中央はいかにもこの時代(昭和5=1930年)らしいデザインの表紙 左の見開きは震災直後と復興後の銀座の中心部(編集ページ) 右の見開きは森永キャンディーストアの外観・内部・人で込み合う店内風景など(広告出稿か)
急告です ! 6月28日以降、店のパソコンで、「info」が頭につくメールが受信できない状態が続いております。ご面倒をおかけいたしますが、メールでのご連絡は当面、order+nichigetu-do.com (+をアットマークに変えて)のアドレスの方までお願いいたします。回復し次第またご案内いたします。何卒よろしくお願いいたします。
■2011年の7月が、「電力使用制限令」とやらを伴って厳しい暑さとともにやって来ました。ベランダ越し、根津美術館の緑の上を通って吹き来る風のお陰で、今週は何とか冷房なしでやり過ごすことができましたが、暑くなると途端に客足が「パタリ。」と止まるのが小店の倣いであり、今週店先でお話をしたお客様といえば確か …… ええぇ~ …… ええっと …… 二人。- といってみたところで、今年は夏の風にさえ、もの言えば唇さむしの感が否めません。こともなげに、では決してなく、だからといって、ことさらに、でもない。日々明らかになる事実と、万事遅々として進んでゆかない現状を前に、そんな位置が果たして見いだせるのかどうか、この3ヶ月、とくにこの更新の際には何度も考えさせられ、言葉にしてみては消すということを繰り返して結局は何も記さず、依然として解答を見いだせないまま迎えたこの夏は、率直にいって小店本気の正念場となりそうです。
■そう云った同じ舌も乾かぬうちに何ですが、来週7月8日(金)より、「明治古典会七夕大入札会」が開催されます。詳細は目録まで隈なくご覧いただける<こちら>のサイトをご覧いただくとして(大変申し訳ございませんが、本日の段階で目録が届いていない方はこちらでご高覧いただけますようお願いいたします)、小店はもっぱら勉強 - 何しろどれでもくまなく見られる触れる - に出掛けるのですが、日程が五反田の市場と完全に重なっていること、また、土曜日も市場二箇所のかけもちになるかも知れないこと、などから、7月9日(土)は営業時間の変更や臨時休業する可能性がございます。大変申し訳ございませんが、この日にご来店の折には、お出掛け前にお電話で在席か否かをご確認下さいますようお願いいたします。どうかくれぐれもご注意下さいませ。
■今週は絶対に買うべだったアレを偉大なる先達にやられ、調べ甲斐のありそうなクダンの物件はメキメキと成長する後進にもっていかれ、何だかとっても情けなく半端な結果となりました。新着品も半端なところで、先ずは昭和5(1930)年発行の『商店界4月号附録 帝都復興商店大観』。裏表紙に“商店界本誌と合はせて金壹圓”とありますが、出品=落札は本誌なしの当附録1冊だけ、しかも本誌1冊の落札価格よりもずぅーっと高かったじゃあないかというトホホなお値段。同業者が見て、それだけ競るわけですから、珍しくて面白いのは確かで、関東大震災の復興事業が昭和5年に完成したのを記念して、同年3月に開催された「帝都復興祭」に合わせて発行されたこの冊子、『江戸名物志』『江戸買物独案内』『東京市中買物案内』など、大都市・江戸東京のショップガイドの伝統を引き継ぎ(と自ら序文で語っています)、さらに「商品案内」と「仕入れ案内」としての機能まで果たせるようにと頑張った、というか欲張った内容です。
欲張った、というのは、名所案内的な部分を除き、当書のほとんどを占める商店案内や知名問屋案内などは、おそらく広告として出稿したものと見られるから。すなわち復興祭の便乗商法ですな。とはいえ震災当時と復興後とで並べられた繁華街、震災後に新たに開けた市街や橋や道路、さらにモダン建築を競った有名商店の建物や店内風景、そこに集まる人の姿など、写真の豊富さと、主要商店・問屋を網羅した情報の量など、発行時の志に見合った充実した東京資料となっています。表紙のデザインも実にこの時代らしく、本誌より高くなるのも頷けようと …… 思うのってもしかしたら古本屋連中だけだったりして。そんな気がしてきた。
■戦前の、とくにアヴァンギャルド芸術系の同人誌の高額傾向はますます止まるところを知らず、ならば戦後に目を転じようというので過日は『ASA』なども買ってみたわけですが、今度は兵庫県西脇市の広田善夫という人を編集発行人として発行されたエバンタイ・クラブによる詩と批評の同人誌『MENU』を買ってみました。この11号は以前1度、松澤宥の詩+図形作品「マッカッカ・ミユラタの詩」1篇のために落札、店頭でお客様にお求めいただいたことがありましたが、今回は昭和28年から昭和31年までに発行されたうちの5冊の入荷、11号も再入荷となった他、今回初入荷の12号には、後の松澤の作品を思わせて余りある“6”という作品も掲載されています。寄稿者には他に春山行夫、上田敏雄、深瀬基寛、羊歯三郎、金田弘などの名前があり、表紙は全て津高和一。15号では編集が広田から桑島玄二に変わっており、この頃から本来の同人に絞ったのか、ページ数もコンパクトになっています。15号、18号の巻末、「ペリカン雑記」と題された桑島玄二の文章中には、ボン書店、鳥羽茂、戦前のモダニズムから当時の神戸詩人なども扱われていて、これも見落とせないところといえるでしょう。
■今週はこの他、『欧米を縦横に』等戦前日本人の海外体験関係書4冊、エルンスト・トラーの作品などを収めた『表現派戯曲集』、戦前の『阪急美術』数冊が混じった『美術工芸』等24冊、戦前日本の写真関係雑誌・同人誌、1920~1930年代の『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』ダンボール1箱分、『アール・エ・メチエ』を含む洋雑誌の口1口などが明日の夕方までに入店に届く予定です。