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11/05/21 ふたりで1冊 - マックス・エルンストとポール・エデュアールの『A L’INTERIEUR DE LA VUE』 西脇順三郎詩集『あむばるわりあ』2部限定本


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左が表紙で右見開きが本文ページ 本文の2色使いは最初から最後まで共通 コラージュは手彩色が加えられた内の1点

■「これだけ買えれば万々歳」という1点のために、店を休んで出掛けた洋書会大市は相手のテッペンの札に僅かに届かず、肝心の品物をとり逃すという結果となり、いつもの金曜日の市場では一番面白いと思った資料系の紙モノで、落札者の最安値にさえ届かず惨敗しました。市場というもの、いつまで経っても思うように買わせてくれるということがない、何とも厳しい世界です。そうしたワケで、会心の、とはいえませんが、それでも市場にはまだまだ知らないものが現われます - 今週の新着品も小店初入荷のものからご案内。あっ。念のため。来週店は通常の火・木・土曜日の各日12時から20時で営業いたしますのでご来店のほどよろしくお願いいたします。
『視力の内部で』と邦訳タイトルの付される(ウィキペディア「ポール・エデュアール」)
『A L’INTERIEUR DE LA VUE.8 POEMES VISIBLES』は、マックス・エルンスト(当書表紙・扉ではMX ERNSTと表記)とポール・エデュアール(同PL ELUARD) 著による詩画集で、1948年、限定610部を発行。入荷したのは47と番号の振られた1冊です。当書についてはウィキペディアの「エデュアール」をはじめ、出版年を1947年とする資料も散見されますが、発行は1948年。1931年にエルンストが制作した8篇の視覚詩 = コラージュに、1946年、エデュアールが書いた8篇の詩をプラスして、1947年の12月に印刷された … と奥付頁に当書成立の経緯と印刷年、限定部数などまで記しながら、何故か発行年を裏表紙に置いてしまったことによって混乱が生じたものと思われます。図版は全て片面刷されたコラージュ作品で35図を綴じ込んでおり、奥付に記載された印刷所はあのムルロー工房。さらにこの内の7図には、手彩色が加えられています。エルンストとエデュアールの共著による詩画集は、シュルレアリスムの王道という点で小店には荷がかちすぎるきらいもありますが、コラージュに描かれた不思議な世界には思わず見入ってしまうような抗し難い魅力があるのは確か。名前の残る人たちの仕事のもつ、決して色褪せない力を感じさせられます。


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右は、制作者が手紙の中で「くどかったのでは…」と不安をのぞかせたマーブル紙を使った表紙 左はタイプ打英文原稿と裏打紙の間に幾筋も糸を挟み、糸を本文紙に固定したページ 中央は本文テキストも挿画もペンで手書きされた当書にとっては標準的なページ

■2点目はまたしてもブライヴェート・プレス主宰者だった人の旧蔵書で西脇順三郎の詩集『あむばるわりあ』の限定2部本製作者は黒川佳哉という人で、この人については一切が不明ですが、後ろ見返しに貼り付けられた手紙から、旧蔵書の顧客で限定本のコレクターだったことは間違いなくうかがい知れます。限定本のコレクションに熱中する人が、やがて自分自身の思うような本を作ってみたくなるのは自然な流れなのかも知れませんが、この2部本については、用紙-純白Cansonを選び、扉のタイトルを自らレタリングし、テキストは4色を使い分けながら全ページをペンで手書き、挿画も自身選んだ上、精密に - マン・レイや宇野亜喜良や北園克衛の線画をペン書きで、イヴ・タンギーの図版をステンシルで - 再現し、折丁を整え、糸かがりし、マーブル紙の表紙をつけ、タイプ打ちしたタイトル用紙を貼り付け … と何から何まで一人の手仕事。刊行は1975年 (奥付には「発行期」として「1975.10.30.」と記載)で、当時、個人で利用できる複写技術といったらガリ版刷程度しかなく、和文タイプも一般的ではなかったようなので、良質な紙を使って文字もレイアウトも美しくと思えば、いっそのこと書いてしまうのが早道かとも思いはするでしょうが、一定のテンションで・乱れなく・誤字脱字なく・書き果せるのは至難の業だろうと、その後のワープロ、パソコンで楽することを覚えてしまった私などは感嘆するばかり。旧蔵書に宛てた手紙の中に、3冊は作りたかったけれど1年かけて2冊がやっとだったとあるのにも、いや2冊で充分立派ですと、できることならお伝えしたい。それは兎も角、当書は最初から1部(1冊)を旧蔵書に贈ることを念頭に置いて作ったのだと云い、「それにしても 私の本は 未熟なものですが、もし貴下に 一冊所有していただければ、本当に幸いです。」と記された手紙とともに届けられたこの本は、西脇順三郎に対する以上に、自分の眼の前に讃嘆すべき美しい本を差し出してくれるプライヴェート・プレスの主宰者に向けて捧げられたオマージュだったといえるのではないでしょうか。あるいはこれもまた、旧蔵者によって生み出された限定本の1冊だったといえるのかも知れません。
今週はこの他、上記旧蔵者の詩集の1本口ベデカーを中心に戦前の海外ガイドブックが約40冊(ロシア1冊含む!)、昭和20~30年代の雑本10本口などが明日の夕方、店に入る予定です。

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