■今週も店は火・木・土の12時~20時の営業となりますので、よろしくお願いいたします。 ■例によって新着品より。上は『アールヴィヴァン14号 特集ボイス 1984.5.29-6.5』。主にヨーゼフ・ボイスの滞日一週間の記録を追った本誌と、ボイス+ナムジュン・パイクが行った「2台のピアノによるコンサート・パフォーマンス」を「完全収録」したカセット・テープとを函に収めています。本誌には、到着前の日本とのやりとりに始まり、到着から帰国までの行動や発言などが細かくフォローされていて、ボイスの滞日は“ボイス神話とさえ呼ばれていた不透明さは剥取られ、時代に対峙する生真面目な一芸術家の姿が露に”するものだったといいます。両者とも没したいまとなっては、貴重な記録といえるでしょう。80年代半ば、西武が文化に現を抜かしていた時代の、仇花といってしまえばそれまでですが、20代を1980年代に過ごした私は、セゾン美術館の図録や『アールヴィヴァン』などを見返すたびに、未来派もダダも、ロシア・バレエもバウハウスも、みんな西武に教わったんだと、改めてそう思います。そしてまた、そんな奇特な企業が、或いは文化がいま、日本のどこにあるのだろうとも。
■うってかわって下の画像は1927(昭和2)年パリを出発してベルリンを経由し、モスクワからハルピンへ、そして満州へと旅した人のチケットです。一冊のパスケースから、ドイツ語、ロシア語、英語とさまざまな言語で記された領収証も出てきました。旅した人は役人か視察技師か、一等車の客人。時は8月。シベリア大陸は晩夏の風景を旅人の目に映していたはずです。80年を経たいま、成田からパリまでは飛行機で約14時間、ひと眠りで到着です。比べようのないほど旅は便利で手軽になりました。しかし一方で、便利さや手軽さがむしろ、体験を軽く、記憶を淡いものにしてしまうようにも思います。そうはいっても貧乏古本屋がパリにいけるのも現代の恩恵に他ならず、来年2月にはまたパリに出かけてまいります。そんな時代に生まれたことに感謝しつつ。