車のショールームというのは都市における最先端の空間だったといえます。
『GARAGES et Salles d'Exposition(ガレージとショールーム)』は、パリの大規模駐車場と自動車販売のためのショールーム建築に的を絞った建築資料集。
ポートフォリオに未綴じのプレートを46葉収めた第1巻と56葉を収めた第2巻の2冊揃い。プレートも欠けなく、それぞれに解説の冊子もついています。
画像には写真図版のプレートをとりましたが、平面図、立面図、構造図、動線図などの図面のプレートと写真プレートとが半ばする構成となっています。同時代の建築関係プレート集のなかで、当書ではやけに図面類が多いのが特徴。
パリの大型駐車場やショールームの平面図を見ると、オスマンによるパリ大改造の頃の建物と比べてショールームでは天井を高く、駐車場では柱を減らすなど、建築物の躯体に関わる変更点があった可能性があり、図面類が多い理由はこの辺りにあるのかも知れません。
この2巻揃い、もう10年ほど前になるでしょうか、最後にパリに行った際に彼の地の古本屋さんに勧められたことがあります。「モダニズム文献にピッタリ。ポートフォリオのデザインまで"ウリ"になる」と。
とくにポートフォリオのデザインに心惹かれたものの、値段を聞いてあっさり退却することに。10年ぶりの邂逅がまさか日本の市場でのことになろうとは思ってもいませんでした。
ポートフォリオの内側には戦前、海外の書籍・雑誌の輸入販売で知られた「明治書房」のシールがあり、いま古本屋としてやってこられたのは、遠い昔の日本人の勉強熱心さによるものと改めて頭を垂れました。これから先の日本の古本屋には、一体何が残されるのでしょう…?
■今週の斜め読みから。
繰り返しとなってもこの点は精査されないとね。というガーディガンの記事。翻訳はこちら→ The Gardian
下〇〇文は何枚舌だ!? … というのがゲンダイに。
一覧表も見つけたぞ! 読売さんで。
ともあれみなさまどうかご無事で!