鯛の集合の図。市場で初めて見た時には、思わず「うっわぁ」という声を漏らしてしまいました。この大胆かつ斬新な構図、この鱗のカラーグラデーション … ここのところ扱うことの多い和のデザインのものですが、これは近年最も小店好みの1点。
■早くも松の内を過ぎ今年最初の更新にあたりまして、先ずは
寒中お見舞い申し上げます。
東京もここ数日は厳しい寒さとなりました。年末年始、みなさまにはお変わりなくお過ごしだったでしょうか。
昨年、小店の最大の収穫といえば店主の卒煙だったというのが大方の、かつ誠に正しい見方であり、お陰さまで何だか清々しい越年となりました。がしかし、シュガーレスのガムに飽き果てて口淋しさを紛らわせるのに次から次へと口の中に放り込む「煎り黒豆」の減るスピードといったら本人でさえ尋常とは思えず、薄っすらとしたゼイ肉を年輪の如く-しかし日輪のペースで-蓄積した結果、ただいま約半世紀に及ぶ人生において最も「重たいワタクシ」となり果てました。冷静に考えるに、依存の先が煙から何故か「煎り黒豆」に変わっただけというのが正しい認識に違いなく、年頭卒煙を誉めて下さった方々には誠に恐縮に存じますが、相変わらずの日月堂ということでそこはご理解をいただきまして、2011年も呆れず飽かずお付き合いいただければ幸甚に存じます。
そんな「お願いいたします」の気持ちを込めて、画像は賑々しく。昭和14年・芸艸堂発行『京の友禅集1集』の未綴じリーフ10葉の内の1点。こちら、紙ではなく絹布に捺染されておりまして現物は発色・質感とも画像より一層鮮やかな、小店あるじにお似合いのそれは見事な“おめでたさ”です。
■今週は新着品のご紹介に代えて、2011年年頭のスケジュールとお知らせを申し上げます。
その1。「第27回 銀座 古書の市」
1月26日(水)より1月31日(月)まで、松屋銀座8階大催場で開催される「第27回 銀座 古書の市」に出店。昨年の第26回に続き、2度目の参加となります。参加全店の紙製目録の到着はこれからとなりますが、小店目録掲載品のみ、HPにアップいたしました。当ページ左側一番上の「第27回 銀座 古書の市」のバナーか、こちらをクリック。さらに1から7まで、ページ毎にクリックすれば、出品全点をご覧いただけます。ご注文締切は1月25日(火)で、ご注文が重複した場合は抽選とさせていただきます。在庫のあるものについては1月26日以降も引き続き先着順でご注文を承ります。お目に留まるものなどございましたら、1点でもご注文いただければ幸甚に存じます。先ずはお目通しのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
*「ご注文のしおり」の頁にある、HPからのお申し込み期限「1月23日(日)」は誤りで、正しくは「1月25日(火)」となります。悪しからずご了解のほどお願い申し上げます。
その2。厳寒 ≪ ユーロ安 = パリ!?
よくよく考えてみると、前回のパリ行きは2007年のこと。実に4年ぶりとなるパリ行き、2月4日(金)~2月11日(金)で手配を済ませました。現地6泊という強行軍、蚤の市と古紙市だけで終わる余裕のヨの字もない旅となりそうですが、しかも今年のヨーロッパ、本気で寒いらしいのですが、かつてないユーロ安に行かない手はなかろうと判断した次第。今回は仕入れと品揃えを再考していくための下調べという気持ちもあり、これまで以上に随意的な - ま、正直場当たり的というべきですが - 仕入れを試みられればと思っています。何が買えるか何を買うか、どうかお楽しみにお待ち下さい … って … お楽しみに?? … お待ち下さい??? … やや、ややや思い出したゾ。パリ行きを告知した途端に買い控えが始まるんだった小店は。みなさまよろしいですか。いまとても大切なことを書きますからね。はい。
パリ行き前の手元不如意は必ずや確実にそのお楽しみを減らすことになります。
よろしいですか。よろしいですね。これっておどしですか。かも知れませんね。はっはっはぁ~あ。
■今年、初売りとなった1月6日(木)は古書店・なないろ文庫ふしぎ堂店主、『彷書月刊』編集長だった田村治芳さん(なないろさん)のお通夜、翌7日(金)は告別式でした。両日とも、なないろさんを送ろうと集まった大勢の方たちの列に私も加わらせていただきました。余命半年の宣告から二年二カ月のご闘病、昨年12月には年内もつかどうかと云われながら2011年1月1月の昼少し前にお亡くなりになるまで、とくにこの1年はしんどく厳しい闘いの連続だったろうと思われるのに、最期は、午睡の延長といった実に穏やかなお顔をされていました。60歳。確かにまだまだ若い。けれど、自らを貫かれた見事な生だったと思います。2001年、古本屋になってから初のパリ行きから帰ったばかりの私をつかまえて、なないろさんと石神井書林・内堀さんが喫茶店に誘って下さったことがありました。日「パリのマンガ古書店にはB.C.って書いてあるんですよ」な「ほぉ。かっこいい!」日「川べりの路地を入ったところに製本職人さんの工房があったりしましてねぇ」な「ほぉ。さすがはパリ!いかにもパリ!」石「ななちゃん、それじゃぁまるで咸臨丸で海外見て来たひとの話を聞いてる幕末の御隠居さんですよ」なんて大笑いしたことを、なないろさんのよく通る声、西のアクセントとともに思い出します。今年はそれからちょうど10年。久しぶりのパリで見たこと聞いたことを - いや、それだけでなくこの世界に居て見知ったこと、体験したことを-まるで幕末のひとみたいに、全身を好奇心で満たしながら聞いてくれる相手を、私は探さなくてはならなくなってしまいました。いまはただ、心からご冥福をお祈りいたします。
■淋しさは淋しさとして、それでも生きていかねばならならい者はとりあえず前へと進んでいくしかありません。
みなさまには、2011年もなお一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、改めまして心よりお願い申し上げます。
■Merry Xmas!
画像は12月23日に青山通り交差点から撮った表参道のイルミネーションです。ピンボケ写真ですがよぉーく見ると自転車で車道に走り出ようとするサンタクロースさんの姿が。撮影した本人も撮った時点では全く気付いていなかった偶然の賜物です。12月25日の午前3時を回って、それでもまだまだお仕事中に違いないサンタさんに負けず、こちらももうひと仕事、2010年も仕舞の更新、と、まいりましょうか。
■最初は草々雨亭著の手製本『欧米旅日記』。厚さにして合計8cmはあろうかという詳細な渡航の記録で、昭和6(1931)年6月25日の東京駅駅頭での見送りから朝鮮、満州、ロシアを経て8月半ばまで滞在したヨーロッパでの日々を記録した「亜欧日誌」と、ロンドンからアメリカに渡った8月半ばからアメリカ各地を視察して日本に帰着するまでの「亜米利加日誌」の2冊からなるもの。
とくに「亜欧日誌」は水彩スケッチやところどころに伝票、通信などの貼り込みがあって一見とても面白そうに見えます。見えるでしょうね。私もそう思ったくらいで。ところがしかし…僅かに読みやすい鉛筆で書かれたページを除くと、この厚冊のほとんどのページが墨書の、しかもかなり癖の強い筆跡で綴られているために、24日のクリスマスイヴに開催された市場から落札した足で自宅に持ち帰りじぃーっと眺めてようやく分かったことといえば、執筆した「草々雨亭」という人の本名はT.TUMORI(津森さん、か?)で当時東京電力会社に勤務していたこと、営業・経営関係畑の人らしく渡航は主にアメリカ・ゼネラルエレクトリック社の経営とアメリカの電気事情に関する視察だったらしい、ということくらい。旅の前半=アメリカに入るまでは仕事というよりその後の仕事に対して予め与えられた慰労の意味でもあったのか、なかなか雰囲気のある水彩画を幾つもものする余裕もあったようですが、アメリカに入ってからの2冊目となるとたまぁーに貼り込み、そして時折数値的データが現れる以外、繰れども繰れども読めないカナクギ文字がびっしり詰まっているばかり - 一晩で解説しようというのはあまりに無謀だったようです。とりあえず店に入れますので、癖字の解読なんて得意さという方、どうか是非奮って小店までお訪ね下さい。思えば今年も「立ってるものは客でも使う」日月堂でした。くわばらくわばら。ってそれはお客様のセリフだ。
■こ、こんな華奢な帙にこんなにちいさな爪までちゃんと… とただもう表っ面の佇まいに惹かれて手にとったのが縦12cm・幅3.2cmの『春夏秋冬』でした。中から現れたのは天地・幅ともさらにひと回り小さく何重にも折り畳まれた木版画で、表紙の題箋には「春夏秋冬 松川半山画 完」とあります。松川半山は江戸末から明治にかけて活躍した画家で、とくに幕末頃には当時の人気画家のひとりだったそうです。季節毎に街中で愉快に暮らす人々の姿が描かれたこれはしかし、一体何に使うものなのか、単なる愛玩物なのか … というのは年末年始の宿題のひとつとすることにして、兎も角も、春夏秋冬一巡りして2010年も大変お世話になりました。変わらず賜りましたご厚情に改めて感謝申し上げます。本当に有難うございました。
■2010年、店の営業は12月25日(土)と28日(火)の各日12時から20時を残すのみとなりました。来る2011年・新年初売りは1月6日(木)となります。
■目黒・ジェオグラフィカさんで開催中の「原由美子さんの仕事場から」も12月25日が最終日です。会期初日から、わざわざお出掛け下さった皆様、ありがとうございました。会期終了に向けて洋服を中心にプライス・ダウンした商品も多数ございます。心残りのお品物などございましたら是非ご再訪のほど、お願いいたします。
■昨年は年末開催だった銀座松屋さんでの「銀座 古書の市」。今度は年明け2011年1月26日(水)から1月31日(月)の開催となります。小店分の目録は当HPで新春6日頃アップの予定で、また12日頃までには参加全店の印刷された合同目録がお客様のお手元に届くかと存じます。年明け早々となりますが、こちらもよろしくお願いいたします。
■そんなこんなと色々ありながら。兎も角も。みなさまお健やかに、どうぞ良い年をお迎え下さいませ!
■今週もやはりお知らせから。12月19日(日)13時~15時、「原由美子さんの仕事場から」の会場となっているジェオグラフィカさんに、原由美子さんご本人が来て下さいます。元々、「バザールっぽい感じの売り方があっても面白い」と原さんご自身の発案から実現したもので、もしかしたらお客様が手にされた品物にまつわるお話や使い方のアドバイスがうかがえたりするかも知れませんし、ひょっとすると、バザールならではの“醍醐味”なども味わえたりするかも知れません。何がどうなるかは当日次第ではありますが、会期中最初で最後のこの機会に、みなさま是非お出掛け下さい!
おおっと。小店、来週は通常営業いたしますので、ただいまイルミネーション点灯期間中の表参道方面お出掛けのおついでに、小店の方も、ここはひとつ、よろしくお願いいたします。
一番上、赤に水玉の表紙から出てくるのはつづら折りに畳まれていた1936年クリスマスのスペシャル・メニュー カクテルはレシピ入り、料理には七面鳥も登場。その下はクリスマスのカード類で上右端と中段左んら二つ目は刺繍によって図案を描いたもの。この他にも店内在庫各種あります。
■いつも通りのスケジュールで次回の新着品の更新をするとなると、ちょうどクリスマスイブからクリスマスにかけての作業となるわけでして、最初の画像はその時ではもはや遅いことになるクリスマス関連商品で、中で一番上の小さな冊子様の印刷物が今週の新着品。7.5×9.5cmの表紙につづら折り8面が畳みこまれています。表紙に欧文で『Special Cocktail and Special menu for X’mas 1936』、そして「Salon Haru」と記されておりまして、即ちいまから74年前のクリスマスにサロン・ハルというところで供されたスペシャルなカクテルと同じくスペシャルなお食事の内容が分かるというメニュー小冊子であります。カクテルは「聖誕祭」「いざやあげよ盃乾を!」など5種で各々レシピ入り、料理は七面鳥や和食前菜聖誕祭など4種。価格はカクテルがどれも1円、料理も1円から2円。1円を現在の価格に置き換えると少なくとも3,000円以上と高額で、いうまでもなく明らかなクリスマス便乗商売ですな。1936年当時、畏れ多くももったいない現人神を天辺に戴きながら、一方ではクリスマスをちゃっかり商売にしてしまうといったこの節操のなさ、ううむこれぞ日本人の底力。ではないかと、そんなことを思います。
さて、1936年のクリスマスイヴ、日本のどこかにあったサロン・ハルで、めかしこんだ人々が楽しんだに違いないスペシャルなカクテルのレシピをひとつ、2010年の小店からのささやかなクリスマスプレゼントとさせていただきましょうか。
カクテルの名は、題して「クリスマスの甘きまどろみ - Sweet Dream at the X’mas Eve.」
レモン・シロップをティースプーンに2杯
卵の黄身を2分の1個
ライム・フルーツのシロップをグラスに5分の2
オレンジ・ジュースを同じくグラスに5分の2
よくかきまぜたらカクテルグラスに注いでお出しします。
お試しを (小店あるじ完全な下戸にて味・品質ともに保証はいたしかねます。悪しからず)。
個人商店・個人企業が輸入、ブレンド、販売まで自由に行えた当時の煙草のパッケージ類より。輸入葉煙草専用の箱と思われる銘柄は、「名誉」「東洋」「無類」といったネーミングと欧風の意匠で高級感に加えて舶来感も。同じ印刷会社のよるせいか、デザインに一定のフォーマット化も認められる。
■さすがにもう戻ることもなさそうなので告白いたしますと、日月堂店主、この度晴れて禁煙に成功いたしました。無煙煙草→電子煙草→葉巻と経て完全ケムリ絶ちまでの長い道のりについてはまた別の機会に譲るとして、現行の煙草を買う必要がなくなったところで落札したのが古い煙草パッケージ関の係印刷物でありました。いずれも葉煙草 - 輸入品を含む -の量り売り用紙箱・紙袋の製袋前の平たい状態で16点。パッケージからも伺える個人経営の商店が輸入葉煙草のオリジナル・ブレンド商品なども扱っていた様子から、1898年の葉煙草専売法実施以前のものと思われます。この時代ですので当然のことながら、印刷もオフセットではなく特色重ね刷り、多色木版刷や多色石版刷など、印刷物でありながら手工芸品の魅力を持ち合わせています。序でに付言すると、ま、1世紀も経過してますんで煙草の香りなんてのも遠の昔に失われてしまっておりまして、思わず匂いを嗅いでしまった旧喫煙者としては残念な思いをいたしました。匂いくらいは許して欲しい。もうひとつ、これらパッケージのほとんどが富山と石川の商店のもので、しかもそのほとんどに「金沢上近江町延廣堂印刷」と刷り込みがあることから、出どころは印刷会社あたりかとも推察しています。世界史的事件といってもよさそうな昨今の“煙草狩り”に対しては、でき得る限りの抵抗はしたいゾという気持ちだけは変わりません。喫煙の代わりに喫煙関係の印刷資料については少しずつ集めておこうかなんて思うのもこーゆータチの悪い元愛煙家だけでしょうか ……… ま、まっ、またしても売れないものを買ってしまったような気が。
■今週、火曜日の洋書会歳末市では結局1点も入札せず、しかしその他の市場から山と渓谷社発行の1936~1950年頃の『アルパイン・カレンダー』未使用6冊、板垣鷹穂著『新しき芸術の獲得』他戦前の芸術関係書籍約40冊、ご祝儀・不祝儀関わらず祝儀袋の現物から成る『翁印 高級祝儀袋』見本帖1冊、上の画像にその一部を含む外国イラスト絵葉書約70枚、戦前渡航家族の小さな写真帖1冊、などが12月18日(土)に店に入ります。店はキャビネットの上は再度入れ替え、キャビネット中も入れ替がほぼ完了いたしました。また、『佐野繁二郎展』『マルセル・デュシャン 紙の上の仕事』『構成的ポスターの研究』など大判の書籍・図録類はHPへのデータ・アップより先に棚入れを完了いたしました。残り少ない年内の営業日ですが、ご来店のほど、何卒よろしくお願いいたします。