■先週末より目録の受注も本格的にはじまり、即売会初日も目と鼻の先。
■といったところでようやく新着品。『L’EXPOSITION DE PARIS』は1937年パリ万博の写真集。無刊期ですが、ほぼ間違いなく万博開催と同時代、パリで発行されたものです。専用の上製ポートフォリオに収められた写真は未綴じの全42葉、ボザールの教授による解説3Pが付されています。また、42葉の一覧に、建築家の名前とともに現地フランスの協働者名までクレジットされているのですが、これはちょっと珍しいのではないかと思います。この万博で、師であるコルビュジエを凌いでグランプリを獲得した坂倉準三の「日本館」が収められていないのは残念ですが、画像でご紹介する通りエッフェル塔を挟むようにして向かい合って建てられたシュペーアによる「ナチス・ドイツ館」とイオファンが手掛けた「ソ連館」とはしっかり押さえられています。ドイツ館の尖塔のように見える鷲の彫像の足元と国旗掲揚のポールの先端には、よぉーく見るとお約束通り、ハーケン・クロイツが。天に向かって伸びあがるような照明はナチスの得意技ではありますが、ドイツ館をこの写真集唯一の夜景で収める一方、内実はどうあれ活力に満ちた労働者の彫像を頭上に頂くソ連館を明るい光のなかでとらえたところなど、通り一遍の写真集に見せながら“実は結構クセものか?”と思わせるところがあります。スポーツであろうが文化であろうが、一旦「国」を背負ったからには、政治と無縁ではあり得ない。豪華で華やかに見えるこの一冊もまた、20世紀のスペクタクルに常につき従う「影」の証拠物件なのかも知れません。とまぁ、あっさりしたご紹介となりますが悪しからずご容赦を。目録というもの、結果に一喜一憂するという点でかつて生徒と呼ばれていた頃の試験ととてもよく似て、未だに慣れるということがありません。何ともはや器の小さい人間ではありますが、ともあれ来週は東京古書会館でお目にかかれますように!