■極小倉庫に積みっ放しだった本と自宅に堆積していた紙モノと今月発行の目録品整理に明け暮れましたよGW。さあ気持ちを立て直して。来週は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。ご来店のほど、よろしくお願いいたします。 ■どれにしようかと迷った今週の新着品、最初は村野四郎著、北園克衛構成『体操詩集』。昭和14年、アオイ書房発行の限定500部本。スポーツをモチーフとした村野の詩19篇に、各種スポーツ写真を添えて構成した41Pです。写真はレニ・リーフェンシュタール、パウル・ヴォルフのベルリン・オリンピック写真集からとられたとされ、がしかし、この二者・二冊の写真集に載っていないカットがあるのだと、ある研究者の方に聞かされたのももう随分前のこと、いま参照すべき二冊が手元にないのが悔やまれます。昨今はとくに「北園本」として扱われることが多く、しかも私たちの世代の不幸とでもいうべきか、村野四郎といえば「国語の教科書にのってるセンセイ」の印象が強く、つまりビジュアル以外は面白くない。なんて思っていたら見当違い。「やがて一人が頸だれると/一人が孤独のやうに残される/嵐の中にふるへながら/すると急に/世界が扇のやうに閉つてくる」(拳闘)、「僕には愛がない/僕は権力を持たぬ/白い襯衣の中の個だ/僕は解体し、構成する/地平線がきて僕に交叉る」(体操)などなど、少なくともこの詩集はこんな調子が貫かれます。青白く俯く詩人のイメージと、それとは反対のスポーツ。4/24付のこの欄ではスキー・メソッドをご紹介しましたが、機械やスピードやリズムの延長線上にスポーツが発見され、新しい表現もしくは表現における実験に重要なインスピレーションを与えた時代があったのは確かです。で、ここからは蛇足。最近漸くスポーツ観戦の面白さに目覚めた私は、ひとつのゴールやある記録を希求し、その一点で身中に力を撓め、力の解放の後にはしかし、厳然として分たれる勝利・敗北をも身一つで受け止めねばならないスポーツ競技-とくに個人競技というものは、間断のない生(=過程:勝利)と死(=結果:敗北)との往還なのではないかと、最近はそんな愚にもつかないことを考えます。勝とうが負けようが、全力を尽くしたゴールは清々しく美しい。多分、それは人生も。なんて格好をつけましたが、何だか知らないうちについゴールを考えてしまうトシになっていたということであり、そうとでも思わないかぎり入札さえ覚束ない古本屋稼業ではあり―せめて目指したいゾ負けても清々しい入札 ……そんなもの、ないか。
■……一抹の虚しさを覚えつつもさて。お次は久しぶりの戦前・海外渡航者の残した旅の記録一括から、N.Y. 「ラジオシティ・ミュージック・ホール」1936年のパンフレットとミュシャの絵を石版刷りにした栞状のカード。このカード、裏に印刷はなく一体何を目的に作られたものか今のところ分かりませんが、もしラジオ・シティにある日付と同時期のものだとすればミュシャ生前に刷られたものということになります。この一括にはツアーパンフだけでなく石鹸の包装紙や商標類なども混じり、一体どういう人物だったのか、渡航目的は何だったのかなど想像するヒントが残されているのがちょっと楽しみ。明日以降つぶさに検め、順次店頭でご紹介いたします。新着品はこの他、アール・デコ期のテキスタイル図案集(石版多色刷)プレート約40点、英国から日本まで当時の世界各国王室御用達・宝飾品と金銀製品メーカー『MAPPIN WEBB』の戦前・総合イラストカタログ、日本郵船の船内メニュー7点、戦前・中国木刻作品集から、各種生糸・絹糸の色見本帖なんてものまで。ただいま即売会準備中につき、新着品に手が回らなくなりつつありますが、少しずつでも店頭でご紹介してまいります。 ■最後にお知らせを。小店一年ぶりの出展となる即売会